【解法の要点】
老化による心血管系,呼吸器系の機能変化についての正しい知識を要求されている.
【解説】
✕(1) 加齢による動脈硬化によって,血管抵抗は増加し,収縮期血圧が上昇する.
✕(2),(4) 残気量は上昇する.一方,肺活量,1秒率,拡散能は低下する.
✕(3) 運動負荷時の心拍出量は加齢に伴い低下する.
◯(5) 残気量が上昇し,肺活量は低下する.そのため予備呼気量は減少する.
正解 : (5)
【解法の要点】
高齢者の諸臓器が経年的にどのような変化を来すのかが問われている.
【解説】
✕(1) 高齢者においては骨形成が低下し,骨吸収は変化しないか亢進する.その結果が骨粗鬆症である.
✕(2) 加齢により末梢気道が狭小化することで,残気量は増加する.
✕(3) 動脈壁のコンプライアンスが低下する結果,収縮期高血圧を来しやすい.“コンプライアンス=拡がりやすさ”である.
◯(4) 加齢に伴い,水晶体の構成蛋白は変性する.これにより白内障や,近くのものを見ても水晶体が厚くなることができず,網膜の後ろで結像し,ぼやけて見えるいわゆる“老眼”を来す.
✕(5) 加齢に伴い,皮膚の痛点分布の減少や神経伝達速度も低下するため,痛み閾値は上昇する.刺激が強くないと痛みを感じにくくなる.
正解 : (4)
【解法の要点】
骨密度や筋肉量が減少し体脂肪が増えるというのはイメージしやすいだろう.
【解説】
✕(1) 加齢に伴い骨塩量は減少し,骨粗鬆症を来しやすくなる.
◯(2) 加齢に伴い筋肉量が減少し基礎代謝が低下するため,体脂肪は増加する.
✕(3),(4) 体水分の約2/3が細胞内液(筋などに貯留),1/3が細胞外液(血液などの体液)に存在する.主に加齢に伴う細胞数の減少により細胞内液は減少するが,細胞外液は成人期以降ではほぼ一定である.
✕(5) 加齢に伴い細胞性固形物の重量は低下する.
正解 : (2)
【解法の要点】
加齢による筋の変化についての問題である.加齢によって運動単位数が減少することは想像でき,正解にたどり着くことができる.
【解説】
◯(1) 加齢により筋組織量が減少する.筋線維の萎縮と筋線維数の減少により全身筋量・断面積は減少傾向を示す.
✕(2) 加齢により運動単位数は減少する.
◯(3) 若年者に比べ高齢者では劣るものの,筋力増強効果はみられる.
◯(4) 速筋線維(タイプⅡ)は,加齢により顕著に萎縮が認められる.遅筋線維(タイプⅠ)は速筋線維(タイプⅡ)と比べると保たれやすい.
◯(5) 遅筋線維(タイプⅠ)は保たれるので,持久力は維持されやすい.
正解 : (2)
【解法の要点】
加齢に伴い様々な機能の低下や組織の変化が生じる.生理的変化においては蛋白合成など低下する部分が多いので,増加傾向にあるものを覚えておくのがよいだろう.
【解説】
✕(1) 速筋線維とは白筋ともよばれ,瞬発的な収縮が可能である.加齢に伴い減少する.
✕(2) ビタミンDは脂溶性ビタミンの一つで,紫外線により皮膚で合成,または食物から摂取後,腸管から吸収され,腎臓で活性型に変換される.加齢では,摂取量の低下や,外出機会の減少(紫外線を浴びる機会の減少)のため,ビタミンDは減少する.また,腎機能低下により活性化ビタミンDが低下する.
✕(3) 成長ホルモンは下垂体前葉から分泌されるホルモンであり,成長期に多く分泌され加齢に伴い減少する.
✕(4) α運動神経細胞は,筋を直接支配し収縮を引き起こす遠心性の神経線維である.むしろ,加齢に伴い筋萎縮などでは減少することがある.
◯(5) 炎症性サイトカインは加齢に伴い増加する.その結果,動脈硬化,メタボリックシンドロームなど,老化に関連した疾患の頻度も増加する.
正解 : (5)