臨床栄養学
19188
次の文を読み「188」,「189」,「190」に答えよ.K診療所に勤務する管理栄養士である.居宅療養管理指導を行っている.患者は,75歳,女性.脳梗塞を発症し,左片麻痺を患いながら自宅療養している.意識ははっきりしており,嚥下障害は認めない.食事は買ってきてもらったレトルト粥,パン,牛乳などを自分で選んで食べているが,摂取エネルギー量が500kcal/日と少ない.身長146cm,体重35kg,空腹時血液検査値は,ヘマトクリット33%,赤血球380万/μL,アルブミン2.6g/dL,血糖96mg/dL,トリグリセリド80mg/dL,尿素窒素11mg/dL,クレアチニン0.6mg/dL.
19188
今後の栄養管理である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ このままの食事を継続し,モニタリングを続ける.
- ⑵ 主食をめしに変更して,1日の摂取エネルギー量を1,500kcalとする.
- ⑶ 食事以外の水分摂取として,現状より500mL増やす.
- ⑷ 間食として栄養補助食品(200kcal,たんぱく質7g)を追加する.
【解法の要点】
居宅療養管理指導における栄養アセスメント,栄養ケア計画の立案が問われている.問題文より,患者の栄養状態や可能な栄養法を考えよう.
【解説】
×⑴ 現状,低栄養状態であることが考えられ,栄養状態の改善が必要である.したがって,選択肢は不適切である.
×⑵ 嚥下障害は認めていないため,主食をめし(1杯150gで約250kcal)に変更することは可能であるが,それだけで1日の摂取エネルギー量を1,500kcalにするには無理がある.したがって,選択肢は最も適切とは言えない.
×⑶ 摂取エネルギー量は少ないが,粥や牛乳を摂取しており,水分はある程度摂取できていると考えられる.また,アルブミン,ヘマトクリット,尿素窒素,クレアチニンからは,脱水のリスクは考えにくい.したがって,選択肢は最も適切とは言えない.
〇⑷ 摂取エネルギー量が圧倒的に少なく,たんぱく質源となる食品の摂取が不足している.体重,アルブミン値からも,低栄養状態であると判断できるため,エネルギーとたんぱく質の摂取が第一優先だと考えられる.したがって,選択肢は今後の栄養管理として最も適切である.
正解 : (4)
191891週間後に再訪問したところ,体重が2kg増加していた.考えられる理由として,最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 浮腫の増悪
- ⑵ 便秘
- ⑶ 脱水の改善
- ⑷ 体脂肪量の増加
【解法の要点】
体重の変化は,エネルギー摂取量,活動量すなわちエネルギー消費量に影響を受ける.摂取栄養量や活動量に変化がみられない場合は,栄養状態悪化や心疾患,腎疾患による浮腫や脱水を考える必要がある.本患者においては,食事内容からたんぱく質摂取不足が考えられる.
【解説】
〇⑴ アルブミン値が2.5g/dL以下となると浮腫が出現する.初回アセスメント時にアルブミン値が2.6g/dLであったため,低栄養状態が改善されていない場合,体重増加の理由として,浮腫の増悪が最も適切である.
×⑵ 問題文からは,便秘の症状を示す項目はみあたらない.
×⑶ 粥や牛乳を摂取していることから,水分はある程度摂取できていると考えられる.また,アルブミン,ヘマトクリット,尿素窒素,クレアチニンの検査値からは,脱水状態は考えにくい.
×⑷ 1週間で2kgの体重増加が,仮に体脂肪のみの増加だとすると,体重1kgは約800gの脂肪を含んでいるため,1日当たりのエネルギー摂取量は2kg×800g×9kcal/7日=2,057kcalとなる.初回アセスメント時に摂取エネルギー量が500kcal/日であった患者が,毎日2,000kcal以上を追加した食事を摂取したとは考えられない.したがって,体重増加の理由として,体脂肪量の増加は考えにくい.
正解 : (1)
19190再訪問後の栄養管理である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ たんぱく質摂取量を増やす.
- ⑵ 食物繊維摂取量を増やす.
- ⑶ 増加させた水分摂取量500mLを継続する.
- ⑷ 脂肪摂取量を減らす.
【解法の要点】
再訪問後の栄養アセスメントと関連づけて栄養管理を考えよう.前問より,患者は低アルブミン血症により,浮腫が増悪し,体重が増加したと考えられる.
【解説】
〇⑴ 低アルブミン血症による浮腫の増悪を改善するためには,たんぱく質の摂取が最も重要である.
×⑵ 食物繊維摂取量の摂取不足も考えられ,その摂取量を増やすことは重要である.しかし,下痢や便秘についての評価は示されておらず,また血糖値や血清脂質の値も基準範囲内であることから,再訪問後の栄養管理として最も適切とは言えない.
×⑶ 脳梗塞の再発予防には,脱水予防のために適度な水分の摂取が重要である. しかし,脱水を示すアセスメント項目はみられず,水分の増量の継続は,再訪問後の栄養管理として最も適切とは言えない.
×⑷ 体重や食事内容,血清脂質の状態から,脂肪摂取量を減らす理由はみあたらない.したがって,再訪問後の栄養管理として不適切である.
正解 : (1)
19191次の文を読み「191」,「192」に答えよ.地域密着型介護老人福祉施設K荘に勤務する管理栄養士である.食事介助を担当している介護スタッフからの質問に対応している.入所者は,76歳,男性.1年前より入所しており,CKD(慢性腎臓病)に対するケアを行ってきた.しかし,病態が悪化して,人工血液透析に移行した.身長169cm,体重58kg,アルブミン値3.6g/dL,尿量ほとんど無し.
19191
施設ではこれまで,透析中の入所者に対応したことがなかったため,介護スタッフから透析移行後の食事の留意点を質問された.その回答として,最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 魚類と肉類の摂取量を少なくする.
- ⑵ 生野菜の摂取量を多くする.
- ⑶ 水分摂取を控える.
- ⑷ 間食を止める.
【解法の要点】
透析療法を含むCKD(慢性腎臓病)の食事に関する出題は,国試でも頻出である.透析移行前後での食事について,「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」で確認しておこう.
【解説】
×⑴ CKD患者において,透析移行後は,移行前に比べたんぱく質制限が緩和される.そのため,たんぱく質源である魚類や肉類の過剰摂取は控えるべきであるが,透析導入前よりも摂取量を少なくする必要はない.したがって,透析移行後の留意点として最も適切とは言えない.
×⑵ CKD患者において,血液透析の移行前後どちらの場合もカリウム摂取が制限される.生野菜にはカリウムが多く含まれるため,摂取量は控えるべきである.したがって,血液透析移行後の留意点として不適切である.
〇⑶ 血液透析では,透析前後の体液量変化により低血圧などをきたすことから,水分摂取は控える必要がある.特に,本問の患者は尿がほとんどない状態であることから,透析前後の体液量変化が大きくなりやすいため,水分摂取を控える旨を注意することは優先度が高いと言える.
×⑷ CKD患者において,血液透析の移行により一度に栄養が摂れない場合,エネルギー不足を防ぐために間食で補充する必要がある.
正解 : (3)
19192数日後,施設レクリエーションでバス旅行が決まった.その日の昼食はレストランで天ぷら定食を食べることが決まっており,介護スタッフより配慮すべき点を質問された.その回答として,最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ ごはんを半分量にする.
- ⑵ 魚介類の天ぷらを全量残す.
- ⑶ 野菜料理を追加する.
- ⑷ 汁物と漬物を控える.
【解法の要点】
血液透析における食事療法では,適切なエネルギー量の確保と食塩,カリウム, リン,水分の制限が必要である.また,血液透析移行前よりは制限は緩和されるが,たんぱく質についても適正量の範囲内での摂取とする.こういった制限がある中で,どのような食材,料理を選べばよいかといった知識が問われている.
【解説】
×⑴ ごはんは,たんぱく質や食塩,カリウムを多く含まず,またエネルギー量を確保するのに有用な食品である.したがって,ごはんを半分量にすると,エネルギー不足となりうるため,適切でない.
×⑵ 魚介類の天ぷらは,脂質を十分含み,エネルギー量を確保するのに有用である.他にたんぱく質源となる食品がなければ,全量残すことで,エネルギーとたんぱく質ともに不足する可能性があるため適切でない.
×⑶ 野菜は,血液透析において制限すべきカリウムを多く含む.調理法によりカリウム量は減少する場合もあるが,野菜料理を追加することでカリウムを余分に摂取することになるうえにエネルギー量確保の面でも効果的ではないため,最も適切とは言えない.
〇⑷ 汁物には水分と食塩が,漬物には食塩が多く含まれるため,控えるべきである.また,これらを控えることで不足するエネルギーや栄養素は少ないため,最も適切である.
正解 : (4)
20171次の文を読み「171」,「172」,「173」に答えよ.K産科クリニックに勤務する管理栄養士である.医師の指示のもと,妊婦の栄養カウンセリングを行うことになった.妊婦Aさんは,36歳,事務職(身体活動レベル1.50).妊娠8週目,経産婦,妊娠高血圧症候群の既往はあるが,現在は高血圧ではない.身長155cm,標準体重53kg,現体重63kg(妊娠前60kg),BMI 26.2kg/m²(妊娠前25.0kg/m²),血圧120/72 mmHg.
20171
エネルギー指示量として,最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 1,400kcal/日
- ⑵ 1,800kcal/日
- ⑶ 2,200kcal/日
- ⑷ 2,600kcal/日
【解法の要点】
妊娠期から産褥期の経過における栄養アセスメント,モニタリングの能力,さらに合併する疾患,ここでは妊娠高血圧症候群への対応を問う問題である.「171」は,妊婦のエネルギー必要量に関する基本的な問題である.
【解説】
×⑴,⑶,⑷ 選択肢⑵の解説を参照.
○⑵ 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」における妊婦の推定エネルギー必要量は,妊娠前の推定エネルギー必要量に妊婦のエネルギー付加量を加えたものである.患者は,年齢36歳,身体活動レベルⅠ,妊娠初期より,1,750kcal+50kcalが適切である.1,400kcal/日は標準体重1 kgあたり26.4kcalで少なすぎる.
正解 : (2)
20172妊娠20週になって,現体重66kg,BMI 27.5kg/m²,血圧145/90mmHg,ヘモグロビン12.0g/dL,クレアチニン0.8mg/dL,尿素窒素18mg/dL,尿蛋白(-)となり,栄養食事指導の依頼があった.降圧薬が処方されている.たんぱく質と食塩の指示量として,最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ たんぱく質55g/日,食塩7g/日
- ⑵ たんぱく質55g/日,食塩3g/日
- ⑶ たんぱく質85g/日,食塩7g/日
- ⑷ たんぱく質85g/日,食塩3g/日
【解法の要点】
妊娠中期のモニタリングと,妊娠高血圧症候群の栄養食事療法を問う問題である.妊娠高血圧症候群は,肥満傾向の妊婦に発症しやすいため,体重のモニタリングが重要である.血圧,たんぱく尿により病型が評価される.
【解説】
○⑴ 妊娠高血圧症候群におけるたんぱく質摂取量は理想体重×1.0 g/日であるので53 g,食塩摂取は7 ~ 8 g/ 日程度であり,⑴が適切と考えらえる.なお,理想体重は,標準体重を用いる.
×⑵~⑷ 選択肢⑴の解説を参照.
正解 : ⑴
20173妊娠39週で出産.出産直前の体重は70kg.産後8週目,現体重66kg,BMI27.5kg/m²,血圧124/82mmHg.再度,栄養食事指導を行うことになり,1日の食事内容を聞き取った(表).ふだんも同じような食事をしているという.この結果を踏まえた行動目標である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
20173-1
- ⑴ 野菜の摂取量を増やす.
- ⑵ 果物を摂るようにする.
- ⑶ 糖質の多い食べ物を減らす.
- ⑷ 油脂の多い食べ物の品数を減らす.
【解法の要点】
妊娠期から分娩,産褥期への体重の変化の理解と,体重と食事記録からの問題点を抽出する力が問われている.
【解説】
×⑴~⑶ 選択肢⑷の解説を参照.
○⑷ 野菜の摂取量を増やすことや糖質の多い食べ物を減らすことも重要であるが,第一優先はエネルギー摂取量の増加に最も影響する油脂の多い食べ物を減らすことである.
正解 : ⑷
20174次の文を読み「174」,「175」,「176」に答えよ.
K総合病院に勤務する管理栄養士である.消化器内科病棟を担当して,入院患者の栄養管理を行っている.患者は,55歳,男性,単身赴任.慢性膵炎で通院していたが,食生活は改善されないままであった.このたび,激しい上腹部痛と背部痛のために緊急入院となった.意識障害および汎発性腹膜炎が認められ,精査の結果,慢性膵炎の急性増悪と診断された.胆石は認められなかった.身長171cm,体重63kg,血圧128/79 mmHg,空腹時血液検査値は,白血球15,000/μL,HbA1c 5.8%,血清アミラーゼ1,200IU/L(基準値32~104IU/L),CRP18.2mg/dL.これまでの食生活は,朝食欠食,昼はラーメンとチャーハン,夕食はほぼ毎日外食.飲酒は,毎日3合,30年間続けている.
20174
入院当日の栄養投与法である.最も適切なのはどれか. 1つ選べ.
- ⑴ 流動食による経口栄養法を行う.
- ⑵ 経鼻胃管による経腸栄養法を行う.
- ⑶ 胃瘻を造設して,経腸栄養法を行う.
- ⑷ 絶食として,静脈栄養法を行う.
【解法の要点】
入院当日の栄養投与法がポイントとなる.慢性膵炎の急性増悪の食事療法は,急性膵炎の食事療法に準じている.慢性膵炎,急性膵炎のガイドラインにおける治療,栄養療法の知識をしっかりと確認しておこう.
【解説】
×⑴,⑵,⑶ 選択肢⑷の解説を参照.
○⑷ 文章通り.急性膵炎の治療では,原則として絶飲食とし,静脈栄養を行う.末梢静脈からの輸液は初期治療の中心である.入院当日の栄養投与法について問われているので,膵臓の安静を第一にした静脈栄養を選択する.ただし,その後重症判定が行われた場合,重症例においては,膵臓を刺激しないことを重視し,Treitz靭帯を超えて空腸からの経腸栄養による栄養補給が推奨される.これは,感染予防となり,生命予後の改善に寄与すると考えられている.
正解 : (4)
20175数週間後,上腹部痛と背部痛は無くなり,退院に向けて栄養食事指導を行っている.退院後の食生活で,遵守すべき重要事項として伝える内容である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 禁酒する.
- ⑵ 1日3回規則正しく食事する.
- ⑶ 昼食のラーメンとチャーハンをやめる.
- ⑷ 外食では,野菜を多く食べる.
【解法の要点】
急性膵炎とは膵臓の急性炎症で,ほかの臓器にまで影響を及ぼし得るものである.急性膵炎の最も多い症状は,上腹部痛で,背部まで痛みが広がることもある.急性膵炎の二大原因と食事療法の知識から考える.
【解説】
○⑴ 急性膵炎の二大原因は,アルコールと胆石である.この患者のこれまでの食生活,飲酒などについての記載より,禁酒することが第一選択となる.
×⑵ 規則正しく食べるのは食事療法として正しいが,退院後遵守すべき重要事項としたら,禁酒である.規則正しい食生活はその後の改善要項であるので,誤りとなる.
×⑶ 膵炎の食事療法では脂質含有量の多い食事を避けるように指導する.本選択肢のようにラーメンとチャーハンを両方食べると明らかに脂質をとりすぎてしまうことから,指導内容としては誤りではないものの,禁酒と比べると優先順位は低くなることため,最も適切な解答とはいえない.なお,膵炎では,少量の飲酒でも再発率が上昇することが知られており,予後改善のために禁酒の指導が優先される.
×⑷ 外食で野菜を多く食べること自体は適切であろうが,野菜がたっぷりはいっているメニューを口実にラーメンなどを選択されてしまうと,脂質は多くなり適切でなくなる.膵炎の食事療法として,退院後遵守すべきものとして⑴から⑷で選ぶなら,⑴以外はない.
正解 : (1)
20176退院2か月後の外来受診時,時々腹部痛や脂肪便を認めるとの訴えがあり,医師より栄養食事指導の依頼があった.この患者が,近所のスーパーマーケットで販売されている惣菜を買って食事を準備する場合,主菜として勧める料理である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 和風オムレツ(鶏卵80g)
- ⑵ すずき(80g)の塩焼き
- ⑶ いわし(80g)の梅干し煮
- ⑷ アボカド(30g)入りささ身(80g)のサラダ
【解法の要点】
時々腹部痛や脂肪便を認めるという訴えから,制限すべき栄養素をまず判断し,そのうえで主菜として勧めるときのポイントを考える.各メニューの栄養素の計算が概算でできること,調理法による油の含まれ方の違いが問われる.
【解説】
×⑴ 鶏卵80gには脂質が生でも8g含まれる.さらにオムレツを調理する際も油を使い,焼き上げることから,制限するべき脂質を多く含んでいる料理であることがわかる.
○⑵ 正しい.すずき80gには脂質が約3g前後含まれるが,選択肢の中では最も少ない.塩焼きは油を少量使用することもあるが,基本的には油をほとんど使用しないため,適切だといえる.
×⑶ いわし80gには脂質約7 g含まれており,すずきよりも多い.煮物は油をほとんど使用しない調理法であるが,梅干しは酸味,塩味とも強く量にもよるが刺激物となることを理解しよう.
×⑷ 鶏ささみは80gで脂質量が約0.9gと少ないが,アボカド30 gに含まれる脂質(約6g)やサラダにかけるドレッシング中の脂質量も考えると,料理全体の脂質量は多くなる.
正解 : (2)
2018020180-20182
次の文を読み「180」,「181」,「182」に答えよ.K総合病院に勤務する管理栄養士である.外来患者の栄養食事指導を行っている.患者は,70歳,男性.歩行時の呼吸困難感を主訴に来院した.精査の結果,中等度に進行したCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と診断された.食欲が低下し,この半年間で5kgやせた.20歳から現在まで,40本/日の喫煙歴がある.身長160cm,標準体重56.3kg,体重44kg.空腹時血液検査値は,アルブミン3.7g/dL,尿素窒素16mg/dL,クレアチニン0.5mg/dL.基礎代謝量1,050kcal/日,間接熱量計を用いて測定した安静時エネルギー消費量1,400kcal/日.
20180
患者の栄養アセスメントとして,最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 上腕三頭筋皮下脂肪厚が高値である.
- ⑵ 除脂肪体重が増加している.
- ⑶ クワシオルコル型栄養障害である.
- ⑷ マラスムス型栄養障害である.
- ⑸ エネルギー代謝は亢進していない.
【解法の要点】
COPD患者は気道閉塞による呼吸困難から,呼吸筋を動かすエネルギー消費が増加している.一方,肺過膨張により胃が圧迫され,食欲不振となっているので,不足するエネルギーは体脂肪の分解と体たんぱく質からの糖新生で得ているため,体脂肪量は減少している.また,栄養療法の中で栄養補給を選択した場合には,より患者の状態を改善できる栄養剤を理解しておこう.
【解説】
×⑴ COPDでは,体脂肪率の指標となる上腕三頭筋皮下脂肪厚は減少する.
×⑵ COPDでは,糖新生が亢進しているため,除脂肪体重も減少する.
×⑶ 食欲不振により,全般的な栄養不良に陥っている.クワシオルコル型栄養障害はたんぱく質のみの不足が顕著にみられることから,この患者のアセスメント結果としては不適切である.日本人COPD患者の栄養障害の頻度は高い.
○⑷ エネルギー源の摂取も不足しているため,マラスムス型栄養障害である.マラスムス型栄養障害でも血漿中のたんぱく質濃度の低下がみられるが,クワシオルコルよりも程度は低い.
×⑸ COPDでは呼気を排出しにくく呼吸が浅く早いので,呼吸に必要なエネルギー代謝が亢進している.
正解 : (4)
201811日当たりのエネルギー指示量である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 1,000kcal/日
- ⑵ 1,400kcal/日
- ⑶ 2,100kcal/日
- ⑷ 3,000kcal/日
【解法の要点】
【解説】
×⑴,⑵,⑷ 選択肢⑶の解説を参照.
○⑶ 総エネルギー摂取量の目標量は,実測安静時エネルギー消費量の1.5倍である.しかし,患者の状態によって実測できないときには,予想安静時エネルギー消費量の1.7倍とする.
問題文に安静時エネルギー消費量を測定し,1,400kcal/日とあるので,1,400×1.5=2,100kcal/日である.
正解 : (3)
20182食事摂取不良が続き,1か月後にやせが進行していたため,経腸栄養剤を補充することにした.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 標準タイプの半消化態栄養剤
- ⑵ 低脂質の半消化態栄養剤
- ⑶ 高脂質の半消化態栄養剤
- ⑷ 低たんぱく質の半消化態栄養剤
【解法の要点】
【解説】
×⑴,⑵,⑷ 選択肢⑶の解説を参照.
○⑶ COPDは,呼気を出しにくいため呼吸筋を活発に動かすので,高エネルギー源となる高脂質,高たんぱく質の半消化態栄養剤を補充する.また,COPDでは,息が吐きづらく,二酸化炭素を排泄しにくいため,呼吸商が低い脂肪からエネルギーを得ることも重要である
正解 : (3)
21171次の文を読み「171」,「172」,「173」に答えよ.
K 総合病院に勤務する管理栄養士である.患者は,18 歳,男性,大学生.身長172 cm,体重63 kg,BMI 21.3 kg/m².1 か月前から腹痛,下痢があり,近医では胃腸炎の疑いとして投薬されていたが,症状は軽快しなかった.1週間前あたりから,腹痛が増強,38 ℃程度の発熱があり,朝から数回の嘔吐,少量の下血もあったため,当院の救急外来を受診し,イレウス状態であり入院した.
21171
入院当日の栄養投与法である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 経口からの流動食
- ⑵ 経鼻チューブからの経腸栄養剤
- ⑶ 末梢静脈からの維持輸液
- ⑷ 中心静脈からの高カロリー輸液
【解法の要点】
イレウス(腸閉塞)は,物理的な腸管の狭窄や閉塞など,さまざまな原因で発症する疾患である.栄養管理では消化管の使用が可能か否かの選択で開始される栄養投与ルートをしっかり理解しておく.
【解説】
×⑴ 炎症による発熱,嘔吐,下血の症状より急性期と判断される.腸管閉塞部位から上位の消化管の膨張が起こるので,胃内減圧を図るために絶食が基本である.したがって,急性期での経口摂取は適切ではない.
×⑵ 消化管の通過障害・血流障害があるため,消化管を使用した経腸栄養剤の使用は適切ではない.
〇⑶ イレウスにより消化管が安全に使用できるとは言えないため,栄養投与ルートでは静脈栄養を選択する.本事例は,入院当日であることから,絶食による水分摂取減少の対応として,末梢静脈からの維持輸液投与は適切である.
×⑷ 腸管が機能していない時の栄養ルートとしては静脈栄養を選択するが,中心静脈からの高カロリー輸液は10日以上の長期間,絶食になることが予想されるときに選択されることが多い.本事例では,現時点で中心静脈を選択するのは最も適切とは言えない.
正解 : (3)
21172精査の結果,クローン病と診断され,数週間の内科的治療が奏効して,寛解状態になった.1日600 kcalの食事と成分栄養剤を併用した栄養療法を開始することになった.エネルギー600 kcal,たんぱく質30 g,脂質10 gの食事を構成するための,たんぱく質源となる食品の目安である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 白身魚50 g,鶏肉(皮なし)30 g,鶏卵30 g,豆腐50 g
- ⑵ 青魚50 g,鶏肉(皮なし)30 g,鶏卵30 g,豆腐50 g
- ⑶ 白身魚50 g,鶏卵60 g,豆腐50 g,普通牛乳100 g
- ⑷ 鶏肉(皮なし)50 g,鶏卵60 g,豆腐100 g
【解法の要点】
クローン病寛解期の食事において,バランスの良い食事を基本としてたんぱく質源は魚・肉・卵・豆腐製品を少量ずつ取り入れるようにする.栄養療法開始時期には,再燃を防止するために,脂肪量を減らすこと,特に飽和脂肪酸の摂取を低減する必要がある.食事療法は頻出問題であるが,本問題は主要なたんぱく質源の栄養組成をおさえておく必要があり,難解である.
【解説】
〇⑴ 脂肪の少ない鶏肉や良質なたんぱく質を含む魚からもたんぱく質を取り入れている最も適切な構成といえる.なお,魚は青魚よりも白身魚の脂質量が少ないので栄養療法開始時期としては適している.
×⑵ 青魚は,抗炎症作用のあるn-3系不飽和脂肪酸が多く含まれているので,寛解期クローン病の維持療法としても摂取が推奨されている.ただし,青魚は白身魚に比べて脂質量が多いため,最も適切な構成とは言えない.
×⑶ 乳糖を分解するラクターゼが減少するので,牛乳は控えた方がよい.また,卵は良質なたんぱく質源だが,量が多いと飽和脂肪酸が増えるので注意が必要である.
×⑷ クローン病の食事では,魚を中心とした複数のたんぱく源を少量ずつ補給することが望ましい.卵は良質なたんぱく源だが,量が多いと飽和脂肪酸が増えるので注意が必要である.
正解 : (1)
21173その後,成分栄養剤は利用しつつ,退院後に向けて栄養食事指導を行った.患者の母親から,弁当として望ましいおかずを教えてほしいとの希望があった.具体的な組み合わせ例である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ あじ竜田揚げ,高野豆腐煮物,コーンサラダ
- ⑵ 卵焼き,筑前煮,きんぴらごぼう
- ⑶ 蒸し鶏,鮭塩焼き,白菜おかか和え
- ⑷ ハンバーグ,しゅうまい,ポテトサラダ
【解法の要点】
クローン病の食事では,低脂肪・高たんぱく・低残渣が基本である.寛解期には食事制限は緩和されるが,低脂肪食と低残渣を継続する.基本的な食事内容と段階的な栄養管理について理解しておこう.
【解説】
×⑴ 脂質の多い揚げ物や食物繊維が豊富で残渣となりやすいコーンは退院後も控えた方がよい.
×⑵ 消化不良性下痢や滲出性下痢の原因となる残渣の多い食事は避ける.筑前煮やきんぴらごぼうに含まれる根菜類は不溶性食物繊維が豊富で残渣が多くなるので適当ではない.
〇⑶ たんぱく源として肉・魚・豆腐を少量ずつ使用し,設問の調理方法は,油を使用しない調理方法であるため,クローン病の栄養療法の基本として適切である.
×⑷ ハンバーグとしゅうまいはいずれも脂質が多く,ポテトサラダもマヨネーズを使用するため,控えた方がよい.
正解 : (3)
21174次の文を読み「174」,「175」,「176」に答えよ.
K 病院に勤務する管理栄養士である.緊急入院した患者の栄養管理計画を作成している.
患者は,65歳,男性.独居,60歳で定年後無職である.普段は1日に市販弁当1個程度しか摂っておらず,1週間前からは体調不良もあり,食事はほとんど摂れていなかった.ベッドに横になっているところを,訪問した民生委員に発見された.半年前の体重は58 kg であった.
身長172 cm,体重50 kg,BMI 16.9 kg/m²,血圧96/58 mmHg,心拍数94回/分.空腹時血液検査値は,赤血球数380×104/μL,ヘモグロビン9.2 g/dL,ヘマトクリット38 %,アルブミン3.3 g/dL,血糖81 mg/dL,総コレステロール90 mg/dL,トリグリセリド45 mg/dL,尿素窒素24 mg/dL,クレアチニン0.45 mg/dL.明らかな浮腫,腹水,神経学的な異常は認められなかった.
21174
この患者の栄養アセスメントの結果である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 必要なエネルギー量は,確保できている.
- ⑵ たんぱく質摂取量は,不足している.
- ⑶ 腎機能は,低下している.
- ⑷ 脱水は,認められない.
【解法の要点】
普段の食事摂取量,ここ1週間の食事量,身体計測値,体重減少率などのほかに,栄養と関連のある生化学検査値から低栄養が認められるかどうかを適切にアセスメントしよう.
【解説】
×⑴ この患者は,1週間前からほとんど食事がとれていないことから低栄養状態が疑われる.実際,BMIはBMI 16.9 kg/m²(低体重)であり,半年前から8㎏の体重減少が認められ,体重減少率は半年で13.8 %と高度栄養障害である.したがって,必要なエネルギー量が確保できていないことが分かる.
〇⑵ アルブミン3.3 g/dLと低値であり,明らかに低栄養かつたんぱく質摂取量が不足していることが分かる.また,たんぱく質合成に関係のあるヘモグロビン,血糖,コレステロールの低値からも,たんぱく質の不足が推測できる.
×⑶ 尿素窒素が24 mg/dLと,わずかながら高値であり,腎機能の低下と脱水を反映していると考えられるが,病的なものではない.また,クレアチニン0.45 mg/dLと低値であり,腎機能低下を示していない.したがって,本問の患者の栄養アセスメントとして,腎機能の低下は最も適切とは言えない.
×⑷ 尿素窒素24 mg/dLと高値であるため,脱水や消化管出血,発熱が考えられる.
正解 : (2)
21175入院時,患者は意識レベルが低く,静脈栄養によって栄養補給を行うことになった.投与開始時のエネルギー量である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 2,000 kcal/日
- ⑵ 1,500 kcal/日
- ⑶ 1,000 kcal/日
- ⑷ 500 kcal/日
【解法の要点】
飢餓状態の患者に栄養補給を行う場合はリフィーディングシンドロームに留意する必要がある.急速に多量のエネルギーを投与しないことがポイントである.
【解説】
×⑴,⑵,⑶ 選択肢⑷の解説を参照.
○⑷ 飢餓状態の患者に対して栄養投与する際には,リフィーディングシンドロームを合併しないように留意が必要である.そのため,できるだけ少量のエネルギー投与からはじめて徐々に増やしていく.飢餓状態の患者に対するエネルギー投与は10 kcal/㎏体重/日から開始し,血清カリウム,リン,マグネシウム値および血糖値を厳重にモニターしながら増減することが推奨されている.患者の体重は50㎏であることから10 kcal×50㎏= 500 kcalである.
正解 : (4)
211761か月後,体重は53 kg,ヘモグロビン10.2 g/dL,アルブミン3.5 g/dL まで回復し,1日3食摂る意思が確認できたので,退院することになった.退院後の食事に関して,患者と相談して決めた目標である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 卵,大豆製品,魚,肉のおかずを食べる.
- ⑵ 野菜,きのこ,海藻,いものおかずを食べる.
- ⑶ 果物を食べる.
- ⑷ 水やお茶などの水分を控える.
【解法の要点】
体重は1か月で3㎏増加し,ヘモグロビンは9.2 g/dL から10.2 g/dL へアルブミンは3.3 g/dL から3.5 g/dLへと回復している.入院時の栄養アセスメントと現段階での栄養アセスメントを考慮し,退院後の目標を決める必要がある.
【解説】
〇⑴ 問題174にもあるように,本患者は入院時に低栄養かつたんぱく質摂取量が不足しているとアセスメントされた.また,現段階でヘモグロビン10.2 g/dL,アルブミン3.5 g/dLまで回復したが,まだ低値であるため,退院後はたんぱく質摂取を目標とすべきである.したがって,たんぱく質源となる,卵,大豆製品,魚,肉のおかずを食べることを目標とすることが,最も適切だといえる.
×⑵,⑶ 選択肢⑴のたんぱく質より優先度は低く,適切ではない.
×⑷ 水分制限はこの時点では検討の必要がないため除外される.
正解 : (1)
21177次の文を読み「177」,「178」,「179」に答えよ.K介護老人保健施設に勤務する管理栄養士である.多職種で栄養管理を行い,栄養マネジメント加算を算定している.入所者は,85歳,男性.徐々に嚥下障害が進行し,誤嚥性肺炎も認められるようになり,3か月前から胃瘻で栄養管理が行われていた.「口から食べられるようになりたい」と本人の意向があり,医師の指示で言語聴覚士による嚥下訓練(間接訓練)が開始された.身長165 cm,体重48 kg,BMI 17.6 kg/m²,血圧90/48 mmHg.空腹時血液検査値は,ヘモグロビン11.8 g/dL,アルブミン3.7 g/dL.
21177
多職種でミーティングを行っている.嚥下訓練(間接訓練)によって,嚥下機能が改善してきたため,食物を使って直接訓練を開始することにした.最初に用いるものである.最も適切なのはどれか.1 つ選べ.
- ⑴ おもゆ
- ⑵ 牛乳
- ⑶ ゼラチンゼリー
- ⑷ かぼちゃペースト
【解法の要点】
直接訓練に用いる食品は,対象者の嚥下障害に合った食形態および安全性を考え選択する.「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」の嚥下訓練調整食品0jまたは嚥下訓練調整食品0tの食品は,重度の症例に対する評価・訓練用に用いられる.残留した場合も吸引が容易なことや,誤嚥した場合にたんぱく質含有量が少ないことなどが特色である.食品の特性を考えながら解答を考えよう.
※ この問題は出題当初の情報を元に解説が書かれています.最新の情報を「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」で確認しておきましょう.
【解説】
×⑴ おもゆは,薄いとろみがあるが,液体であり誤嚥しやすい.原則的に嚥下訓練食としては,中間のとろみか,濃いとろみの食品が適している.
×⑵ 液体は,むせやすい.また,誤嚥した際のリスクを考え,たんぱく質含有量が低い食品が望ましいため,牛乳は不適である.
〇⑶ はじめて経口摂取を行う場合の食品は,「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」のコード0j か,コード0t のものを用意しておくことが望ましい.均質で,付着性,凝集性,かたさに配慮したゼリーやとろみ水が適している.選択肢の中では,ゼラチンゼリーが該当する.
×⑷ ピューレ,ペースト,ミキサー食などは,学会分類2013では,嚥下調整食2に該当するため,直接訓練の開始時には適していない.
正解 : ⑶
21178嚥下機能に合わせて,訓練用の食事形態の段階を上げてきた.3か月経った頃,少しむせるようになったので,言語聴覚士より,パン粥ぐらいの段階に戻してほしいと依頼があった.この依頼に合った料理である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ バナナペースト
- ⑵ 炒り卵
- ⑶ ふろふき大根
- ⑷ 茶碗蒸し(具無し)
【解法の要点】
診療報酬,介護報酬において栄養情報提供書や栄養ケア・マネジメントに関する書類に,嚥下調整食の必要性の有無や嚥下調整食学会分類のコードの表記が必要である.「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」はしっかり理解しよう.各コードの食形態と具体的な料理を考えよう.
※ この問題は出題当初の情報を元に解説が書かれています.最新の情報を「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」で確認しておきましょう.
【解説】
〇⑴ パン粥は,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013では,やや不均質(粒がある)でもやわらかく,離水もなく付着性も低い粥類として,コード2-2に該当すると考えられる.バナナペーストは,同様の物性,形状と考えられる.
×⑵ 炒り卵は,かたすぎず,貼りつきにくく,箸やスプーンで切ることができるやわらかさをもつ.ただし,ばらけやすく,上下の歯槽堤間の押しつぶし能力以上の咀嚼力が必要と考えられコード4に該当する.
×⑶ ふろふき大根は,箸やスプーンで切ることができるが,舌と口蓋間で押しつぶすことは困難と考えられる.コード4に該当する.だしを多く含み,口腔内でつぶした際に水分が流出する場合は,嚥下に注意が必要である.
×⑷ 具無しの茶碗蒸しは,均質で,付着性,凝集性,かたさ,離水に配慮したゼリー・プリン・ムース状としてコード1j に該当すると考えられる.
正解 : ⑴
21179この入所者に行った栄養管理の計画と実施に対して,算定できる介護報酬である.最も適当なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 療養食加算
- ⑵ 経口移行加算
- ⑶ 経口維持加算
- ⑷ 栄養改善加算
- ⑸ 栄養スクリーニング加算
【解法の要点】
介護報酬において,対象者の自立支援,重症化防止のため,リハビリテーション・機能訓練,口腔,栄養に関する取り組みの連携や強化が推進されている.介護サービスの分類と各介護報酬を整理しよう.また,介護保険施設の特徴も合わせて学習しよう.
【解説】
×⑴ BMI は低いが,療養食が必要な所見,病態は本文からは見当たらない.
〇⑵ 経口移行加算は,現在,経管での食事を摂っている介護保険施設入所者を対象に,再度経口から食事が摂取できるように,医師をはじめ,歯科医師,管理栄養士,看護師,介護支援専門員などの専門職が協働して入所者ごとに計画を作成し,実施した際に算定できる.
×⑶ 経口維持加算は,現在,経口により食事を摂取する者で,摂食機能障害を有し,誤嚥が認められた入所者が対象である.食事の観察や会議などを行い,経口による継続的な食事の摂取をすすめる.本問では,当初胃瘻による栄養管理が実施されていたため,該当しない.
×⑷ 栄養改善加算は通所サービスであり,本問の対象者は介護老人保健施設の入所者であるので,該当しない.
×⑸ 栄養スクリーニング加算は,施設サービス,居宅サービス,地域密着型サービスで算定可能である.管理栄養士以外の介護職員等が,利用者に利用開始時と6か月ごとに栄養スクリーニングを行い,介護支援専門員に栄養状態に関わる情報を文章で共有した場合に算定できる.栄養スクリーニング加算は,低栄養状態の評価のみが主となる加算であり,栄養改善の計画,プログラム立案や実施・再評価を含んでいないため,該当しない.
正解 : ⑵
21180次の文を読み「180」,「181」,「182」に答えよ.K クリニックに勤務する管理栄養士である.患者は,70歳,女性.重度の関節痛と体力低下によって数年前から通院できなくなり,医師が往診している.この度,腎機能低下が認められたため,医師からエネルギー1,400 kcal/日,たんぱく質40 g/日,食塩6 g/日未満の食事について,在宅患者訪問栄養食事指導の指示があった.屋内での生活はかろうじて自力で行えるが,買い物や食事の準備は近所に住む娘に頼んでいる,摂食嚥下機能に問題はない.身長150 cm,体重44 kg,BMI 19.6 kg/m²,血圧145/90 mmHg.空腹時血液検査値は,ヘモグロビン11.2 g/dL,アルブミン3.6 g/dL,血糖82 mg/dL,尿素窒素26 mg/dL,クレアチニン0.80 mg/dL,eGFR 54.1 mL/分/1.73 m2.
21180
初回の在宅患者訪問栄養食事指導の時に,娘からいつも作っている食事内容のメモをもらい摂取量を把握した(表).準備された食事はほぼ摂取し,間食はほとんどしない.この内容から優先すべき問題点である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
21180
- ⑴ エネルギー摂取量が少ない.
- ⑵ たんぱく質摂取量が少ない.
- ⑶ 野菜摂取量が少ない.
- ⑷ 食塩摂取量が多い.
【解法の要点】
栄養指導の場では栄養計算ソフトを使用しなくても食事メモから摂取エネルギー量および主要な栄養素を概算することがポイントである.「糖尿病食事療法のための食品交換表」や「腎臓病食品交換表」での代表的な食品の単位数やエネルギー源となる主食・主菜のだいたいのエネルギー量を把握しておこう.
【解説】
〇⑴ 摂取エネルギー量は900 kcal/日程度と指示エネルギー量より相当少ないので,現状最も優先すべきである.なお,1日当たりのエネルギー量は「糖尿病食事療法のための食品交換表」の単位数から概算した.表1は5単位(食パン6 枚切半分は1 単位,ごはん100 g は2単位),表2 は0.5 単位,表3 は2 単位強(納豆・かれい・豆腐は1単位,肉団子は小1個を10 gと仮定して1.3単位),表4は2.1単位,表6は0.33単位,付録は0.7単位程度である.
×⑵ たんぱく質の摂取量は40 g/日より若干少ないものの,毎食1 〜 2品のたんぱく質源となる食品を摂取しており,優先課題とはいえない.なお,1日当たりのたんぱく質量は「腎臓病食品交換表」の単位数から概算した.表1は約3単位(食パンは1単位,ごはん100 gは約0.8単位),表2は約0.2単位,表3は1単位,表4は平均7.5単位程度,みそは0.6単位程度である.
×⑶ 野菜摂取量は100 g/日程度と少ないものの,優先課題とまではいえない.
×⑷ 食塩摂取量は食事摂取量の少なさに起因して,3,4 g/日程度と多くはないと考えられる.また,家庭料理に含まれる食塩量は,味付けによって違いがあるため,メモからだけでは量を推測するのが難しい.
正解 : ⑴
21181今後の食事に対する具体的なアドバイスである.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 煮物を炒め物に替えるなど,油脂類の摂取を増やしましょう.
- ⑵ 朝食に卵1個程度を追加しましょう.
- ⑶ 朝食にトマト1/2個程度の野菜を追加しましょう.
- ⑷ 昼食のみそ汁をやめましょう.
【解法の要点】
前問より,本問題の患者はエネルギー摂取量を増やす必要があることが分かる.また,問題文より,腎機能低下がありたんぱく質摂取量に制限があることにも注意しよう.
【解説】
〇⑴ 食事メモの情報では,脂質の摂取量が少ない.高齢者は「食べたいけれど量はたくさん食べられない」という場合も多いので,同じボリュームでエネルギーの高い炒め物や揚げ物を取り入れることは,摂取エネルギー量を効率よく増やすためのアドバイスとして,正しい.
×⑵ 朝食には牛乳とヨーグルトを摂取しており,さらに腎機能低下によりたんぱく質量40 g/日にするよう指示が出ているため,たんぱく質の供給源の追加は最適とはいえない.
×⑶ トマトを1/2個(約25 kcal,100 g)追加したところで,摂取エネルギー量を増やすことにはつながりにくい.また,2日間の食事メモからみて,朝食に100 g 程度の野菜を加えることは量的に難しいと考えられるので,誤り.
×⑷ 昼食の味噌汁は,1/2杯なので摂取に問題はない.患者の嗜好を重んじ,食欲が低下しないようにすることが大切である.
正解 : ⑴
21182翌月に,再び在宅患者訪問栄養食事指導を行った.娘より,「最近,母の食欲が低下してきたようだ.」との訴えがあった.対策を相談していたところ,患者から「昔のように,パンにバターをたっぷり塗って食べたい.」と言われた.これに対する返答である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ はい,たっぷり塗ってもらいましょう.
- ⑵ バターを5 gに決めて,塗ってもらいましょう.
- ⑶ バターではなく,マーガリンをたっぷり塗ってもらいましょう.
- ⑷ たっぷり塗ってもらうのは,週2回にしましょう
【解法の要点】
食事行為は,食べる意欲,咀嚼・嚥下機能,消化管機能,栄養代謝など総合的に関連する.適正な食事摂取は生命予後はもとより,その人らしく生きること,主観的幸福感にも大きく影響する.患者の希望を最大限取り入れながら栄養管理計画を立案することが大切である.
【解説】
〇⑴ 前回のアセスメントで,摂取エネルギー量や,脂質の摂取量は少なかった.患者の食べる意欲を喚起させることが重要なため,正しい.なお,腎機能低下のため制限のあるたんぱく質であれば,量や頻度を決める必要があるが,バターは脂質であるため現段階で制限を設ける必要はない.問題文より,食欲が低下してきたようだが,本人に食べたい気持ちはあるようなので,まずは好きなだけバターを塗って食べてもらい,その後様子を見る.
×⑵,⑶,⑷ 解説は選択肢⑴を参照.
正解 : ⑴
21185次の文を読み「185」,「186」,「187」に答えよ.K 大学クリニックに勤務している管理栄養士である.患者は,21歳,女性.大学入学と同時に一人暮らしを始めた.中学生の時からダイエットを始め,大学入学後,おかずには野菜だけを食べる生活を続けている.最近,運動時に息切れするようになり,クリニックを受診した.また,他院にて,舌炎を指摘されている.BMI 18.5 kg/m².血液検査値は,アルブミン4.2 g/dL,ALT 18U/L,AST 20U/L,総ビリルビン0.8 mg/dL,尿素窒素16 mg/dL,クレアチニン0.7 mg/dL,赤血球234×104/μL,ヘモグロビン8.5 g/dL,MCV 112 fL(基準値79 ~ 100 fL),MCHC 32.4 %(基準値26.3 ~ 34.3 %).
21185
この患者に行った追加の血液検査結果である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 不飽和鉄結合能(UIBC)高値
- ⑵ エリスロポエチン低値
- ⑶ ビタミンB₁₂低値
- ⑷ 葉酸低値
【解法の要点】
ダイエットと偏食の既往から,貧血の原因として鉄,ビタミンB12,葉酸など赤血球産生に必要な物質の欠乏をまず考えるが,本症例は,MCV 112 fL,MCHC 32.4 %であることから大球性正色素性貧血であることが分かる.追加で行う血液検査では,貧血の種類・原因を明らかにする必要がある.本問の患者は,野菜に偏った食生活をしていることや,舌炎がみられることがポイントである.
【解説】
×⑴ 不飽和鉄結合能(UIBC)は,トランスフェリンと結合していない鉄であり,鉄欠乏性貧血で高値となる.本症例では,鉄欠乏性貧血でなく,大球性正色素性貧血であるため,最も適切なものとはならない.
×⑵ エリスロポエチン(EPO)は,骨髄の造血幹細胞に作用して赤血球分化を促進させる造血因子である.腎性貧血では低値となるが,本症例ではクレアチニン,尿素窒素(BUN)は正常範囲であり,腎機能は正常である.したがって,エリスロポエチン低値がみられる可能性は低い.
○⑶ ビタミンB₁₂欠乏は菜食主義(野菜や果実にはビタミンB₁₂は含まれない)でみられることがある.この症例では野菜だけを食べる生活を続けていることから最も適切である.
×⑷ 葉酸はビタミンB₁₂とともに造血ビタミンとして知られる.葉酸欠乏の主な原因には野菜を食べない偏食や,アルコールの大量摂取があるほか,妊娠・授乳中で体が葉酸を多く必要とする場合にも起こり得る.本症例の場合,野菜は十分に摂取されているため,葉酸低値がみられる可能性は低い.
正解 : ⑶
21186この患者に認められる症候である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 匙状爪
- ⑵ たんぱく尿
- ⑶ 血尿
- ⑷ 神経障害
【解法の要点】
問題文および前問から,本問の患者はビタミンB₁₂欠乏による巨赤芽球性貧血(悪性貧血)であることが分かる.悪性貧血の症状だけでなく,他の種類の貧血の主な症状とあわせて,確認しておこう.
【解説】
×⑴ 匙状爪は,鉄欠乏性貧血の特徴的な症状であり,ビタミンB₁₂欠乏症では見られない.
×⑵,⑶ たんぱく尿,血尿は,腎性貧血に特徴的な症候である.
〇⑷ ビタミンB₁₂欠乏症では,手足のしびれや歩きにくさなどの神経障害も見られる.神経症状を主訴として来院する場合もある.その他,萎縮性胃炎などの消化器症状もみられる.
正解 : ⑷
21187本人は,今回の受診の結果をきっかけに,これからは食生活を見直したいと思っている.この患者への初回の栄養食事指導である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 納豆や豆腐などの大豆製品を積極的に食べましょう.
- ⑵ 肉,魚,卵,乳製品を,1食に1品以上食べましょう.
- ⑶ ほうれん草など,緑黄色野菜を積極的に食べましょう.
- ⑷ 野菜は茹でこぼして食べましょう.
【解法の要点】
本問の患者はビタミンB₁₂ 欠乏による巨赤芽球性貧血(悪性貧血)であるため,ビタミンB₁₂ を補充できる食品を勧める必要がある.
【解説】
×⑴,⑶ 選択肢⑵の解説を参照.
○⑵ ビタミンB₁₂は,貝類やレバー,牛乳などの動物性食品に豊富に含まれ,植物性食品にはほとんど含まれない.したがって,肉,魚,卵,乳製品を取り入れるという栄養食事指導が最も適切だと言える.
×⑷ 野菜のゆでこぼしは,カリウム制限時に推奨される.
正解 : ⑵
22180次の文を読み「180」,「181」,「182」に答えよ.
K透析クリニックに勤務する管理栄養士である.
患者は,47 歳,女性.糖尿病腎症により,週3回の血液透析を行うため通院している.
身長150 cm,ドライウエイト50 kg,標準体重50 kg,尿量200 mL/日,透析間体重増加量4 kg(中2日).透析前の血液検査値は,HbA1 c 7.6 %,尿素窒素53 mg/dL,クレアチニン8.5 mg/dL,ナトリウム139 mEq/L,カリウム4.8 mEq/L,リン4.8 mg/dL.
普段の食事内容を聞き取った(表1).
聞き取った食事内容から,1日当たりの栄養素等摂取量を概算した値である.改善すべき点として,最も適切なのはどれか.1つ選べ.
22180
- ⑴ エネルギー 1,500 kcal
- ⑵ たんぱく質 50 g
- ⑶ カリウム 2,000 mg
- ⑷ 水分 2,100 mL
【解法の要点】
尿量と透析間の体重増加から,水分のコントロールが必要な患者であると判断できる.透析患者の体水分量は,尿量や水分摂取量,透析による除水量によって規定され,それが体重に反映されるため,体重変化をみながら水分量の管理をすることが重要である.
【解説】
×⑴ 血液透析患者で推奨されるエネルギー量は,30 〜 35 kcal/kg標準体重/ 日であり,標準体重が50 kgである本問の患者では,1,500 〜 1,750 kcal/日となる.したがって,推定エネルギー摂取量1,500 kcalは改善する必要はないと考えられる.
×⑵ 血液透析患者で推奨されるたんぱく質量は,0.9 〜 1.2 g/kg標準体重/日であり,標準体重が50 kgである本問の患者では,45 〜 60 gとなる.したがって,推定たんぱく質摂取量50 gは改善する必要はないと考えられる.
×⑶ 血液透析患者で推奨されるカリウム量は,2,000 mg/日以下である.現在の血清カリウム値は4.8 mEq/Lと基準値内なので,推定カリウム摂取量2,000 mgであれば改善する必要はないと考えられる.
〇⑷ 尿量が200 mL/日と少ないにもかかわらず,推定水分摂取量は2,100 mL/日なので,透析間体重増加量が4 kgと大きいことは,体水分量の貯留によるものと示唆される.したがって,本症例で最も改善すべき点と考えられる.
正解 : ⑷
22181まず取り組んでもらう具体的な内容を伝えた.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ ごはんは,毎食,半分量にしましょう.
- ⑵ 主菜の肉や魚は,半分量にしましょう.
- ⑶ 生野菜サラダの代わりに,野菜は煮物にしましょう.
- ⑷ 飲み物のお茶やコーヒーは,半分量にしましょう.
【解法の要点】
前問で検証した患者の栄養素の摂取状況をふまえ,具体的な食事内容の指示としてふさわしいものを選ぶ.患者は,水分コントロールが必要であることから,そのために具体的に取り組むべきことを考える.
【解説】
×⑴ ご飯を半分にするとエネルギー不足になってしまう.現在のエネルギー摂取量は適量であるため,適切ではない.
×⑵ 肉や魚を半分にするとたんぱく質不足になってしまう.現在のたんぱく質量は適量であるため,適切ではない.
×⑶ 生野菜サラダを煮物に変更すると,カリウムの摂取量を減らすことができる.ただし,本問の患者の血清カリウム値は基準値内であり,生野菜のサラダを摂取しても問題は無いため,適切ではない.
〇⑷ 本問の患者は,体水分量の貯留による体重増加が考えられ,水分制限が必要である.したがって,お茶やコーヒーは制限が必要であるため,最も適切と考えられる.
正解 : ⑷
22182半年後,再び食事内容を聞き取った(表2).主菜の量が少ないことが気になった.1日当たりの摂取量を概算したところ,エネルギー1,400 kcal,たんぱく質35 g,脂質40 gであった.聞き取った主菜に対する助言である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
22182
- ⑴ 肉や魚の量を,倍にすると良いですよ.
- ⑵ 朝食のソーセージは,ポトフにすると良いですよ.
- ⑶ 昼食の豚肉は,野菜と一緒に炒めると良いですよ.
- ⑷ 夕食のさわらは,衣をつけて揚げると良いですよ.
【解法の要点】
問題180より,推奨エネルギー量は1,500 〜 1,750 kcal,推奨たんぱく質量は45〜 60 gであるため,半年後のエネルギーとたんぱく質の摂取量はどちらも不足している.また,脂質については,推奨エネルギー量に対して20.6 〜 24 %と基準の範囲内にある.したがって,エネルギー量とたんぱく質量を同時に増やすことができる方法を助言することが最も適切である.
【解説】
〇⑴ 豚肉30 gとさわら30 gを倍にすると,現在不足しているエネルギー量とたんぱく質量を増やすことができる.最も適切な方法として考えられる.
×⑵ 朝食のソーセージをポトフ(ソーセージ,じゃがいも,野菜類など)に変えても,エネルギー量を増やすことはできるが,たんぱく質量の不足は改善することができない.
×⑶ 豚肉と野菜を炒めても,不足しているエネルギー量とたんぱく質量を増やすことができない.
×⑷ 夕食のさわらに衣をつけて揚げても,エネルギー量を増やすことはできるが,たんぱく質量の不足は改善することができない.
正解 : ⑴
22183次の文を読み「183」,「184」,「185」に答えよ.
K 病院に勤務する管理栄養士である.
患者は,84歳,女性.基礎疾患はない.自宅で娘夫婦と同居していたが,家の中で転倒し,大腿骨頸部を骨折したため,入院し手術を受けた.
入院時の身長140 cm,体重35 kg,BMI 17.9 kg/m².標準体重43 kg.筋肉および皮下脂肪の喪失がみられた.血液検査値は,ヘモグロビン9.7 g/dL,総たんぱく質6.3 g/dL,アルブミン3.0 g/dL.咀嚼・嚥下障害はない.自宅での食事は娘が作っており,家族と同じものを食べていた.
患者の入院時に開始する食事である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 常食1,200 kcal/日
- ⑵ 常食1,600 kcal/日
- ⑶ 軟菜食1,200 kcal/日
- ⑷ 軟菜食1,600 kcal/日
【解法の要点】
発症初期および急性期入院患者などの必要エネルギー量の推定をするには,ハリス-ベネティクトの式,主要な活動係数やストレス係数を知っておく必要がある
【解説】
〇⑴ ハリス- ベネティクトの式より,患者の基礎代謝量は855.6 kcal/日である.また,問題の条件から,活動係数は1.2(ベッド上安静),ストレス係数は1.15 〜 1.3(長管骨骨折)と考えられるため,患者の推定エネルギー必要量は,1,180.7 〜 1,334.7 kcalである.したがって,患者の推定エネルギー必要量の範囲内である⑴が適切である.
×⑵ 選択肢⑴の解説を参照.
×⑶,⑷ 咀嚼・嚥下障害はないので軟菜食にする必要はない.
正解 : ⑴
22184リハビリの開始日から,1日当たりの給与目標エネルギー量を200 kcal増やすこととした.間食として経腸栄養剤1パック(200 kcal/200 mL)を提供したが,「おなかが,いっぱいになるので飲めない.」と,摂取が進まなかった.その場合の対応である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ 現在の経腸栄養剤の提供を続け,飲める範囲で飲んでもらう.
- ⑵ 異なる味の経腸栄養剤に変更する.
- ⑶ 200 kcal/125 mL の経腸栄養剤に変更する.
- ⑷ 経腸栄養剤の代わりに,みかんを1日1個提供する.
【解法の要点】
必要な栄養補給(エネルギー量補給)ができない原因を患者の訴えから導きだし,原因の優先度と栄養目標量の有効性を考えれば,解答に結びつく.
【解説】
×⑴ 現在の経腸栄養剤を続けても,摂取ができなければ,必要なエネルギー量を補給することができないため,最も適切な方法とはいえない.
×⑵ 摂取できない原因が満腹感なので,容量が同じであれば,経腸栄養剤を変えても摂取が進むとは考えにくいため,最も適切な方法とはいえない.
〇⑶ 経腸栄養剤を摂取できない原因が満腹感なので,同じエネルギー量で容量の少ない経腸栄養剤を選べば,患者の可能な範囲で摂取エネルギー量を増やすことができると考えられる.したがって,最も適切な方法であるといえる.
×⑷ みかん1個のエネルギー量は約45 kcalであり,給与目標エネルギー量を補給できない.したがって,最も適切な方法とはいえない.
正解 : ⑶
22185リハビリが進み,自宅への退院の目途が立ったため,患者とその家族に対し栄養食事指導を行うこととなった.優先すべき指導内容である.最も適切なのはどれか.1つ選べ.
- ⑴ エネルギー摂取
- ⑵ ビタミンD 摂取
- ⑶ カルシウム摂取
- ⑷ 鉄摂取
【解法の要点】
低栄養を改善するための優先すべき栄養補給を考える.低栄養の改善は,リハビリ効果や日常生活,患者のQOLにも関わるため最も改善すべき問題だと捉える.
【解説】
〇⑴ 入院時から低栄養状態であったことから,在宅で必要なエネルギー量の食事が摂取できていなかった可能性がある.在宅での食事内容を聞き,必要なエネルギー量を摂取できるように指導する.
×⑵,⑶ ビタミンDとカルシウムは,骨折後の治癒促進として摂取の必要はあるが,まずは栄養状態の改善のためにエネルギー量の摂取に対する指導をする方が優先度として高い.したがって,最も適切な指導内容とはいえない.なお,十分なエネルギー補給をすると,ビタミンDとカルシウムの摂取も増えると考えられる.
×⑷ 鉄は,貧血を改善する栄養素として摂取の必要はあるが,まずは栄養状態の改善のためにエネルギー量の摂取に対する指導をする方が優先度として高い.したがって,最も適切な指導内容とはいえない.なお,十分なエネルギー補給をすると,鉄の摂取も増えると考えられる.
正解 : ⑴