【解法の要点】
食事調査法によって,習慣的な食事摂取量の把握のしやすさが異なる.一般的に,対象者および調査者の負担が大きく,長期間の実施が難しい方法では習慣的摂取量の把握が難しい.本問では,1,000人を対象とした比較的大規模な調査であることもふまえて考えよう.
【解説】
×⑴ 食事記録法(秤量法)は,食べたものをすべて計量・記録する方法であり,対象者の負担が大きい.また,習慣的摂取量を把握するためには,複数回の調査を実施する必要がある.したがって,本問の規模で習慣的摂取量を把握するための調査法として適切とは言えない.
×⑵ 24時間食事思い出し法は,対象者が過去24時間に食べたものを思い出し,調査者が摂取量を推測する方法であり,調査者の負担が大きく,コストもかかる. また,習慣的摂取量を把握するためには,複数回の調査を実施する必要がある.したがって,本問の規模で習慣的摂取量を把握するための調査法として適切とは言えない.
〇⑶ 半定量式食物摂取頻度調査法は,過去の一定期間中の習慣的な食事摂取量を調査する方法であり,1回の調査で個人の習慣的な食物摂取状況を把握することができる.この方法は,対象者および調査者の負担も少ないため,大規模な調査に利用しやすい.
×⑷ 陰膳法は,食べたものと同じ食事を準備し,分析する方法であり,費用がかかる.また,習慣的摂取量を把握するためには,複数回の調査を実施する必要がある.したがって,本問の規模で習慣的摂取量を把握するための調査法として適切とは言えない.
正解 : (3)
【解法の要点】
食事調査法の特徴は,ほぼ毎年出題される頻出事項である.それぞれの短所・長所について整理して把握しておこう.
【解説】
×⑴ 秤量法は,食べる前に計量して記録する方法であるため,量の測定誤差が小さい.一方で,目安量法は目安量(たとえば卵1個 など)から調査員が量を推定するため,測定誤差が生じる.したがって,目安量法は秤量法に比べて摂取量推定の誤差が大きい.
×⑵ 食事記録法は食べる前に記録していく方法であるため,記憶に依存しない.一方で,食物摂取頻度調査は,過去に食べたものについて記録する調査であるため,記憶に依存する.したがって,食物摂取頻度調査は食事記録法よりも個人の記憶に依存する.
×⑶ 食物摂取頻度調査法は多くは自記式のアンケート形式であり,調査者による面談などを必要としない.したがって,面談の必要がある24時間思い出し法に比べて調査者の負担は小さい.
〇⑷ 文章通り.半定量食物摂取頻度調査法の質問票は,対象となる集団によって必要な食品項目や目安量が異なり,厳密な摂取量が推定できていない可能性がある.そのため,適切に把握できているかどうか,より厳密に推定できる(しかし,負担の大きい)食事記録法などを用いた摂取量と比較して妥当性を検討する必要がある.
×⑸ 飲食したものすべてと同量のサンプルを集めて成分分析する方法であるため,対象者・調査者ともに負担が大きく,長期間の実施は困難である.そのため,習慣的摂取量把握には適していない.
正解 : (4)
【解法の要点】
食事調査の精度と妥当性に関する問題である.変動と誤差の種類をその特徴や精度や妥当性に与える影響と合わせて把握しておこう(精度という用語は,厳密には再現性を示すが,出題者の意図は妥当性を意味していると推測される).
【解説】
×⑴ 過小申告は系統誤差であるため,調査日数を増やしても精度に影響しない.なお,偶然誤差は,調査日数を増やすことで精度を高めることができる.
×⑵ 季節変動は個人内変動であるため,対象者の人数ではなく,各対象者の調査日数を増やせば影響が小さくなる.
〇⑶ 文章通り.摂取量の平均値の標準誤差は,「摂取量の標準偏差/対象人数の平方根」で算出される.したがって,対象人数が多くなれば小さくなる.
×⑷ 集団の摂取量の分布(変動)は,主に個人内と個人間の変動で成り立っている.個人内変動の影響を小さくするために調査日数を増やせば,集団摂取量の変動も小さくなる.逆に,「国民健康・栄養調査」のように食事日数が1日の場合,集団の摂取量分布は広くなる(ただし,平均値は変わらない).
×⑸ 日間変動の大きさは,栄養素の種類によって大きく異なる.一般に,エネルギー産生栄養素など多くの食品に含まれている栄養素では小さいが,微量栄養素は大きい.特定の食品に多量に含まれているような栄養素(例:レチノール)では特に大きい.
正解 : (3)