【解法の要点】
内分泌疾患に関する基本的な問題である.各内分泌疾患の成因,症候・症状などについてまとめておこう.
【解説】
×⑴ 原発性アルドステロン症では,低カリウム血症の他,高血圧,代謝性アルカローシスなどがみられる.なお,内分泌疾患で高カリウム血症がみられるのは,アジソン病である.
×⑵ 甲状腺機能亢進症では,頻脈がみられる.反対に,甲状腺機能低下症では,徐脈となる.
×⑶ ADH 不適切分泌症候群(SIADH)では,ADH(バソプレシン)の分泌が不適切に持続するため,尿から水の再吸収が促進される.そのため,血漿が薄まり,低ナトリウム血症がみられる.
×⑷ 褐色細胞腫は,副腎や交感神経節から発生するカテコールアミン産生腫瘍である.そのため,腫瘍から過剰に分泌されるカテコールアミンにより,高血糖の他,高血圧や代謝亢進などがみられる.
○⑸ 文章通り.クッシング症候群では中心性肥満の他に,満月様顔貌,高血圧, 高血糖,骨粗鬆症などがみられる.
正解 : (5)
【解法の要点】
内分泌疾患にみられる検査値の特徴に関する問題である.内分泌疾患はホルモン分泌の異常亢進または低下により起こることが多い.そのため,その疾患でみられる検査値の異常については,そのホルモンのはたらきを知っておくことが重要である.
【解説】
×⑴ 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)は,血液が希釈されて低ナトリウム血症がみられる.この疾患では,抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌が不適切に持続して起こることで,過剰に分泌された抗利尿ホルモンの作用で水が体内に貯留する.
×⑵ バセドウ病では,血中甲状腺ホルモンの上昇による負のフィードバック機構により,血清甲状腺刺激ホルモンは低下する.反対に原発性甲状腺機能低下症では,血清甲状腺刺激ホルモンは上昇する.
○⑶ 文章通り.クレアチンキナーゼ(CK)は,筋肉細胞内にある酵素で,原発性甲状腺機能低下症や急性心筋梗塞,骨格筋の疾患などで上昇する.原発性甲状腺機能低下症では,障害された骨格筋細胞内からクレアチンキナーゼが逸脱して上昇すると考えられてはいるが,その機序については不明な点が多い.
×⑷ クッシング症候群では,過剰に分泌されたコルチゾールの作用で,血糖値の上昇や高血圧,中心性肥満がみられる.低血糖がみられる内分泌疾患には,アジソン病やインスリノーマ(インスリンを過剰分泌する腫瘍)がある.
×⑸ 原発性アルドステロン症では,過剰に分泌されたアルドステロンの作用により,低カリウム血症がみられる.高カリウム血症がみられる内分泌疾患には,アジソン病がある.
正解 : (3)
【解法の要点】
内分泌疾患は,ホルモン分泌の過剰な上昇や低下で起こるものがほとんどである.そのため,症候や血液検査の所見は,分泌過剰と低下で起こる疾患で逆であることが多い.
【解説】
×⑴ クッシング症候群では,テタニーはみられない.テタニーは,低カルシウム血症や低マグネシウム血症でみられるため,低カルシウム血症が起こる副甲状腺機能低下症でみられる.
×⑵ 甲状腺機能亢進症では,甲状腺ホルモンの過剰分泌による代謝亢進により,体温は上昇する.低体温がみられる内分泌疾患には,甲状腺機能低下症やアジソン病がある.
×⑶ 褐色細胞腫では,高血糖がみられる.ほかに高血糖を起こしやすい内分泌疾患には,甲状腺機能亢進症,クッシング症候群などがある.反対に低血糖を起こしやすい内分泌疾患には,甲状腺機能低下症,アジソン病,インスリノーマ(インスリン産生腫瘍)などがある.
◯⑷ 文章通り.アジソン病とは,副腎皮質で産生されるホルモンであるコルチゾールやアルドステロンの分泌が低下して起こる疾患である.
×⑸ 尿崩症では,低張尿がみられる.尿崩症は,バソプレシンの分泌低下や効きにくくなって起こる疾患であるため,腎臓での水の再吸収が低下し,尿を濃縮できずに低張尿となる.高張尿がみられる内分泌疾患には,SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)がある.
正解 : (4)
【解法の要点】
内分泌疾患の中で頻出するバセドウ病については,多くの場合,その症候が反対となる甲状腺機能低下症と比較して学ぶと理解しやすい.
【解説】
×⑴ バセドウ病では,基礎代謝量は上昇し,体重減少や食欲亢進,体温上昇などが起こる.反対に,甲状腺機能低下症では,基礎代謝が低下し,体重増加や耐寒性低下などが起こる.
×⑵ バセドウ病では,腸管蠕動運動が増強し,軟便や下痢となる.反対に,甲状腺機能低下症では,腸管蠕動運動が減弱し,便秘となる.
×⑶ バセドウ病では,ネガティブフィードバックにより,血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が低下する.反対に,原発性甲状腺機能低下症では,血清甲状腺刺激ホルモンは上昇する.
○⑷ 文章通り.バセドウ病では,血清遊離トリヨードサイロニン(FT₃)値,血清遊離サイロキシン(FT₄)ともに上昇する.反対に,甲状腺機能低下症では,これらの指標は低下する.
×⑸ バセドウ病では,血清総コレステロール値が低下する.反対に,甲状腺機能低下症では上昇する.
正解 : (4)