【解法の要点】
食品の変質について,その機構と特徴を整理しておこう.また,変質に伴って生成する物質を利用した食品の鮮度の判定法についてもあわせて覚えておこう.
【解説】
〇⑴ 文章通り.油脂は,空気中の酸素分子が不飽和脂肪酸の二重結合の部位に付加することで酸化する.そのため,空気の代わりに窒素ガスを充填することで,油脂の酸敗を抑制できる.
〇⑵ 文章通り.魚肉が変質すると,たんぱく質が分解され,アンモニアやトリメチルアミンなどの揮発性塩基窒素が生成する.なお,揮発性塩基窒素は, 食品鮮度の判定に使用される指標の1つである.
〇⑶ 文章通り.食肉に含まれるメチオニンやシステインなどの含硫アミノ酸が,微生物によって分解されると,悪臭の原因となる硫化水素(H2S)が生成する.
×⑷ ヒスタミンは,ヒスチジンが脱炭酸されることで生成する.なお,ヒスタミンは,食品鮮度の判定に使用される指標の1つである.
〇⑸ 文章通り.K値は,食品鮮度の判定に使用される指標の1つであり,ATP関連化合物に対する分解物であるHxR(イノシン),Hx(ヒポキサンチン)の割合を示す.K値は,魚介類や食肉の鮮度の低下に伴い上昇する.
正解 : (4)
【解法の要点】
食品成分の変質は,食品の安全・安心に関わるため重要である.食品の製造・流通・販売などの各段階で,食品の安全性の確保,消費者の安心を得るためにも
整理・確認しておきたい事項である.
【解説】
×⑴ ヒスタミンは食品中に含まれる必須アミノ酸の一つであるヒスチジンが,ヒスタミン生産菌により脱炭酸されて生成する.ヒスタミンを大量に含む食品を食べると,1時間以内に,顔,特に口の周りや耳たぶが紅潮し,頭痛,じんましん,発熱など,アレルギー様の症状が出るヒスタミン食中毒を引おこす.ヒスチジンを多く含む食品は,まぐろ,さば,いわし,などがある.
×⑵ 自動酸化は,脂肪酸の二重結合部位に挟まれたメチレン基(活性メチレン基)の水素が,光や熱などの影響により引き抜かれることで起きる酸化反応である.そのため構造に二重結合を持つ(多価)不飽和脂肪酸は自動酸化が進行しやすい.
×⑶ 硫化水素は,硫黄化合物から生成されるため,これらを含まないでんぷんからは発生しない.
〇⑷ 過酸化物価は空気中の酸素付加により油脂が酸化し,生成した過酸化物(ヒドロペルオキシド)の量を示し,脂質の(自動)酸化の初期の指標となる.ただし自動酸化の後半過程では,過酸化物は分解や重合をおこすため,値は低下していく.
×⑸ K値は,魚類や肉類の鮮度を示す客観的指数のひとつである.鮮度が落ちるとともに増加するATP関連化合物全体に占めるイノシン(HXR)とヒポキサンチン(HX)の合計値の割合(%)である.数値が低いほど鮮度が良く,高いほど鮮度が落ちていることを示す.
正解 : ⑷