【解法の要点】
炎症や加齢に伴う細胞の変化に関する問題である.高齢者が増加している現状から,加齢で変化する細胞の知識を整理しておこう.
【解説】
×⑴ 褐色脂肪細胞は,熱産生機能をもつ脂肪細胞であり,新生児期に多く,加齢とともに減少する.新生児は,体重あたりの体表面積が大きく皮下脂肪が薄いため,熱放散が大きく,低体温をきたしやすい.
×⑵ リポフスチンとは,細胞への酸化ストレスによりリソソーム内に生じる不溶性色素である.加齢性色素や消耗性色素と呼ばれることもあり,加齢とともに増加する.
×⑶ 良性腫瘍は,悪性腫瘍と比べて,再生能力が低く,分化度が高い.良性腫瘍は,周りの組織を圧迫しながら発育し,細胞の異型が軽度であり,遠隔転移しないのが特徴である.
○⑷ 文章通り.炎症の急性期には,血管透過性の亢進により,炎症細胞が炎症部位に集結し,貪食や炎症メディエーター放出によって生体を防御する.
×⑸ 肉芽組織は,炎症の急性期後に続く,増殖期に形成される.炎症の急性期に見られるのは,発赤,腫脹,疼痛,発熱で,これを炎症の四徴という.
正解 : (4)
【解法の要点】
腫瘍には慢性炎症が関与していることから,炎症と腫瘍は,両者を関連づけて理解することが望ましい.
【解説】
×⑴ 急性炎症では,傷害細胞から放出された化学伝達物質により血管透過性が亢進するために,炎症の局所への血液の液性成分が増加し,組織の腫脹,疼痛,発赤,熱感,機能障害がみられる.
×⑵ 慢性炎症でみられる浸潤細胞(炎症局所に集まる血液細胞)は,マクロファージやリンパ球などである.急性炎症でみられる浸潤細胞は,主に好中球である.
◯⑶ 文章通り.肉芽組織は,急性炎症に引き続く組織の修復過程において一時的に形成される豊富な毛細血管を含む組織である.組織の欠損を応急処置として埋めることにより,皮膚の表皮などの上皮組織が再生する土台をつくるが,それ自体はやがて瘢痕組織に置き換えられてゆく一時的な組織である.
×⑷ 良性腫瘍は,悪性腫瘍と比べて細胞の分化度が高い.
×⑸ 肉腫(例,胃肉腫)は,非上皮性の悪性腫瘍(上皮細胞以外の細胞の悪性腫瘍)である.癌腫(胃癌など)は上皮性の悪性腫瘍(上皮細胞の悪性腫瘍)である.
正解 : (3)