【解法の要点】
栄養素の吸収がどこで行われるか,またそれぞれの臓器の役割と摘出したあとはどんな栄養素の吸収障害が起こるかを理解しておけば解ける問題である.
【解説】
×⑴ 食道自体には消化や吸収の機能はなく,口から入った食べ物や飲料を胃まで輸送(蠕動運動)する役割を果たしているため,食道切除による栄養素の消化吸収障害はない.ビタミンAは小腸で脂質とともに吸収されることから,小腸切除時に吸収障害がみられる.
○⑵ 正しい組み合わせ.カルシウムは胃酸によって可溶化され,主に十二指腸や空調上部で吸収される.胃切除によって胃酸の分泌が不足するため,カルシウム吸収量が低下し,骨粗鬆症につながると考えられる.
×⑶ 直腸切除と肛門括約筋の収縮・弛緩を調整する自律神経が傷ついて,便意を感じるメカニズムが障害されたりする.巨赤芽球性貧血はビタミンB12の不足によって起こる.ビタミンB₁₂は胃壁細胞から分泌される内因子と結合し,回腸末端部分で吸収される.それゆえに,吸収障害は胃切除によって生じる.
×⑷ 大腸は水分の吸収を行うため,切除することによって下痢,排便回数の増加がみられる.ダンピング症候群は胃切除によって高浸透圧の食物が急速に腸内に入るために生じる.
×⑸ 胆囊は胆汁をいったん蓄え,濃縮する役割があるため,胆のうを切除すれば,胆汁は濃縮されない.つまり脂肪の分解,吸収を助けるはたらきが弱くなる.そのため,脂溶性ビタミンの吸収障害などがみられる.ビタミンB₁は空調と回腸で吸収されるため,小腸が切除されると吸収障害を生じる.
正解 : (2)
【解法の要点】
消化器手術による合併症は,摘出または切除される臓器の特徴を理解できていれば想像できるものが多い.そのため,各臓器の特徴と手術による合併症をあわせて確認しておこう.
【解説】
×⑴ 食道は,食べ物や水分を,蠕動運動により胃に運ぶ役割をもつが,栄養素の吸収には関与しない.そのため,食道切除の合併症として,栄養素の吸収障害はみられない.なお,食道切除の合併症には,肺炎などの呼吸器合併症, 反回神経麻痺,嚥下機能低下,縫合不全などがある.
◯⑵ 正しい組合せ.胃全摘では,胃酸の還元作用不足より,鉄吸収が低下するため,鉄欠乏性貧血が起こりやすくなる.さらに,胃全摘後3~ 6年では,キャッスル内因子が欠乏し,ビタミンB₁₂の吸収が低下するため,巨赤芽球性貧血を引き起こすことがある.
×⑶ 胆嚢は,脂質の消化吸収を助ける胆汁を貯え,濃縮する役割を持つ.そのため,胆嚢摘出後には,胆汁の貯留と排出の調整ができず脂肪の消化吸収が不安定になるが,低血糖を引き起こすことはない.
×⑷ 膵臓は,インスリンやグルカゴンなどの血糖を調節するホルモンや,消化酵素を分泌する.そのため,膵臓摘出により血糖コントロール不良や栄養素の消化吸収障害を引き起こすことがあるが,嚥下障害を引き起こすことはない.
×⑸ 直腸は,便を溜め,排泄するはたらきをもつ.そのため,直腸切除により,腸閉塞などの排便障害を起こすことがある.なお,ダンピング症候群は,胃の手術の合併症である.
正解 : (2)
【解法の要点】
近年の国試では,がんの栄養管理がしばしば出題される.管理栄養士には,がん患者の栄養障害を適切に評価し,がんの罹患部位や症状,手術療法,化学療法,放射線療法など治療に伴う有害事象の軽減,個々に応じたきめ細かな栄養管理,栄養食事指導ができることが必要とされる.しっかり学習しよう.
【解説】
×⑴ 悪液質では,筋たんぱく質の異化が優位になる.筋肉量の減少,体重減少がみられる.
×⑵ 化学療法施行時には,食欲が減退する.化学療法の副作用として吐き気,嘔吐,胃の不快感,下痢,便秘などの消化器症状,口内炎などにより食欲低下となり,低栄養状態をきたしやすい.
×⑶ カルシウムの吸収が障害される.食事摂取量の減少,脂質の吸収不良によるビタミンD生成量の減少,胃切除による胃酸分泌の低下に伴う消化物のアルカリ化などのため,カルシウム吸収障害が起こり,骨吸収が促進する.
〇⑷ 上行結腸にストマを増設した後は,腸内容物の水分が十分吸収されず消化酵素や水分を含んだ泥状の便が排出されるため,脱水に注意する.
×⑸ 禁忌ではない.終末期では,痛みや症状緩和のコントロールを行い患者が欲する料理や食品を提供することで,QOLの向上に寄与する.
正解 : (4)