品質と標準化
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冷気の強制対流によって,急速冷却を行う調理機器である.
最も適当なのはどれか.1 つ選べ.
- ⑴ 真空冷却機
- ⑵ タンブルチラー
- ⑶ ブラストチラー
- ⑷ コールドテーブル
- ⑸ コールドショーケース
【解法の要点】
本問では,冷却機器の冷却システムと,機能について問われている.冷気の強制対流を用いた冷却システムかつ,急速冷却機能をもつ調理機器を選ぶ.解説でまとめた内容を中心に,大量調理施設で用いられる大量調理機器の種類と機能を確認しておこう.
【解説】
×⑴ 真空冷却機は,冷却槽内に加熱調理後の食品を減圧状態におくことにより,食品内部に含まれている水分を蒸発させ,その際の蒸発熱で冷却する機器である.
×⑵ タンブルチラーは,液状食品と固体食品により若干工程が異なるが,基本的には加熱調理後食品をパックに充填し,氷温の冷却水が循環するタンク内のドラムの中に投入し,回転撹拌(タンブリング)させながら急速冷却を行う.
〇⑶ 正しい.ブラストチラーは,冷却空気(-15 ℃以下の凍結温度の冷気)を庫内ファンによって強制対流させ,食品を急速に冷却する機器である.
×⑷ コールドテーブルは,「コールド(冷たい)」と「テーブル」の組み合わせにあるように,作業台(天板)の下に冷蔵・冷凍機能が設置されている機器である.冷蔵・冷凍機能部分は,冷気自然対流式とファンモーターによる冷気強制循環式があるが,冷気の強制対流による急速冷却の機能はブラストチラーの方が優れていることと,機器の使用目的が急速冷却ではなく調理中の食材の保管であるため,最も適当とはいえない.
×⑸ コールドショーケースは,庫内が外部から透視できる開口面をもち,この開口面がガラスなどの透明な材質でクローズされているタイプとオープンタイプで大別される.ショーケース庫内の冷却は,冷却器で冷却された冷気を対流させるが,小型のものは自然対流式が多く,大型のものやオープンタイプは冷気をファンで循環する強制対流式が多い.冷気の強制対流による急速冷却の機能はブラストチラー方が優れていることと,機器の使用目的が急速冷却ではなく食材料の保管であるため,最も適当とはいえない.
正解 : (3)
19166サイクルメニュー導入の利点に関する記述である.誤っているのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 献立作成業務が軽減できる.
- ⑵ 食材料発注業務が簡素化できる.
- ⑶ 調理作業が標準化できる.
- ⑷ 棚卸し業務が省略できる.
- ⑸ 食数管理が効率化できる.
【解法の要点】
サイクルメニューは,あらかじめ一定期間の献立を作成し,それを繰り返し使う方法である.本問の選択肢のような利点があるため,多くの給食施設で導入されている.サイクルメニュー作成にあたっては,同じ曜日に同じ献立としない, 食材や調理法を重複させないなど,喫食者の満足度を高める配慮が必要である.
【解説】
◯⑴ 同じ献立を再利用できるため,献立作成に要する時間を軽減することができ,作業の効率化が図れる.
◯⑵ 献立に必要な食材料の種類・純使用量などを事前に把握することができるので,予定食数に応じて発注量を算出できる.そのため発注に係わる手間が省け,業務を簡素化できる.
◯⑶ サイクルの中で繰り返し作業を行うことになるため,標準化しやすい.
×⑷ 棚卸しは,在庫管理であり,サイクルメニュー導入による利点ではない.
◯⑸ 事前にメニューの実施日がわかり,また前回の提供時の食数実績も参考にできるため,食数管理がしやすい.多店舗展開している給食会社などでは, サイクルメニューを統一して導入することで,食材料の発注量を集約することができ,コストメリットが期待できる.
正解 : (4)
19171事業所給食の汁物の食塩濃度が設計品質と一致しなかった.この適合品質の低下要因である.誤っているのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 材料洗浄時の付着水
- ⑵ 加熱機器のレイアウト
- ⑶ 調味のタイミング
- ⑷ 調理員の熟練度
- ⑸ ウォーマーテーブルでの保温時間
【解法の要点】
給食経営における品質管理と調理作業の標準化に関する問題である.各調理操作の標準化のポイントについて確認をしておこう.
【解説】
○⑴,⑶~⑸ 汁物は,主に煮る調理操作の料理である.したがって,食材の付着水量,調味と撹拌のタイミング,調理員の熟練度による調理技術やスピードの違い,蒸発による重量減少は,いずれも調味濃度に影響を及ぼすため,適合品質の低下要因になりうる.
×⑵ 加熱機器のレイアウトは,作業効率などに影響を及ぼすが,食塩濃度の設計品質との不一致とは直接関係しない.
正解 : (2)
20165給食の品質管理に関する記述である.誤っているのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 設計品質は,作業指示書で示される.
- ⑵ 適合(製造)品質は,検食で評価する.
- ⑶ 適合(製造)品質は,損益分岐点で評価する.
- ⑷ 総合品質は,利用者の満足度で評価する.
- ⑸ 総合品質の改善には,PDCA サイクルを活用する.
【解法の要点】
品質管理の評価は,設計品質と適合品質,それらを合わせた総合品質からなる.それぞれの内容と評価方法は頻出なので確認しておこう.
【解説】
○⑴ 設計品質は,調理や提供の目標となる,設計の段階で定められた品質のことであり,調理作業者へ作業内容を書き記した作業指示書によって示される.
○⑵ 適合(製造)品質は,設計品質に適合するようにつくられた食事の品質である.出来上がりの温度や重量の測定,検食などで評価する.
×⑶ 損益分岐点は,給食の会計管理を行うために行われる費用分析であり,給食の品質管理には,直接関係しない.
○⑷ 総合品質は,給食の利用者の満足度で評価される.設計品質と適合品質の両者の品質が良いと,利用者の満足度が向上する.
○⑸ PDCAサイクルを活用した改善活動の実施により,総合品質の向上を図る.
正解 : (3)
22162給食の品質管理における評価項目と品質の種類の組合せである.最も適当なのはどれか.1 つ選べ.
- ⑴ 出来上がった汁物の調味濃度・・・設計品質
- ⑵ 盛り残した量・・・設計品質
- ⑶ 提供時の温度・・・適合(製造)品質
- ⑷ 利用者の満足度・・・適合(製造)品質
- ⑸ 献立の栄養成分値・・・総合品質
【解法の要点】
設計品質と適合品質の評価指標には,それぞれどのような評価があるのか確認しておこう.
【解説】
×⑴ 出来上がった汁物が,設計品質で設定した献立の調味濃度と一致(適合)しているかの評価は「適合品質」である.
×⑵ 盛り残した量から1人分の提供量が把握できる.実際の提供量と献立や作業指示書(レシピ)で設定した提供量との適合性の評価は「適合品質」である.
〇⑶ 提供する食事の温度が設計品質で設定した提供時の温度と一致(適合)しているかの評価は「適合品質」である.
×⑷ 利用者の視点からみた総合的な満足度は,「総合品質」である.喫食者の満足度は,食事が設計品質どおりに仕上がっていることを前提とし,味や温度が適切かどうか,アンケート用紙やインタビューを用いて満足度を評価する.満足度調査は,最終的に総合品質の評価となる.「総合品質」は「設計
品質」と「適合品質」をかけ合わせた品質である.
×⑸ 献立の栄養成分値のように栄養管理計画に含まれる評価指標は,提供する食事の根拠となる「設計品質」である.
正解 : ⑶
19175給食における調理作業の人員配置のために必要な情報である.誤っているのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 調理機器の処理能力
- ⑵ 作業ごとの標準時間
- ⑶ 料理ごとの調理時間
- ⑷ 調理従事者の能力
- ⑸ 購入食材料の履歴
【解法の要点】
人員配置とは従業員一人ひとりの能力や適性をふまえて,必要な人数を適所に配置することをいう.給食の調理作業においては,①料理ごとの調理開始時刻から仕上がりの目標時刻(料理ごとの調理時間)を決め,②調理作業ごとに1人が行う標準時間または調理機器の処理能力(時間)をあてはめ,③調理従事者の能力を考慮し,必要な人数を決めたうえで行う.
【解説】
○⑴ 調理機器の処理能力は,調理作業の人員配置に大きく関わる.1回に処理する食材料の量と時間をふまえ,機器以外の工程に要する人員を配置する.
○⑵ 作業ごとの標準時間は,調理の工程に要する平均的な時間であるため人員配置に大きく関わる.
○⑶ 料理ごとの作業時間は,調理作業の人員配置に大きく関わる.調理工程数や機器使用の有無などにより要する人数を配置する.
○⑷ 調理従事者の能力などにより1回の調理作業の処理能力が異なるため,調理作業の人員配置に大きく関わる.能力を考慮して人員配置を行う.
×⑸ 購入材料の履歴は,料理などの情報がなく作業量が予測できないため,人員配置には必要ない.
正解 : (5)
19176大量調理における品質向上のための留意点に関する記述である.誤っているのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ でんぷんの多い食品の煮物では,加熱時間を少量調理より短く設定する.
- ⑵ 揚げ物では,油への食品の1回投入量を,低下した油温の回復時間が短くなるよう設定する.
- ⑶ 汁物の最初の水量は,加熱中の蒸発率が少量調理より大きいことを考慮して決定する.
- ⑷ 和え物の調味では,供食までの時間が短くなるよう食材の全体量を分割する.
- ⑸ 炒め物の野菜の洗浄開始時刻は,洗浄後の水切り時間を確保し決定する.
【解法の要点】
今回,応用力試験で出題があったように,今後も大量調理の様子を例示した選択肢が増加することが予想される.大量調理の特性は,調理法別に覚えるだけでなく,料理例も含めて学習し,問題文からでもイメージできるようにしておこう.
【解説】
〇⑴ 文章通り.加熱時間を少量調理と同じ時間行うと,余熱で過剰に加熱が進み,煮崩れしやすくなる.大量調理では,加熱源となる鍋の内側面と食品の接点が均一ではないことで食品の加熱温度の上昇にむらがあり,消火後も余熱により具の煮熟が進行するため,煮崩れが起こりやすい.したがって,少量調理より加熱時間を短く設定し,余熱を考慮した加熱工程を計画するとよい.
〇⑵ 文章通り.揚げ物では,食品の投入量が多いと油温が低下し,料理の品質を一定に保つことが難しい.そのため,大量調理では,油への食品の1回投入量を,油温の回復時間が短くなるよう設定する必要がある.
×⑶ 大量調理では汁物の加熱中の蒸発率が少なくなるため,水量は比較的少なく済む.
〇⑷ 文章通り.調味後時間が経過するにつれ食材料からの脱水によって料理の容積は減少していく.重量による均等盛付バランスが保てるように,調味後は全体量を均一に分割して手早く盛り付ける.
〇⑸ 文章通り.大量調理では洗浄で野菜に付着する水量が多くなるため,洗浄後の保管時間で付着水を脱落させてから炒め操作を行う.
正解 : (3)
20164回転釜を用いたじゃがいもの煮物の品質管理に関する記述である.誤っているのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ じゃがいもは,大きさをそろえて切る.
- ⑵ じゃがいもに対するだし汁の割合は,少量調理より高くする.
- ⑶ 調味料の使用量は,じゃがいもの重量に対する割合で計算する.
- ⑷ 加熱時間は,じゃがいもでんぷんの糊化に必要な時間を考慮する.
- ⑸ 消火のタイミングは,余熱を考慮する.
【解法の要点】
大量調理における調理の特性や品質管理のポイントは,問われやすいテーマのため,しっかり確認しておこう.
【解説】
○⑴ 出来上がりの加熱状態と味付けを均一にするために,大きさをそろえて切る.
×⑵ 回転釜は,食材重量に対して蒸発面積が小さいため,煮汁の割合は少量調理よりも少なくする.
○⑶ 大量調理にかかわらず,煮物調理の調味料は,使用する食材の重量に対する割合で計算する.
○⑷ 大量調理では,食材が多く煮崩れしやすいことや余熱が大きいこと,また食材の調理特性を考慮して加熱時間を設定する.
○⑸ 回転釜を使用した大量調理では,消火後も余熱が大きいことから,食材の加熱が進行する.そのため,消火のタイミングは余熱を考慮する必要がある.
正解 : (2)