【解法の要点】
食品の保存に関する問題は例年出題される重要分野である.各選択肢はいずれも基礎事項であり,その原理とともにしっかりと理解しておこう.
【解説】
×⑴ ブランチングの加熱処理によって酵素は熱失活し,酵素による品質劣化が抑制できる.
○⑵ 文章通り.最大氷結晶生成帯を短時間で通過させることで食品内部の氷結晶の生成や成長を防ぐことができる.その結果,食品中の細胞破壊が抑制され,ドリップの生成などによる品質低下が抑制される.
×⑶ 塩蔵や糖蔵によって結合水が増えることで食品の浸透圧が上昇し,水分活性は低下するため微生物増殖が抑制され,腐敗を防ぐことができる.
×⑷ CA貯蔵では,大気より酸素濃度は低く,二酸化炭素は高濃度にして食品の呼吸活性を抑制することで品質劣化を防ぎ,保存期間を長くする貯蔵法である.また,呼吸活性を低下させるために貯蔵温度も低温で行う.
×⑸ 酢漬けなどの酸を用いた保存では,無機酸ではなく酢酸や乳酸などの有機酸が用いられる.有機酸の非解離性分子には微生物の増殖抑制作用があり,同一pH で比べると無機酸より微生物の増殖抑制作用が強い.
正解 : (2)
【解法の要点】
近年,食品の容器や包装材料として市場に幅広く出回っている素材についての基礎的知識を問う問題である.容器包装は,食品の品質保持に重要であるため各素材について,しっかりと内容を確認しておきたい.
【解説】
×⑴ ガラスは,プラスチックに比べて酸やアルカリなど化学的な要因に対する安定性が高い.一方,熱や衝撃など物理的要因に対して弱いとされてきたが,近年では温度変化に強い耐熱ガラスや,衝撃に強い強化ガラスもつくられている.
×⑵ 生分解性プラスチックは,微生物によって低分子化合物に分解され,最終的には二酸化炭素や水のみとなるものを指す.生分解性プラスチックの原料には,でんぷんなどの生物資源由来のほかに,微生物産生物,化学合成物によるものがある.
×⑶ ラミネート包材は,性質の異なるフィルムを積層して性能を強化したフィルムのことを指す.合わせる素材には種々のプラスチック,紙,アルミニウムなどが用いられている.
○⑷ 無菌充填包装では,食品の滅菌と包装材料の滅菌を別々に行い,無菌環境下で食品を容器に充填,包装する.LL牛乳(ロングライフ牛乳)など長期保存可能な製品に用いられる.
×⑸ 真空包装は,包装内の酸素を除くため,好気性微生物の生育を阻止できる.嫌気性微生物は酸素がなくても増殖するため真空包装で生育を阻止することはできない.
正解 : (4)
【解法の要点】
食品の保存に関する問題は例年出題されるため,基本的な保存方法,原理については理解しておこう.
【解説】
×⑴ グレーズ処理とは,冷凍保管中の酸化などによる品質低下や乾燥を防ぐために,「飲料水または添加物を加えた飲料水を吹きつける,またはそこに浸すことにより冷凍製品の表面に氷の保護層を作ること」である.食品を空気から遮断するため,変色や風味が落ちるなどの冷凍焼けの防止にも有効である.
〇⑵ 文章通り.青果物は,収穫後においても生命活動を維持している.そのため,温度,湿度,ガス組成などの環境が,品質低下などに大きく影響を及ぼす.温度においては,20 ℃から10 ℃に下げると,呼吸量は抑制される.
×⑶ CA貯蔵は,二酸化炭素濃度を上昇させ,呼吸を抑制することで保存期間を長くする貯蔵法である.二酸化炭素濃度については,食品の種類によって異なるが,2 ~ 10 %上昇させる.なお二酸化炭素濃度が高すぎると,青果物内部の褐変や肉質の軟化などの品質低下を招く.
×⑷ 保存性が高いのは,冷燻法である.冷燻法は,熱燻法に比べて燻煙温度は40 ℃以下と低いが,燻煙時間が数日間と長いため,水分含量も少なくなり,保存性が高くなる.
×⑸ 食肉缶詰は,気密性のある容器包装に充てんした後,製品の中心部の温度を120 ℃で4分間加熱する方法またはこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌している.
正解 : ⑵