【解法の要点】
開発途上国,先進国それぞれの栄養問題の特徴をおさえておこう.開発途上国の多くの人々にとって栄養不足は深刻な問題であるが,一部の富裕層は過剰栄養による肥満,糖尿病,脂質異常症などのNCD(非感染性疾患)の問題を抱えている.一方,先進国においては生活習慣病などNCDの問題が深刻な中で一部の高齢者や貧困層には栄養不足の問題がある.問題点を整理して理解しよう.
【解説】
×⑴ 先進国においてNCD(非感染性疾患)による死亡数は増加している.なお先進国だけでなく開発途上国でも増加傾向にある.
×⑵ 障害調整生存年数(DALYs)は医療資源へのアクセス,福祉サービスの充実などが関係する.そのため同一国内においても地域で格差が認められる.
×⑶ 栄養不良の二重負荷(二重苦)とは,異なる2つの形態(たとえば過剰栄養と低栄養)が1つの国や地域で同時に現れる状態をいう.なお,発育障害(年齢に比して低身長)や消耗症(年齢に比して低体重)は,ともに乳幼児の栄養不良の程度を示す指標である.
○⑷ 文章通り.開発途上国では,妊婦に限らずビタミンAのほかに,鉄,ヨウ素などの栄養素の欠乏が問題となっている.
×⑸ 開発途上国では富裕層の小児を中心に過栄養の問題がある.
正解 : (4)
【解法の要点】
栄養不良の二重負荷の定義について,深く問う問題である.低栄養と過栄養が同一国,同じひとりの人間の中でも同時に起こることがある点が重要なので,選択肢解説と語句説明をよく読んでおさえておこう.
【解説】
〇⑴ 同一国内での貧富の差を原因とする食習慣の違いなどから発生する栄養問題である.
〇⑵ 同一地域内で食習慣や栄養,運動に関する知識の差などから発生する栄養問題である.
×⑶ クワシオルコル,マラスムスは異なる2つの栄養状態ではなく,低栄養という共通した栄養状態の中での栄養障害の違いである.そのため,同一地域内にこの2つの栄養障害の子どもが同時に存在することは,栄養不良の二重負荷とはいわない.
〇⑷ たとえば,世帯内に十分な食糧が確保されている場合,父親は十分な栄養摂取ができる一方,子どもへは適切な離乳食の提供方法が分からないなど,栄養に関する知識不足から同一家庭内で発育阻害が発生する可能性が考えられる.
〇⑸ 過剰栄養摂取(肥満)と微量栄養素の摂取が不十分〔または特定の栄養成分の摂取が不十分(亜鉛欠乏)〕という相反する状態が,ひとりの人間の体内で同時に発生していることは,栄養不良の二重負荷の例である.
正解 : (3)
【解法の要点】
「食」に関係の深い国際機関の仕事内容,役割を整理しておこう.また,SGDs(持続可能な開発目標)は全世界の国々が関係する重要な課題であり,今後も出題が予想されるため,基本事項をおさえておこう.
【解説】
○⑴ 文章通り.国際連合(UN)が発表したSDGsは,MDGs(国連ミレニアム開発目標)を引き継ぐ形で2016年にスタートした.
×⑵ 「栄養表示に関するガイドライン」は,コーデックス委員会が策定している.なお,国連世界食糧計画(WFP)は,食糧援助のための国際機関である.
×⑶ フードセキュリティ(食料安全保障)の達成は,国際食糧農業機関(FAO)の設立目的である.なお,国連教育科学文化機関(UNESCO)の設立目的は, 諸国民の教育,科学,文化の協力と交流を通じて,国際平和と人類の福祉の促進である.
×⑷ 自然災害被災地への緊急食糧援助は,国連世界食糧計画(WFP)が担っている.なお,コーデックス委員会(CAC)は,食品の国際規格および基準を定めている.
×⑸ フードバランスシート(食料需給表)の策定基準は,国連食糧農業機関(FAO)が定めている.この作成手引きに準拠して,毎年,各国はフードバランスシートを作成する.なお,世界保健機関(WHO)は,保健医療に関する情報の収集や国際基準の設定,多国間協力の推進などを行っている.
正解 : (1)
【解法の要点】
公衆衛生活動に関係する国際的組織とその活動内容の組み合わせは頻出問題であり,昨年の国試でも同一形式の出題がみられた.今後も出題される可能性が高い.組織の名称と主な活動内容を確認しておこう.
【解説】
〇⑴ 正しい組合せ.持続可能な開発目標(SDGs)は,平成27(2015)年に国連総会で採択された.SDGsは,17分野の目標と169のターゲットを掲げており,たとえば,NCDの予防と対策を含むグローバル戦略などがある.
×⑵ 食品の公正な貿易の確保は,コーデックス委員会(CAC)の活動内容である.国連世界食糧計画(WFP)は難民キャンプへの緊急食糧支援,低所得国での食糧配給など人道支援を実施している.
×⑶ 栄養表示ガイドラインはコーデックス委員会が策定する国際食品規格(コーデックス規格)である.国連児童基金(UNICEF)は子どもの権利条約の制定や子どもの栄養改善指導などを行っている.
×⑷ 「食物ベースの食生活指針」は世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)の合同専門家会議で開発された.現在我が国で用いられている「食事バランスガイド」はこの指針を受けて策定されたガイドラインのひとつである.
×⑸ 「母乳育児を成功させるための10か条」は世界保健機関(WHO)と国連児童基金(UNICEF)によって発表された.国連食糧農業機関(FAO)は農作物の生産向上のための技術供与など食の確保,安全保証を担っている.
正解 : (1)