【解法の要点】
健康行動の生態学的モデルは,さまざまな行動科学理論やモデルの概念を階層的に整理した,包括的なモデルである.生態学的モデルでは,人間の行動と環境との相互作用に着目し,健康行動にはたらきかけるレベルが「個人内」,「個人間」,「組織」,「地域」,「政策」の5つに分類される.各選択肢の取り組みの規模から,それぞれどのレベルにあてはまるのかを考えよう.
【解説】
×(1) サークルの先輩からの望ましい影響をねらった例であり,「個人間レベル」の取り組みにあたる.
×(2) パンフレットを読むことで,個人の知識や態度,信念に作用するため,「個人レベル」の取り組みにあたる.
◯(3) 正しい組合せ.大学という組織としてガイダンスを行うことは,「組織レベル」の取り組みにあたる.
×(4) 大学のルールで健康行動へ作用しようとする例であり,「組織レベル」の取り組みにあたる.
×(5) 大学周辺の飲食店を利用した,地域におけるネットワークで健康行動への影響をねらった例であり,「地域レベル」の取り組みにあたる.
正解 : (3)
【解法の要点】
トランスセオレティカルモデルに関する問題は頻出である.この男性は,望ましい行動を起こして6カ月以内の実行期であると考えられる.各段階の概要と支援について確認しておこう.
【解説】
×(1) 行動目標について家族に宣言することは,自己の解放を促すためのはたらきかけであり,準備期に対する支援にあたる.
×(2) 健康へのリスクを説明することで飲酒に関する情報や知識を増やし,意識の高揚を促すことは,無関心期の人へのはたらきかけにあたる.
◯(3) 実行期の人に対しては,行動変容の決意が揺らがないような支援を行う必要がある.アルコール飲料を置かないことは刺激統制にあたるが,これは実行期の人へのはたらきかけとして適切であり,正しい.
×(4) 休肝日を守ることのメリットとデメリットを考えることは,相談者の行動の有無がどのような影響をもたらすか再評価することであり,関心期(熟考期)のはたらきかけにあたる.
×(5) お酒のエネルギー量を自分で調べることは,自分の問題に気づくための支援であり,意識の高揚や自己の再評価につながると考えられる.無関心期,準備期の人へのはたらきかけにあたる.
正解 : (3)
【解法の要点】
トランスセオレティカルモデルは頻出事項である.無関心期は6カ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がない時期であり,行動変容の必要性を自覚させる支援を行う.
【解説】
×⑴ 行動することで得られるメリットを考えることは,行動変容の有無が自分にとってどういう影響があるか考える「自己の再評価」であり,関心期の者へのはたらきかけにあたる.
〇⑵ 文章は,行動しないことに脅威を感じる「感情的経験」であり,無関心期の者へのはたらきかけとして正しい.
×⑶ 行動を決意・宣言することは,「自己の解放」であり,準備期の者へのはたらきかけにあたる.
×⑷ 問題行動の代替となる健康的な行動を取り入れることは,「行動置換」であり,実行期の者へのはたらきかけにあたる.
×⑸ 環境面の改善としてソーシャルサポートを利用することは,「援助関係」であり,実行期の者へのはたらきかけにあたる.
正解 : (2)
【解法の要点】
トランスセオレティカルモデルは頻出事項である.本問の対象者は1か月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思があることから「準備期」にあると考えられる.「準備期」に有効な指導を選ぼう.
【解説】
×⑴,⑶ 行動変容に関心をもってもらうための中立的な情報提供は「意識の高揚」であり無関心期への指導である.
×⑵ 自分の行動が,身の回りの人など社会的環境にどのような影響を与えているかを考えさせることは「環境の再評価」であり,無関心期の者への指導である.
×⑷ 行動変化が起きなかった場合に罰を随伴させて強化することは「強化マネジメント」であり,実行期の対象者への指導である.
○⑸ 行動することを宣言したり約束を行ったりすることは「自己の解放」であり,準備期の対象者への指導として正しい.
正解 : (5)
【解法の要点】
計画的行動理論に関する問題である.行動の意思(意図)に影響を与える要因について理解をしておこう.
【解説】
×(1),(2),(4) 減塩のハードルを下げたり,減塩食のデメリットを軽減する情報を与えており,行動のコントロール感を高める発言にあたる.
×(3) 減塩をすることのメリットを対象者へ伝えており,行動への態度を高める発言にあたる.
◯(5) 家族からの期待に応えるための意欲を高める発言であり,主観的規範を高める効果がある.なお,主観的規範は周囲の人からの期待に応える要因である.
正解 : (5)
【解法の要点】
ソーシャルサポートについて,サポート内容に関する基本的理解を問う問題である.
【解説】
×⑴ 配食のサービスなどを含む食事提供は,課題解決のための形のある支援であり,道具的サポートにあたる.
×⑵ 声かけや,話をきいて共感や愛情をかけることは,情動的(情緒的)サポートにあたる.
〇⑶ 正しい組合せ.食事会への送迎は,課題解決のための形ある支援であり,道具的サポートにあたる.
×⑷ 問題を解決するための情報や知識の提供を行うことは,情報的サポートにあたる.
×⑸ 問題を解決するための具体的課題を伝えることは,自己評価に役立つ支援であり,評価的サポートにあたる.
正解 : (3)
【解法の要点】
イノベーション普及理論では,イノベーション普及の速度に影響を与える条件として,①相対的優位性,②適合性(両立性),③分かりやすさ(複雑性),④試行可能性,⑤可観測性(観察可能性)の5条件を挙げている.これらの条件は,イノベーションを普及させる速度を決め,栄養教育戦略を考える上で重要となる.
【解説】
×(1) SNSを用いた情報提供は,メニュー集を使った事例を他者の目に留まりやすくするものであり,可観測性を活用した例である.
×(2) 離乳食教室への参加の呼びかけは,教室でレシピ集に掲載された離乳食づくりを試すことにつながるため,試行可能性を活用した例である.
×(3) よく使う調理器具で作れることのアピールは,実現可能性の高さを示すものであり,分かりやすさ(複雑性)を活用した例である.
◯(4) 文章通り.これまでの離乳食と比較して,経済的に優れていることをアピールすることは,相対的優位性を活用した例である.
×(5) 作り置きや保存方法など,対象者のニーズにあった内容を説明することは,適合性(両立性)を活用した例である.
正解 : (4)