【解法の要点】
栄養補給法の種類と選択方法を問う基本的な問題である.栄養補給法の目的,選択の基準,適応疾患,投与ルートを確認しよう.加えて投与方法,栄養剤の内容,必要な用具・器具,合併症などを丁寧に学習すること.
【解説】
×(1)~(4) 選択肢(5)の解説を参照.
〇(5) イレウス(腸閉塞)のため,経口栄養,経腸栄養は適応でない.長期の栄養管理が必要なため,静脈栄養にて十分なエネルギー補給が可能な中心静脈栄養を選択する.
正解 : (5)
【解法の要点】
経管栄養法は,国家試験の頻出内容である.適応と投与ルート,投与方法,経腸栄養剤の種類と選び方,合併症とその対策について丁寧に学習しよう.下痢は頻度の多い合併症である.下痢の原因として,栄養剤関連のものは,濃度,浸透圧,投与速度,温度,成分,取り扱いによる細菌汚染などがある.下痢の原因として最も影響が大きい点は,投与速度が速すぎることである.
【解説】
×⑴ 脂質含量の少ない経腸栄養剤に変更する.脂質含有量が多いほど消化吸収能に負担がかかり下痢が起こりやすい.また,下痢を回避するために,吸収されやすい中鎖脂肪酸が多く含まれている栄養剤などに変更する.
×⑵ 浸透圧の低い経腸栄養剤に変更する.浸透圧の高い栄養剤の投与では,小腸上皮から腸管腔内に水分が移動し,腸粘膜での水分の再吸収がしにくくなり,蠕動運動が亢進し,下痢を生じる.ヒトの空腸内の浸透圧は280~300mOsm/Lであるが,栄養剤は300~500mOsm/L以上のものがあり,浸透圧が高い製剤は投与速度を低下させて下痢を予防する.
×⑶ 濃度の高い栄養剤は下痢を起こしやすい.1.0 kcal/mLの半消化態栄養剤を使用しているため,濃度の高い栄養剤に変更する必要はない.ただし,1.5~2.0 kcal/mLの高エネルギーの栄養剤の投与が必要な場合,単純に濃度の低い栄養剤に変更すると摂取エネルギー量が減少してしまう.このような場合は,投与速度を遅らせて,水分は食間に注入する,もしくは静脈的に投与するなどの対策をとる.
×⑷ 経腸栄養剤は,常温で投与する.常温で投与しているため,温度を低くする必要はない.
○⑸ 文章通り.20 ~ 50 mL/時から開始し,徐々に速度を上げる.100mL/時で下痢が発生しているので,投与速度を下げることが適切である.
正解 : (5)
【解法の要点】
誤嚥性肺炎に関する栄養管理は頻出問題である.高齢者に起きやすい肺炎なので,嚥下機能低下との関連や経腸栄養管理の投与方法などの基本事項についても確認しておこう.
【解説】
○⑴ 誤嚥性肺炎の原因として考えられるのが嚥下機能の低下である.繰り返し発症している原因を臨床評価や嚥下造影検査などの嚥下機能検査で嚥下状態を観察し判定する.
×⑵ 栄養剤投与を仰臥位で行うと,栄養剤の逆流が起こる可能性があるので誤り.栄養剤投与時は,ベッドを30度程度に上げた状態で投与する.
○⑶ ハリス・ベネディクトの基礎代謝量に傷病者の活動係数を乗じて推定エネルギー必要量を算出する.
655.1 +(9.563 × 50)+(1.85 × 150)−(4.676 × 93)= 975.88
活動係数を傷病者とする場合は,ベッド上以外での活動(リハビリ,生活移動あり)と判断して,活動係数1.3を乗じると1,268.6 kcalとなる.BMIは22.2であり,リフィーデング(refeeding)症候群なしと判断し,設問の1,300 kcal/日は目標量として適切である.
○⑷ 半消化態栄養剤の投与は,低速から様子を見ながら開始する.高齢患者の場合は消化機能低下もあるため,25 mL/時でゆっくり投与することで下痢などを予防する.
○⑸ 正しい.半固形栄養剤は,配合されているゲル化剤などにより,粘性があり,その特性として液体より固体に近い半流動性をもつ.液体より逆流が起きにくいため,高齢者の誤嚥性肺炎の予防に適した栄養剤である.
正解 : (2)
【解法の要点】
経腸栄養剤には多くの種類があり,患者の状態にあわせて,組成,濃度,粘度などが適切なものを選択しなければ,合併症をきたす要因ともなる.特に,消化吸収の視点で各栄養剤の特徴を確認しておこう.
【解説】
×⑴,⑶ 成分栄養剤および消化態栄養剤の糖質は,デキストリンである.選択肢⑸を参照.
×⑵ 成分栄養剤の窒素源は,すべて合成L型アミノ酸である.
×⑷ 消化態栄養剤の窒素源はアミノ酸,ジペプチドトリペプチドからなり,たんぱく質を含まない.なお,窒素源としてたんぱく質を含むのは,天然濃厚流動食である.
◯⑸ 半消化態栄養剤の主な糖質は,デキストリンである.デキストリンは,カロリーを得やすい多糖類であり,水溶性で消化されやすく,浸透圧も低いことから,経腸栄養剤の主な糖質源として利用されている.
正解 : (5)
【解法の要点】
静脈栄養は,末梢静脈栄養と中心静脈栄養に分けられる.それぞれの適応と投与ルート,投与方法,輸液の種類と特徴,副作用,合併症をまとめよう.国試では,輸液の種類と特徴が頻出である.
【解説】
×⑴ 1日に1,200 kcal程度の投与が限界である.
×⑵ 一般的にアミノ酸濃度は3%程度である.
×⑶ 脂肪乳剤は,0.1 g/kg標準体重/時以下で投与する.これは,脂肪乳剤の人工脂肪粒子が効率よくリポたんぱく化され,加水分解される投与速度の上限を,トリグリセリドに換算した数値である.
×⑷ 一般的に,末梢静脈栄養法で投与可能なブドウ糖濃度は10%が限界とされる.糖質濃度が7.5%程度で電解質やアミノ酸,ビタミンB₁を含む製剤が使用される.ブドウ糖液が10%を超えると静脈炎発症頻度も高くなる.
○⑸ 文章通り.末梢静脈を経由して投与できる製剤の浸透圧は900 mOsm/Lが限度とされている.浸透圧が高いと血栓静脈炎の原因となる.浸透圧を下げるために脂肪乳剤を併用することは有用である.
正解 : (5)