【解法の要点】
胃食道逆流症の栄養管理は頻出である.胃食道逆流症の食事療法では,症状悪化を防ぐために,胃酸分泌を増やさないこと,下部括約筋(LES)の弛緩予防,食道粘膜を刺激しないことがポイントである.
【解説】
×⑴ 胃食道逆流症では,胃酸分泌を抑えるために,過食を控え,少量頻回食とすることが症状改善に有利と考えられる.
×⑵ 胃食道逆流症では,下部括約筋の機能低下を防ぐため,高脂肪食は控える.一般的な食事では,脂質の摂取エネルギー比率は20 〜 30% Eであり,脂質35% Eは高脂肪食である.
×⑶ 胃食道逆流症では,食事の逆流を防ぐべきであり,食直後に就寝し横になる体勢を取ることは,症状を悪化させる可能性がある.
×⑷ 仰臥位とは,仰向けの状態のことである.食事の逆流を防ぐことができる
ため,胃食道逆流症の改善には少し体を起こした頭側挙上が有利である.
○⑸ 文章通り.胃瘻における胃食道逆流症では半固形タイプの栄養剤が用いられる.半固形タイプの栄養剤は,胃壁の伸展を促し,消化管ホルモン分泌や胃の蠕動運動を惹起するため,胃食道逆流の抑制に有効な場合がある.
正解 : (5)
【解法の要点】
炎症性腸疾患の病態と栄養管理は頻出である.なお日本では,クローン病では積極的な栄養療法を行うが,潰瘍性大腸炎は栄養療法だけでは寛解導入できないとされている.
この問題は出題当初の情報を元に解説が書かれています.最新の情報を「日本人の食事摂取基準2020年版」で確認しましょう(QB2023-24 p577)
【解説】
×(1) 過敏性腸症候群では,カリウム制限は必要ない.下痢型では,腸管運動を促進する刺激物や香辛料,炭酸飲料は避け,便秘型では,食物繊維の摂取を勧める.
×(2) 潰瘍性大腸炎の活動期には脂質を制限することがあるが,エネルギー制限は行われない.
×(3) 葉酸の摂取制限は,疾病治療を目的とした栄養管理では一般的ではなく,潰瘍性大腸炎でも行われない.
◯(4) 文章通り.
×(5) ビタミンB₁₂については,「日本人の食事摂取基準(2015年版)」でも耐容上限量は規定されていない.また,クローン病の病態を悪化させることもないため,制限する必要はない.
正解 : (4)
【解法の要点】
腸疾患に関する基本事項を問う設問である.炎症性腸疾患に関しては毎年出題されているため,出題内容は確実に理解しておこう.
【解説】
◯(1) 文章通り.潰瘍性大腸炎が長期かつ広範囲にわたり大腸を侵す場合は,大腸がん発生のリスクが高まる.
×(2) クローン病では,難治性痔瘻などの肛門病変がよくみられる.これは,潰瘍性大腸炎との鑑別に重要である.
×(3) 過敏性腸症候群では,器質的病変を認めず,粘血便はみられない.粘血便は,潰瘍性大腸炎などでみられる.
×(4) たんぱく漏出性胃腸症では,消化管粘膜から主にアルブミンが漏出するため,低アルブミン血症がみられる.
×(5) 麻痺性イレウスは,腸管運動が麻痺した病態であるため,腸管蠕動運動の消失がみられる.
正解 : (1)
【解法の要点】
消化器疾患の基本的な病態と栄養療法を問う問題.各疾患の病態の特徴をおさえて,どんな栄養管理が必要なのかを理解しよう.
【解説】
×(1) 胃・十二指腸潰瘍では,食事療法の必要性を示す根拠は乏しい現状にある.なお,過度のアルコール摂取と喫煙は,症状を悪化させる要因として知られている.
×(2) たんぱく漏出性胃腸症では,消化管からのアルブミン漏出をきたすため,たんぱく質を十分に摂取する必要がある.そのほか,高エネルギー,低脂肪食とするのが一般的である.
◯(3) 正しい組合せ.C型慢性肝炎では,肝臓に鉄が蓄積しやすい.鉄は,肝臓内で活性酸素を生成するため,鉄制限が求められる.また,鉄を排出するために,定期的に採血する瀉血療法も行われる.
×(4) 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)では,食事療法としてエネルギー摂取量の適正化と脂質制限が提案されている(日本消化器病学会「NASHガイドライン」).食物繊維を制限する必要はない.
×(5) 胆石症では,水分を制限する必要はない.なお,胆のう炎を併発した急性期は経口栄養を避けて絶飲絶食とし,経静脈的栄養補給法を行う.
正解 : (3)
【解法の要点】
肝・胆・膵に関する基本的な問題である.各疾患の病態について理解しておこう.
【解説】
×⑴ 脂肪肝では,肝細胞内に中性脂肪が過剰に蓄積する.
○⑵ 文章通り.非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では,内臓脂肪蓄積に伴いインスリン抵抗性増大がみられる.
×⑶ 急性胆嚢炎を含む炎症性疾患では,血清CRP(C反応性たんぱく質)値が増加する.
×⑷ 急性膵炎では,膵酵素が活性化され,膵臓および周囲組織が自己消化される.したがって,急性膵炎急性期では,血中および尿中アミラーゼ値は上昇する.
×⑸ 慢性膵炎非代償期では,膵内分泌・外分泌能ともに障害される.したがって,インスリン分泌だけでなくグルカゴン分泌も低下する.
正解 : (2)