【解法の要点】
妊娠期の生理的変化は頻出の内容である．妊娠期，分娩，産褥期と経時的にまとめておこう．妊娠期の疾患とも関連づけて学習しよう．
【解説】
×⑴ インスリン抵抗性は，亢進する．ヒト胎盤性ラクトゲンなどの胎盤性ホルモンが増加し，母体の肝臓，筋肉，脂肪細胞においてインスリン抵抗性を引き起こす．インスリン抵抗性により母体の筋，脂肪細胞はグルコースを取り込みにくくなり，胎児に優先的にグルコースが供給される．
×⑵ 腸管のカルシウム吸収率は，著しく増加する．その結果，カルシウムは胎児に蓄積されると同時に，多く取り込まれたカルシウムは，母体の尿中排泄量を著しく増加させる．
○⑶ 文章通り．妊娠中は，血漿たんぱく質は増加するが，循環血漿量がこれを上回って増加するため，血清アルブミン値は低下する．これに対し，IgGは循環血漿量を上回って増加するので，血清グロブリン値は上昇する．
×⑷ 妊娠週数がすすむにつれ，母体自身の体重増加と胎児への血液確保のため，循環血液量は，増大する．赤血球の量も増加するが，循環血漿量の増加がはるかに上回るので，相対的に赤血球の割合が減り，水血症となる．
×⑸ 血清トリグリセリド値は，増加する．なお，脂質代謝が亢進するため，コレステロール，遊離脂肪酸も増加する．
正解 : （3）
【解法の要点】
初乳，移行乳，成乳の成分の特徴，および牛乳との成分の違いは頻出事項である．それぞれの特徴をまとめておこう．
【解説】
×⑴ たんぱく質は，母乳より牛乳に多く含まれる．アルブミンやグロブリンなどの乳清たんぱく質については，母乳の方が多く，カゼインは牛乳の方が多い．
×⑵ 飽和脂肪酸は，母乳より牛乳に多く含まれる．なお，母乳は不飽和脂肪酸，特にリノール酸，α-リノレン酸などの必須脂肪酸を多く含む．
〇⑶ 正しい．母乳に含まれる糖質は，牛乳の約1.5倍である．
×⑷，⑸ カルシウム，リン，ナトリウム，カリウムは，母乳より牛乳に多い．ミネラルが少ない母乳は，牛乳に比べ乳児の腎臓への負荷が少ない．
正解 : （3）
【解法の要点】
妊娠，授乳期の母体の変化は，頻出事項である．解剖学的・生理学的変化を妊娠，分娩，授乳の経過とあわせて学習しよう．
【解説】
×⑴ 血漿フィブリノーゲン値は，妊娠期には上昇する．分娩時の出血に備えるため，血液凝固能は亢進する．相対的に線溶系の抑制が起こる．
×⑵ 糸球体濾過量は，妊娠期には増加する．腎血漿流量，GFRも増加する．そのため，BUN，血清クレアチニン値，血清尿酸値は低下する．
×⑶ 体たんぱく質の蓄積量は，妊娠期には同化が亢進し，上昇する．
×⑷ インスリン感受性は，低下する．妊娠期では，ヒト胎盤性ラクトゲンなどの作用により，インスリン抵抗性が引き起こされ，母体の筋，脂肪細胞ではグルコースが取り込みにくくなる．グルコースを取り込みにくくなった分，胎児にグルコースが供給されるようになる．
◯⑸ 授乳期では，腸管でのカルシウム吸収率が非妊娠時に比べ軽度に増加し，母親の尿中カルシウム排泄量は減少することにより，通常より多く取り込まれたカルシウムが母乳に供給される．
正解 : （5）