【解法の要点】
「授乳・離乳の支援ガイド（2019年改定版）」に基づく出題である．特に，食物アレルギー児における食品の適切な摂取時期の提示や，医師の診断に基づいた授乳および離乳の支援といった，2019年の改定で新たな項目として改定された箇所が問われているため，内容をしっかり確認しておこう．
【解説】
×⑴，⑵ 子どもの食物アレルギーの予防のために，妊娠および授乳中の母親が，特定の食物を除去することに関する効果は示されておらず，さらに子どものアレルギー予防のために，母親は特定の食品を極端に避けたり，過剰に摂取したりすることは，母親の栄養状態に対して有害でもあるため不適切な助言である．
×⑶ 食物アレルギーの発症を心配して離乳の開始や特定の食物の摂取開始を遅らせても，食物アレルギーの予防効果があるという科学的根拠はないため，不適切な助言である．一般的な離乳開始時期である生後5～6か月ごろから離乳をはじめるように情報提供を行うことが望ましい．
○⑷ 選択肢のうち最も適切な助言である．卵をはじめて摂取する場合は，よく加熱した卵黄から行うこととされている．これは，卵黄は卵白よりもアレルギーを起こしにくく，また加熱によりアレルゲン活性が低下する（卵白に含まれるオボムコイドを除く）ためである．
正解 : (4)
【解法の要点】
湿疹などの皮膚症状から鶏卵による食物アレルギーを合併する乳児アトピー性皮膚炎を疑う症例である．離乳を進めるにあたり食物アレルギーが疑われる症状がみられた場合，自己判断で対応せずに，必ず医師の診断に基づいて情報提供を行う心構えが必要である．
【解説】
×⑴ 子どもに湿疹がある場合や，すでに食物アレルギーの診断がされている場合，または離乳開始後に発症した場合でも，基本的に原因食物以外の摂取を中止させる必要はない．
×⑵ 医師の診断がない状況で予防的にアレルギーの原因食品を完全除去させることは，食物アレルギーの感作を進行させるなど，状態を悪化させる可能性がある．
○⑶ 正しい．子どもの食物アレルギーが疑われる場合には，自己判断で対応することで状態が悪化する可能性も想定されるため，必ず医師の診断に基づいて母子の食物制限などを行うよう支援する．
×⑷ 特異的IgE抗体だけでは診断確定とはならず，食物除去試験で症状が改善し，食物経口負荷試験で症状が誘発されるかを確認する必要がある．
正解 : (3)
【解法の要点】
「学校給食における食物アレルギー対応指針」は，過去にも出題されているが，本問題は「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン （2019年改訂版）」に基づくはじめての出題である．本ガイドラインは，乳幼児期の特性をふまえた保育所におけるアレルギー疾患を有する子どもへの対応の基本原則として，「全職員を含めた関係者の共通理解の下で，組織的に対応する」，「医師の診断指示に基づき，保護者と連携し適切に対応する」，「地域の専門的な支援，関係機関との連携の下で対応の充実を図る」，および「食物アレルギー対応においては安全・安心の確保を優先する」などが示されている．
【解説】
○⑴ 正しい．保育所における食物アレルギー対応においては安全・安心の確保を優先するため，家庭で食べたことのない食物は，基本的に保育所では提供しないとしている．
○⑵ 正しい．保育所の食物アレルギー対応における原因食品の除去は，安全な給食提供の観点から，できるだけ単純化された対応（完全除去か解除）を行うことを基本としている．
○⑶ 正しい．アレルギー症状を誘発するリスクの高い食物が少ないまたはそうした食物を使わない共通献立メニューを取り入れるなど，食物アレルギーのリスクを考えた取り組みを工夫する必要がある．
×⑷ 食物アレルギーの有症率は乳幼児期が最も高いが，成長とともに治癒することが多いことから，除去食を開始した場合でも定期的な見直しが必要となる．
○⑸ 正しい．アレルギー対応について，献立を毎月保護者と確認したり，面談の際に家庭での様子を聞き取ったりするなど，保護者との連携を図ることが求められている．
正解 : (4)
次の文を読み「183」，「184」に答えよ．
K小児病院に勤務する管理栄養士である．先天性代謝異常等検査でフェニルケトン尿症を指摘された患児の母親に，栄養食事指導を行うことになった．
患児は，生後1か月，男児．出生体重2,700 g，身長48 cm．身体・精神に明らかな所見を認めない．
治療用ミルクについて説明した後，患児の母親から，「食事療法は一生続けることになりますか？とても心配です．」との質問があった．「一生続けることになります．私もお手伝いします．」の後に続く管理栄養士の助言である．最も適切なのはどれか．1つ選べ．
- ⑴ 続けるためにはお母さんの頑張りが何より重要ですよ．
- ⑵ 大変と思われるかもしれませんが，皆さん子どものためと頑張って続けられていますよ．
- ⑶ 病気について説明したパンフレットを差し上げましょう．後で，ご自分で読んで勉強してくださいね．
- ⑷ 同じ病気の子どもをもつ家族会をご紹介しましょう．悩みを相談できますよ．
【解法の要点】
同じ病気の子どもをもつ家族会は，セルフヘルプグループである．専門家からではなく，同じ問題や環境を体験する近い立場の仲間によるピア・サポートが得られる．各人が「当事者である」ことに重要な意味がある．
【解説】
×⑴ 食事療法を一生続けなければならないことに不安を感じている母親に頑張ることを求めることは，不安の解消にはつながらず，プレッシャーを与えるだけなので，誤り．
×⑵ 「ほかの人が頑張っているのに，あなただけできないわけない」と決めつけ，説得することは不安に思う母親をいっそう追い詰めることになるので，誤り．
×⑶ 病気についての情報提供は，コミットメントがみられた後に，母親からの求めに応じて行うことが望ましい．ましてや自分で読んで勉強するよう勧めることは，逆に突き放された気持ちにさせてしまい，不安を煽る可能性がある．母親の気持ちに寄り添い，一緒に学んでいくという援助姿勢を示したい．
〇⑷ 同じ病気の子どもをもつ家族会への参加は，母親の孤立感を取り除き，仲間同士の共感やグループダイナミクスが生まれやすいため，正しい．
正解 : ⑷
【解法の要点】
「舌でつぶせる固さ」の時期とは，生後7，8か月頃の「離乳中期」にあたる．離乳の進行に合わせた食材や調理形態・調理方法を選ぶ．
【解説】
×⑴ 「離乳中期」には，穀類の場合，全粥が適している．つぶし粥や豆腐ペーストは，なめらかにすりつぶした状態であり，生後5，6か月頃の「離乳初期」に適しているため，誤り．
×⑵ さつまいものマッシュや卵黄ペーストは，なめらかにすりつぶした状態であり，生後5，6か月頃の「離乳初期」から与えることができるため，誤り．
〇⑶ やわらかく煮たりんごやジャガイモのマッシュは，舌でつぶせる固さなので，「離乳中期」に適しているので，正解．なお，ジャガイモはマッシュポテトに適している粉質系（男爵）と煮物用に適している粘質系（メークイン）に大別される．男爵はさつまいも同様，「離乳初期」から与えられる．ただし，じゃかいもの芽や薄緑色の皮には，天然毒素（ソラニンなど）が含まれ，ゆでても取り除くことはできない．「離乳初期」には厚く皮をむいて柔らかくゆで，ペーストにして与えることが多い．りんごは食物繊維が多いので，「離乳初期」にはすりおろしが適している．
×⑷ 煮魚のほぐしやつぶしたバナナははぐきでつぶせる固さであり，生後9～11か月頃の「離乳後期」に適しているので，誤り．
正解 : ⑶