【解法の要点】
食品に含まれる色素成分は,頻出事項である.色調の変化の条件もあわせて整理しておこう.
【解説】
×⑴ β-クリプトキサンチンは,みかんやトウモロコシに含まれる橙色を呈するカロテノイドで橙色を呈すが,酸化などにより退色や変色が起こる.なおアルカリ性で青色を呈するのはアントシアニン系のフラボノイドである.
×⑵ フコキサンチンは,褐藻類に含まれるカロテノイドである.カロテノイドのうち,α-,β-カロテンやβ-クリプトキサンチンはプロビタミンA(ビタミンA前駆体)であるが,フコキサンチン,ルテイン,リコペンなどは非プロビタミンA である.
×⑶ クロロフィルは,酸性条件下で加熱すると,ポルフィリン環のマグネシウムイオンが水素イオンと置換し,黄褐色のフェオフィチンになる.クロロフィルをアルカリ性条件下で加熱すると,脱フィトール,脱メタノールにより鮮緑色のクロロフィリンになる.
○⑷ 文章通り.テアフラビンは,茶のカテキン類がポリフェノールオキシダーゼによって酸化されて生成される.紅茶(発酵茶)の紅色に寄与している.
×⑸ ニトロソミオグロビンは,食肉の色素成分であるミオグロビンが食肉加工時に発色剤として添加される硝酸塩や亜硝酸塩によりニトロソ化したものである.加熱するとニトロソミオグロモーゲンになり,食肉のピンク色が保持される.ミオグロビンが酸化されて生じるメトミオグロビンは肉色褐変の原因であり,加熱するとメトミオグロモーゲンになる.
正解 : (4)
【解法の要点】
食品の色素成分はさまざまな食品を例に毎年問われるテーマである.食品ごとの色素成分を覚えておくとともに,pHによる変化もよく理解しておこう.
【解説】
◯⑴ ほうれんそうの緑色は,クロロフィルである.クロロフィルは,酸性で黄(緑)褐色,アルカリ性で鮮緑色になる.
×⑵ 赤たまねぎの赤紫色は,アントシアニンである.アントシアニンは,酸性で赤色,アルカリ性で青色になる.
×⑶ れんこんに含まれるフラボノイドは,酸性で白色,アルカリ性で黄色になる.また,れんこんに酢を加えると褐変が抑制され,白色が保たれる.これは,れんこんに含まれるタンニンが空気に触れることで褐変を引き起こすことを防ぐためである.
×⑷ にんじんにはカロテノイドが含まれる.カロテノイドは,pHによって影響をあまり受けないため酢による変色は起きない.お,カロテノイドは酸素や光に不安定であり,異性化や酸化が起こりやすく,空気に触れる時間が長いことなどにより,黒色への変色がみられる.
×⑸ 肉類は酢につけても色の変化はしない.牛肉が暗赤色から鮮赤色への変化は肉を切った際に肉の色素であるミオグロビンが酸素と結合してオキシミオグロビンに変化するときに起こる現象である(ブルーミング).また肉類は食酢に漬けることにより,たんぱく質分解酵素がはたらき,肉質は軟らかくなる.
正解 : (1)
【解法の要点】
果実類に含まれる特徴的な成分について問う問題は,食品の二次機能としても出題されることが多い.細部までしっかり整理しておこう.
【解説】
×⑴ パパイアに含まれるたんぱく質分解酵素は,パパインである.ブロメラインは,パイナップルに含まれるたんぱく質分解酵素である.
○⑵ 文章通り.β-クリプトキサンチンは,プロビタミンAであり,体内でビタミンAに変換する.
×⑶ レモンの酸味は,クエン酸による.酒石酸は,ぶどうの酸味成分である.
×⑷ グレープフルーツの苦味は,フラボノイドの一種であるナリンギンによる.ヌートカトンは,グレープフルーツの香気成分である.
×⑸ りんごの特有な食感は,ペクチンによる.細胞壁をリグニン,ペントザン,セルロースなどで構成する石細胞は,日本なしに特有なザラザラした食感を与える.
正解 : (2)
【解法の要点】
さまざまな食品に含まれる特徴的な呈味成分,また辛味やえぐ味,渋味を呈する成分について覚えておこう.
【解説】
×⑴ わさびの辛味は,アリルイソチオシアネートによる.ピペリンは,こしょうの辛味成分である.
×⑵ 干ししいたけのうま味は,グアニル酸による.グルタミン酸は,こんぶやトマトのうま味成分である.
×⑶ にがうりの苦味は,ククルビタシンによる.テオフィリンは,茶葉の苦味成分である.
×⑷ 柿の渋味は,可溶性タンニンによる.可溶性タンニンを不溶性タンニンに変換(脱渋)すると,渋味を感じなくなる.なお,不溶性ペクチンは,りんごなどの未熟果実に多く含まれる多糖類であり,呈味成分ではない.
〇⑸ 文章通り.えぐ味成分であるホモゲンチジン酸は,たけのこの他,さといもにも多く含まれる.
正解 : (5)