【解法の要点】
本問題で取り扱われている薬は,すべて降圧薬である.各選択肢の薬が,どのような機序で作用するかを間接的にたずねられていると考えると解きやすい.
【解説】
×⑴ アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は,アンジオテンシンⅡの作用を阻害することで,尿中ナトリウム排泄を促進する.また,尿中カリウム排泄は抑制される.
○⑵ 正しい組合せ.アンジオテンシン変換酵素阻害薬は,アンジオテンシン変換酵素を阻害し,アンジオテンシンⅡの産生を抑制することで,尿中ナトリウム排泄を促進するとともに,尿中カリウム排泄を抑制する.
×⑶ 抗アルドステロン薬は,腎臓の集合管および遠位尿細管でのナトリウムの再吸収を抑制する.つまり,尿中ナトリウム排泄は促進される.なお,抗アルドステロン薬は尿中カリウム排泄を抑制することから,K保持性利尿薬とよばれる.
×⑷ ループ利尿薬は,ヘンレループにおけるナトリウムの再吸収を抑制する. つまり,尿中ナトリウム排泄を促進する.それに伴い,カリウム排泄も促進する.
×⑸ サイアザイド系利尿薬は,遠位尿細管におけるナトリウムの再吸収を抑制する.つまり,尿中ナトリウム排泄を促進する.それに伴い,カリウム排泄も促進する.
正解 : (2)
【解法の要点】
降圧薬の作用を問う問題であるが,作用機序に加え副作用についてもまとめておこう.
【解説】
×⑴ サイアザイド系利尿薬は,遠位尿細管でのナトリウム再吸収を抑制する.副作用として,低カリウム血症や糖代謝障害,脂質異常,血清尿酸上昇がみられる.
×⑵ β遮断薬は,交感神経β受容体に作用するが,副作用として気管支平滑筋を収縮し,気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患の病態を悪化させる.また,糖・脂質代謝異常も生じる.
×⑶ カルシウム拮抗薬は,血管平滑筋細胞内へのカルシウム流入を拮抗し,血管平滑筋を弛緩させ,血管拡張を促す.
○⑷ 正しい組み合わせ.アンジオテンシン変換酵素阻害薬は,アンジオテンシンⅠからアンジオテンシンⅡへの変換を阻害して,尿中ナトリウム排泄を促進する.なお,尿中カリウム排泄は抑制される.
×⑸ アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は,アンジオテンシンⅡ受容体を直接的に拮抗し,血管平滑筋を弛緩させる.アルドステロン分泌を抑制することで腎臓では,カリウム再吸収が保持される.したがって,血清カリウム値は上昇しやすく,副作用として高カリウム血症を生じることもある.
正解 : (4)
【解法の要点】
心房細動と心室細動は名前が類似しているが,病態,予後が全く異なる.同様に狭心症と心筋梗塞,白衣高血圧と仮面高血圧,左心不全と右心不全についても 症状,病態,治療法の違いを理解しておこう.
【解説】
×⑴ 心房細動は,脳梗塞(脳塞栓)のリスク因子である.脳出血のリスク因子となる循環器疾患には,高血圧などがある.
○⑵ 文章通り.心室細動は,ただちに心肺蘇生術および電気的除細動が必要な致死性不整脈である.
×⑶ 心筋梗塞による胸痛には,ニトログリセリンは無効であり,塩酸モルヒネの静注やアスピリンの服用を行う.ニトログリセリンが有効なのは,狭心症による胸痛である.
×⑷ 仮面高血圧では,家庭血圧が高く,医療環境下(診察室)の血圧は正常である.なお,家庭血圧が正常で,医療環境下の血圧が高いのは白衣高血圧(診察室高血圧)である.
×⑸ 右心不全では,体循環のうっ血をきたす.肺うっ血をきたすのは,左心不全である.
正解 : (2)