食品中の有害物質

食品中の有害物質に関する記述である．正しいのはどれか．1つ選べ．

(1)アクリルアミドは，畜肉や魚肉を高温で調理した際に生成する．
(2)Trp-P-1は，チロシン由来のヘテロサイクリックアミンである．
(3)畜牛の舌は，異常プリオンの特定危険部位である．
(4)アフラトキシンは，煮沸すると容易に分解する．
(5)米には，カドミウムの基準値が設定されている．

【解法の要点】

食品汚染物質（有害物質）であるカビ毒や，化学物質の代表的な物質とその性質を理解しておく必要がある．

【解説】

×(1)　アクリルアミドは，食品中のアスパラギンとブドウ糖や果糖などのカルボニル化合物が120℃以上の高温で加熱されて生じるアミノ・カルボニル反応の生成物であり，糖質を多量に含む食品の加熱加工によって生じる．
×(2)　Trp-P-1（トリプトファン-P-1）は，トリプトファン由来の熱分解物である．Trp-P-1はヘテロサイクリックアミンの1つで，食品の加熱や燻煙により有機物が化学反応を起こして生じる．発がん性があることが知られており，焼いた肉や魚に多く含まれる．
×(3)　異常プリオンの特定危険部位は，日本においては舌や頬肉皮を除く頭部，脊髄・脊柱，全月齢の扁桃，回腸遠位部であり，これらは除去・焼却が義務付けられている．
×(4)　アフラトキシンは，加熱調理しても破壊されない．ピーナッツなどに含まれているが，その量は微量である．肝がんのリスクとなる．
◯(5)　文章通り．カドミウムは，米（玄米および精米）について0.4ppm（mg/kg）未満の規格基準が定められている．腎機能障害の発生を避けるための基準値となっている．

正解 : （5）

食品とその規格基準の組合せである．誤っているのはどれか．1つ選べ．

(1)清涼飲料水（りんごの搾汁）……デオキシニバレノール基準以下
(2)食肉製品……亜硝酸根基準以下
(3)即席めん類（めんを油脂で処理したもの）……酸価と過酸化物価基準以下
(4)殺菌液卵……サルモネラ属菌陰性
(5)生あん……シアン化合物検出せず

【解法の要点】

食品と規格基準についてかなり詳しい知識を問う問題．各食品の特徴をとらえて規格基準を理解しておく必要がある．なお，解説の執筆にあたり厚生労働省ホームページ「食品別の規格基準について」を参考にした．

【解説】

×(1)　デオキシニバレノールはカビ毒であり麦，米，トウモロコシなどに含まれることがある．わが国では，小麦を対象に規格基準値が設定されている．
◯(2)　正しい組合せ．食肉製品の成分規格として，「食肉製品は，その1kgにつき0.070gを超える量の亜硝酸根を含有するものであってはならない」と明記されている．
◯(3)　正しい組合せ．「即席めん類は，めんに含まれる油脂の酸価が3を超え，または過酸化物価が30を超えるものであってはならない」と明記されている．
◯(4)　殺菌液卵とは，鶏の液卵を殺菌したものである．食鳥卵の成分規格には，「殺菌液卵はサルモネラ属菌が検体25gにつき陰性でなければならない」と明記されている．
◯(5)　生あんは，「シアン化合物の検出されるものであってはならない」と明記されている．生あんは，小豆などの豆類を煮て，皮を取り除き，砂糖を加えないものである．原料となる豆類によってはもともとシアン化合物を含有しているが，生あんには残らないようにする必要がある．

正解 : （1）

食品中の汚染物質に関する記述である．正しいのはどれか．1つ選べ．

⑴　ポリ塩化ビフェニル（PCB）は，水に溶けやすい．
⑵　デオキシニバレノールは，りんごを汚染するカビ毒である．
⑶　ストロンチウム90は，甲状腺に沈着しやすい．
⑷　メチル水銀の毒性は，中枢神経系に現れる．
⑸　アフラトキシンは，調理加熱で分解されやすい．

【解法の要点】

環境汚染化学物質による生体への影響について，臨床症状を十分理解しておこう．

【解説】

×⑴　ポリ塩化ビフェニル（PCB）は，脂溶性物質であり，水に溶けにくい．なお，ポリ塩化ビフェニルは，カネミ油症の原因物質である．
×⑵　デオキシニバレノールは，小麦や米などを汚染するカビ毒である．なお，りんごを汚染するカビ毒には，パツリンなどがある．
×⑶　ストロンチウム90は，骨に沈着しやすく，骨腫瘍や骨髄の造血機能障害などを引き起こす．なお，甲状腺に蓄積されやすい放射性物質は，ヨウ素131である．
○⑷　文章通り．工場から排出されたメチル水銀によって発症した水俣病では，四肢の感覚障害や求心性視野狭窄などの中枢神経障害がみられた．
×⑸　アフラトキシンは，熱安定性がきわめて高く，通常の加熱条件等ではほとんど分解されない．なお，アフラトキシンは，急性の肝機能障害や肝がんを引き起こす．

正解 : （4）

食品に含まれる物質に関する記述である．誤っているのはどれか．1つ選べ．

⑴　アフラトキシンM群は，牛乳から検出されるカビ毒である．
⑵　フモニシンは，トウモロコシから検出されるカビ毒である．
⑶　アクリルアミドは，アミノカルボニル反応によって生じる．
⑷　ヘテロサイクリックアミンは，アミロペクチンの加熱によって生じる．
⑸　牛肉は，トランス脂肪酸を含有する．

【解法の要点】

食品に含まれるか食品中で生成される発がん物質などの有害物質に関連した問題である．主な発がん物質について確認しておく必要がある．

【解説】

○⑴　文章通り．アフラトキシンM群は，アフラトキシンB群やG群に汚染された飼料で育てられた乳牛の乳汁中に検出される．
○⑵　フモニシンはフザリウム属のカビにより産生され，主にトウモロコシおよびその加工品から検出される．特にフモニシンB₁の肝臓に対する発がん性が実験的に明らかにされている．
○⑶　文章通り．アクリルアミドは，アスパラギンとグルコースなどの還元糖が高温加熱されることで起こるアミノカルボニル反応によって生じる．炭水化物を多く含む食品の加工で生じやすい．
×⑷　ヘテロサイクリックアミンは魚や肉などのたんぱく質を多く含む食品の焼け焦げに含まれるアミノ酸熱分解物である．肝がんをもたらすとされている．
○⑸　ウシやヒツジなどの反芻動物では反芻胃に生息する微生物によりトランス脂肪酸が形成されるため，牛肉や羊肉，牛乳・乳製品にはトランス脂肪酸を微量に含んでいる．トランス脂肪酸はLDLコレステロールを増加させ，HDLコレステロールを低下させることから，トランス脂肪酸を含む脂質の情報開示を消費者庁は食品事業者に求めている．

正解 : （4）