【解法の要点】
個体の恒常性は,外部/内部刺激にかかわらず体内環境が一定状態に維持されることである.体内環境を平常時の状態に戻すには何が起こればよいか,を考えるとわかりやすい.
【解説】
×⑴ 消化管運動を亢進させるため,消化液の分泌は増加する.
×⑵ 種々の消化酵素を含む膵液は膵臓から外分泌され,インスリン・グルカゴンをはじめとするホルモンはランゲルハンス島から内分泌される.
×⑶ 血糖値が上昇するとインスリン分泌が促進される.グルカゴンには血糖上昇作用がある.
×⑷ 体内に侵入した異物を無差別に排除する.
〇⑸ 抗体が中心にはたらく免疫作用を体液性免疫という.
正解 : (5)
【解法の要点】
体内で恒常性を維持するために,各臓器は種々のはたらきをしている.その全体像をつかむことが大切である.なかでも,アシドーシスとアルカローシスの原因については頻出事項である.
【解説】
×⑴ 過呼吸は,呼吸性アルカローシスの典型的な原因疾患である.過呼吸により呼吸機能が亢進すると,二酸化炭素の排出が増加し,アルカローシスを引き起こす.
○⑵ 文章通り.アルドステロンの過剰分泌は,重炭酸イオンの再吸収を亢進し, 代謝性アルカローシスを引き起こす.なお,アルドステロンの過剰分泌は,原発性アルドステロン症が典型的な病態である.
×⑶ メラトニンは,夜間に分泌が増加し,昼間に分泌が減少するという日内リズムを示す.
×⑷ 不感蒸泄とは,発汗以外の水の喪失の事である.したがって,不感蒸泄では,電解質の喪失はみられない.
×⑸ 食物摂取後は,食物摂取に伴う消費エネルギーにより,生体における熱産生は促進される.この現象は,食事誘導体熱産生と呼ばれる.
正解 : (2)
【解法の要点】
電解質に関する基礎問題である.ナトリウム,カリウムイオンの分布の特徴,重炭酸イオンなどの緩衝系,水の出納について整理しておこう.
【解説】
×⑴ カリウムイオン濃度は細胞内液,ナトリウムイオン濃度は細胞外液の方が高い.
×⑵ 不感蒸泄では水分のみの損失が起こる(汗を含まない).なお,電解質の喪失は起こらない.
×⑶ 低張性脱水では,水分よりも電解質の損失が大きいため,ナトリウムなどの電解質を含む水を補給するが正しい.
○⑷ 文章通り.重炭酸イオン緩衝系は,二酸化炭素のガス交換により血液の酸塩基平衡にかかわる.
×⑸ 血中ナトリウムイオン濃度が上昇すると,血漿浸透圧は上昇する.これは,ナトリウムイオンが血漿中に多く存在するためである.
正解 : (4)
【解法の要点】
血圧や体温,体液のpHなどの体内の状態は,それらの状態をモニターする組織(受容器)で受容している情報を,神経系を通じて中枢へ送って処理し,適切に自律神経のはたらきやホルモンの分泌を調節することで保たれている.そのため,体内環境の変化に応じて,どのように神経の活動やホルモンの分泌が変化するかを知ることが問題を解くのに必要である.
【解説】
×⑴ 感覚神経は,体性神経である.末梢神経系は体性神経と自律神経に分類され,さらに体性神経は運動神経と感覚神経,自律神経は交感神経と副交感神経にそれぞれ分類される.
×⑵ ストレス時には,交感神経が優位に活性化される.副交感神経が優位になるのは,休息時や睡眠時である.
×⑶ ヒトの概日リズムは,約24時間である.概日リズムは,太陽光により一日の明暗周期に同調(リセット)され,覚醒と睡眠のタイミング,ホルモンの分泌や代謝が調整される.
○⑷ 文章通り.視床下部にはほかに食欲中枢や睡眠中枢がある.
×⑸ 代謝性アシドーシスが生じると,延髄にある中枢性化学受容器がpHの低下やCO₂の増加に反応して呼吸が促進される.代謝性アシドーシスでは体内に酸(H⁺)が増加または塩基(HCO₃⁻)が減少するため血液のpHが低下する.H⁺が増加した場合,重炭酸緩衝系の作用によりH⁺の増加が緩和され,その代わりにCO₂が増加する.すると中枢性化学受容器が反応して呼吸が促進され,CO₂を排泄する.この仕組みを呼吸性の代償作用という.
正解 : (4)