【解法の要点】
先天性代謝異常症のなかでも,アミノ酸代謝異常症,糖代謝異常については病態だけでなく,治療法については頻出なので,理解しておく必要がある.
【解説】
×⑴ フェニルケトン尿症では,脱水素酵素の欠損によってフェニルアラニンの代謝が阻害され,血中フェニルアラニンが増加し,放置すれば知能障害が生じる疾患である.したがって,治療では,フェニルアラニン除去ミルクや低フェニルアラニン食を投与する.
×⑵ メープルシロップ尿症では,αケト酸脱水素酵素欠損によって分枝(分岐鎖)アミノ酸の代謝が阻害され,血中の分枝アミノ酸が増加する.したがって,治療では分枝アミノ酸の制限を行う.
×⑶ ガラクトース血症では,ガラクトース代謝酵素の欠損によって代謝が阻害され,血中のガラクトースが増加する.ガラクトースは乳糖(グルコース+ガラクトース)の成分として母乳やミルクに含まれるので,治療では乳糖除去ミルクや乳糖制限食を与える.
○⑷ 正しい組み合わせ.ホモシスチン尿症では,シスタチオンβ合成酵素欠損によってホモシステインをシステインに代謝する経路が阻害され,血中のホモシステインおよびメチオニンが増加する.治療はメチオニン制限を行う.
×⑸ 糖原病Ⅰ型では,代謝に関連する酵素欠損によってグリコーゲン分解により生じたグルコースが,肝臓から血中に放出されないため,肝臓にグルコースが蓄積し,血中のグルコースが不足する.したがって,治療では高糖質食の頻回投与を行い,低血糖を予防する.
正解 : (4)
【解法の要点】
代表的な先天性代謝異常に対する食事療法の基本について,病態や機序とあわせて整理しておこう.
【解説】
×⑴ メープルシロップ尿症において,エネルギー摂取量の制限は不要であり,年齢性別活動量に応じて必要な量を与える.
○⑵ 文章通り.メープルシロップ尿症は,分岐鎖アミノ酸代謝に必要な分岐鎖αケト酸脱水素酵素が欠損するため,体内に分岐鎖アミノ酸が蓄積する.そのため,分岐鎖アミノ酸の摂取量を制限する必要がある.
×⑶ メープルシロップ尿症とシスチンには関連はない.なお,シスチンの補充を行う先天性代謝異常には,ホモシスチン尿症がある.
×⑷ チロシンは芳香族アミノ酸の一種で,メープルシロップ尿症とは関連がない.なお,フェニルケトン尿症では,フェニルアラニン水酸化酵素の欠損により,チロシンが欠乏する.また,最近フィッシャー比の代替として,総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比が使われることがある.
×⑸ メープルシロップ尿症を含む先天性代謝異常では,生涯にわたる食事療法が必要である.
正解 : (2)
【解法の要点】
ガラクトース血症は,常染色体劣性遺伝を示す先天性代謝異常症で,ガラクトースをグルコースに変換する酵素の欠損や作用不足で生じる.ガラクトース血症を含む,新生児マススクリーニング検査の対象疾患は頻出なので,病態や機序,食事療法について確認しておこう.
【解説】
×(1)~(4) ガラクトース血症では,グルコース,フルクトース,スクロース(グルコース+フルクトース),マルトース(グルコース+グルコース)の代謝はそれぞれ正常であるため,これらを除去する必要はない.
◯(5) 正しい.乳汁などに含まれるラクトース(乳糖)は,ガラクトースとグルコースで構成される二糖類であるため,ガラクトースが代謝されないガラクトース血症では,除去すべきである.
正解 : (5)