【解法の要点】
歩行周期で各時点の状態と,その時に生じる各関節の動きをイメージしながら考えて解く.
【解説】
◯(1) 1回の歩行周期に2回の背屈と底屈を行う.踵接地前に背屈している足関節は,踵接地直後に背屈から足底接地するため底屈する.その後,立脚中期を経て背屈へと変化する.踵離地となり,足関節の運動は背屈から底屈へと反転して足尖離地後は急速に背屈運動へと変わる.
✕(2) 股関節は1回の歩行周期に伸展と屈曲がそれぞれ1回起こる.
✕(3) 膝関節は1回の歩行周期に2回の屈曲と伸展を行う.支持脚は踵接地後すぐに軽度屈曲する.立脚相の後半になると,膝関節は急速に伸展し,対側脚が接地すると遊脚相に向けて再び屈曲する.遊脚相の後半になると,膝関節は急速に伸展を始める.
✕(4) 一側下肢の立脚相と遊脚相の割合は6:4である.
✕(5) 高齢者では,若年者に比べて立脚相が長くなり,歩行比(遊脚相/立脚相比)は低下する.
正解 : (1)
【解法の要点】
歩行率とは単位時間内の歩数である.
【解説】
✕(1),(2),(4),(5) (3)を参照.
◯(3) 80歩/分×45cm/歩=3600cm/分
正解 : (3)
【解法の要点】
健常成人の歩行に関する基礎知識をもとに,実際に快適歩行から速度を速めた状況をイメージして解答する.
【解説】
✕(1) 歩行速度を上げたとき,歩幅は増加し,歩隔は減少する傾向にある.
✕(2) 歩行速度を上げると,重心の上下動は増加し,左右移動は減少する傾向にある.
◯(3) 歩行速度が速くなると,歩行率は増加し,立脚時間と両脚支持時間の短縮が著しいため,結果的に立脚相の時間が減少する.
✕(4) 歩行速度を上げたとき,歩幅の増加に伴い,股関節の屈曲角度は増加する.
✕(5) 歩行速度が速くなると骨盤および体幹の水平面内回旋運動の振幅が増加し,歩行速度の増大に伴って骨盤回旋運動が増加する分,それと同等に逆方向の体幹回旋運動が必要となる.
正解 : (3)
【解法の要点】
重心位置の振幅が少ない歩行が効率の良い歩行である.重心移動幅の減少の5つの要素には,①骨盤回旋,②骨盤傾斜,③膝関節屈伸,④足関節の底背屈,⑤骨盤の側方移動がある.
【解説】
✕(1) 正常歩行時の骨盤傾斜は,遊脚側が下方に5°傾斜し,重心の上下移動を減らす.
✕(2) 二重膝作用(double knee action)は,膝関節が1歩行周期に2回屈伸して,踵接地時の衝撃を軽減し,重心の上下移動も減らす効果がある.膝関節は立脚中期と遊脚期に屈曲する.
◯(3) 膝関節は,完全伸展位からの屈曲初期に脛骨が大腿骨に対して内旋し,屈曲位から伸展していくときには外旋する.膝関節最終伸展時に脛骨が大腿骨に対し軽度の外旋運動を起こす現象をlocking mechanismともいい,筋力に頼ることなく立位を保持できる機構である.これにより膝関節の安定性が増加するが,歩行時の重心位置の振幅には関与が小さい.
✕(4) 骨盤回旋によって,重心点の垂直方向の振幅の下降部分が少なくなる.
✕(5) 歩行周期では骨盤の側方移動が起こり,片側に約3cm移動し,左右の振幅を減らす.
正解 : (3)
【解法の要点】
歩行時の筋活動について問う問題である.歩行をイメージして,各関節の動きより筋の活動を考える.覚える問題ではなく考える問題である.
【解説】
✕(1) 下腿三頭筋は立脚相で筋活動しており,遊脚相では筋活動がない.
✕(2) 大腿四頭筋は立脚相初期に最も活動する.接地時の衝撃吸収に大腿四頭筋の遠心性収縮が働いている.
✕(3) ハムストリングスは遊脚相後期から立脚相初期に働く.
✕(4) 中殿筋は,立脚相での左右方向の安定のため活動している.中殿筋が障害されると,立脚相で骨盤の外側支持が不十分となり,Trendelenburg徴候が現れる.
◯(5) 脊柱起立筋は歩行時には抗重力姿勢を維持するため,全歩行周期で筋活動がみられる.
正解 : (5)