【解法の要点】
腎・尿路系疾患に関する基本的な出題である.慢性腎臓病や糖尿病腎症,また透析療法については,食事療法を含め理解する必要がある.
この問題は出題当初の情報を元に解説が書かれています.最新の情報は【糖尿病腎症の病期分類2023】です.【QB2025 p247】で確認しましょう.
【解説】
○⑴ 文章通り.腎前性急性腎不全の原因は,ショックや大量出血などによる,急激な腎血流量減少である.ただし,「急性腎不全」は,診断時にすでに重症の場合が多く,定義もさまざまであることから,現在では明確に定義される疾患概念である「急性腎障害」が一般的に使用されている.
×⑵ 糖尿病腎症第4期は,腎不全期であり,eGFR(推算糸球体濾過量)30 mL/分/1.73 m²未満で判定される.たんぱく尿およびアルブミン尿の有無は問わない.
×⑶ 慢性腎不全では,腎機能が低下し,腎臓におけるリン排泄量が低下するため,高リン血症がみられることがある.
×⑷ 腎代替療法のうち最も多いのは血液透析である.なお,腎移植は最も少ない.
×⑸ 無尿の場合,透析導入が考慮される場合があるが,必須項目ではない.透析は,十分な保存的治療を行っても進行性の腎機能悪化が認められる場合に,症候や日常生活の活動性,栄養状態などを総合的に判断し,導入が検討される.
正解 : (1)
【解法の要点】
慢性腎臓病,糖尿病腎症,透析など,腎疾患に関しては頻出である.診断基準や,診断に用いられる指標について,しっかり確認しておこう.
【解説】
×(1) 糖尿病腎症は,ネフローゼ症候群の原因となる.そのほか,SLE,アミロイドーシスもネフローゼ症候群の原因疾患として有名である.
×(2) 慢性腎臓病の診断基準の1つに糸球体濾過量(GFR)が用いられるが,その基準は,「GFR60 mL/分/1.73 m²未満の状態が3カ月以上持続する」である.
◯(3) 文章通り.推算糸球体濾過量(eGFR)は,血清クレアチニン値,年齢,性別を用いて算出される.
×(4) 血液透析では,1回あたり4時間程度の透析を,週2~3回行うのが標準的である.
×(5) 死体腎,生体腎にかかわらず,移植された腎は異物として認識され,移植を受ける患者(レシピエント)の免疫系が拒絶反応を起こす.そのため,死体腎移植を受けた患者には,免疫抑制剤の投与が必要である.
正解 : (3)
【解法の要点】
慢性腎臓病の病期分類とそれに対応した食事療法を問う出題である.各ステージの栄養量について,具体的な数値もおさえておこう.
【解説】
×(1) ステージ1では,カリウムの摂取量は制限しない.カリウム制限は,ステージ3b以降で行われる.
×(2) ステージ2では,たんぱく質は過剰な摂取をしないことが推奨されているが,制限する必要はない.
×(3) 慢性腎臓病の食塩制限は,どのステージでも3g以上6g未満/日が基本である.
◯(4) 文章通り.透析を行わない慢性腎臓病では,エネルギー摂取量は25~35kcal/kg標準体重/日とされている.低たんぱく食を実施する場合には,糖質や脂質でエネルギーを補う必要がある.
×(5) ステージ5では,たんぱく質摂取量は0.6~0.8g/kg標準体重/日とされ,極端な低たんぱく食は推奨されていない.
正解 : (4)
【解法の要点】
透析患者の栄養管理は毎年のように問われている.血液透析と腹膜透析の違いもあわせて確認しておこう.なお,栄養量は「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」に準ずる.
【解説】
◯(1) 文章通り.血液透析,腹膜透析ともに,透析療法中のたんぱく質摂取量は0.9〜1.2 g/kg標準体重/日とするため,1.0 g/kg標準体重/日は正しい.
×(2) 血液透析では,水分摂取は「できるだけ少なく」とされている.標準体重が60kgの場合,水分摂取量を30 mL/kg標準体重/日とすると1800ml/日に相当するため,多すぎると考えて良い.
×(3) 血液透析では,カリウムの摂取量を2,000 mg/日以下に制限する.なお,腹膜透析で高カリウム血症がない場合は,カリウム制限は必要ない.
×(4) 腹膜透析のエネルギー摂取量は,透析液からの腹膜吸収エネルギー量を差し引いて30~35 kcal/kg標準体重/日とする.
×(5) 血液透析,腹膜透析ともに,透析療法中のリン摂取量(mg/日)は「たんぱく質(g)×15以下」とする.(1)の解説より,たんぱく質量を0.9~1.2 g/kg標準体重/日とすると,標準体重60 kgの透析患者の場合,リン摂取量は54~72(g)×15=810~1,080(mg/日)以下となる.したがって,2,500 mg/日のリン摂取量では多すぎる.
正解 : (1)
【解法の要点】
慢性腎臓病(CKD)とその食事療法に関する出題である.「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」に準拠して解説する.
【解説】
KEY WORDS●
①身長160 cm,体重56 kg,BMI21.8 kg/m²→標準体重56.3 kg②eGFR>93 mL/分/1.73 m²②たんぱく尿0.5 g/日高度たんぱく尿)③血圧150/95 mmHg →高血圧 慢性腎臓病の重症度分類でG1A3に相当
アセスメントとプランニング●
・たんぱく尿区分ではA3に該当し,重症度は高いが腎機能に問題はないので,ステージ1の食事療法を行う.・ただし,現状よりさらに尿たんぱくが増加し,ネフローゼ症候群となればその食事療法に準ずる.
解説●
×⑴~⑶,⑸ 選択肢⑷の解説を参照.
○⑷ 正しい組合せ.CKDステージ1では,エネルギー量が25~35kcal/kg標準体重/日とされているため,25~35 kcal/kg標準体重/日×56.3 kg=1,408~1,971 kcal/日となる.たんぱく質については,過剰な摂取をしないとされているため,1.0~1.1 g/kgBW/日×56.3 kg=約56.3~61.9g/日となる.したがって,選択肢の中ではエネルギー 1,600 kcal/日,たんぱく質60 g/日が妥当である.
正解 : (4)