【解法の要点】
環境汚染化学物質による生体への影響について,臨床症状を十分理解しておこう.
【解説】
×⑴ ポリ塩化ビフェニル(PCB)は,脂溶性物質であり,水に溶けにくい.なお,ポリ塩化ビフェニルは,カネミ油症の原因物質である.
×⑵ デオキシニバレノールは,小麦や米などを汚染するカビ毒である.なお,りんごを汚染するカビ毒には,パツリンなどがある.
×⑶ ストロンチウム90は,骨に沈着しやすく,骨腫瘍や骨髄の造血機能障害などを引き起こす.なお,甲状腺に蓄積されやすい放射性物質は,ヨウ素131である.
○⑷ 文章通り.工場から排出されたメチル水銀によって発症した水俣病では,四肢の感覚障害や求心性視野狭窄などの中枢神経障害がみられた.
×⑸ アフラトキシンは,熱安定性がきわめて高く,通常の加熱条件等ではほとんど分解されない.なお,アフラトキシンは,急性の肝機能障害や肝がんを引き起こす.
正解 : (4)
【解法の要点】
食品に含まれるか食品中で生成される発がん物質などの有害物質に関連した問題である.主な発がん物質について確認しておく必要がある.
【解説】
○⑴ 文章通り.アフラトキシンM群は,アフラトキシンB群やG群に汚染された飼料で育てられた乳牛の乳汁中に検出される.
○⑵ フモニシンはフザリウム属のカビにより産生され,主にトウモロコシおよびその加工品から検出される.特にフモニシンB1の肝臓に対する発がん性が実験的に明らかにされている.
○⑶ 文章通り.アクリルアミドは,アスパラギンとグルコースなどの還元糖が高温加熱されることで起こるアミノカルボニル反応によって生じる.炭水化物を多く含む食品の加工で生じやすい.
×⑷ ヘテロサイクリックアミンは魚や肉などのたんぱく質を多く含む食品の焼け焦げに含まれるアミノ酸熱分解物である.肝がんをもたらすとされている.
○⑸ ウシやヒツジなどの反芻動物では反芻胃に生息する微生物によりトランス脂肪酸が形成されるため,牛肉や羊肉,牛乳・乳製品にはトランス脂肪酸を微量に含んでいる.トランス脂肪酸はLDLコレステロールを増加させ,HDLコレステロールを低下させることから,トランス脂肪酸を含む脂質の情報開示を消費者庁は食品事業者に求めている.
正解 : (4)