【解法の要点】
知的障害とは,「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ,日常生活に支障が生じているため,何らかの特別の支援を必要とする状態にあるもの」と定義される.
【解説】
◯(1) Down症候群は,染色体異常(21トリソミー)による疾患であり,精神発達遅滞のほか,多様な先天異常を合併しやすいことが知られている.
◯(2) ネコ鳴き症候群は,5番染色体の短腕欠損(5p-)が原因となる.甲高い子猫のような泣き声を特徴とし,小頭症,重度の精神発達遅滞,両眼の開離,アーモンド様眼裂,内眼角贅皮,斜視,耳介低位,筋緊張低下,鼠径ヘルニアなどを認める.
✕(3) Korsakoff症候群とは,記銘力障害,見当識障害,作話がみられる健忘症候群である.
✕(4) Wallenberg症候群は,後下小脳動脈の閉塞により延髄外側に梗塞が起こる疾患である.めまい,嘔吐,嚥下障害,眼振,Horner症候群,小脳性運動失調,同側顔面と対側の上下肢と体幹の解離性感覚障害が生じる.
✕(5) Guillain-Barré症候群は炎症性ニューロパチーの代表疾患である.下肢の軽度のしびれで発症し,上行する左右対称性の弛緩性麻痺がみられる.
正解 : (1),(2)
【解法の要点】
それぞれの疾患の特徴的な症状を整理する.
【解説】
✕(1) 結節性硬化症の皮膚病変には,顔面の血管線維腫や葉状白斑がみられる.大脳皮質などに結節性病変が多発する常染色体優性遺伝疾患であり,乳幼児期よりてんかんや精神発達遅滞などの神経症状を呈する.
◯(2) 神経線維腫症1型ではカフェオレ斑はほぼ必発である.出生時より出現していることが多く,遅くても2歳ころまでにみられるようになるため,早期診断の手がかりとなる.その他の症状として,軽度知的障害,脊柱側弯,長管骨の狭細化・弯曲・偽関節,他臓器の腫瘍がある.
✕(3) ネコ鳴き症候群は,5番染色体の短腕欠損(5p-)が原因となる.甲高い子猫のような泣き声を特徴とし,小頭症,重度の精神発達遅滞,両眼の開離,アーモンド様眼裂,内眼角贅皮,斜視,耳介低位,筋緊張低下,鼠径ヘルニアなどを認める.皮膚病変は特徴的ではない.
✕(4) Williams症候群は,7番染色体長腕7q11.23 異常による遺伝子疾患である.大動脈弁上狭窄,妖精様顔貌,知的障害などを呈する.
✕(5) Prader-Willi症候群の主な症状として,性腺機能低下,肥満,低身長,筋緊張低下などの症状がみられる.皮膚病変は特徴的ではない.
正解 : (2)
【解法の要点】
先天異常について問う問題である.異常があるのが常染色体なのか性染色体なのかを区別する.
【解説】
✕(1) Down症候群は,常染色体異常で最も多く,21トリソミーを呈する.
✕(2) Marfan症候群は,15番染色体ないし3番染色体の先天性遺伝子異常であり,常染色体優性遺伝を示す.主に骨格,眼,心血管系に症状を来す結合組織疾患である.心・大血管疾患の合併(解離性大動脈瘤,大動脈弁閉鎖不全症など)の有無に配慮が必要である.
◯(3) Turner症候群は,45Xが代表的核型であるX染色体異常である.
✕(4) Williams症候群は,7番染色体長腕7q11.23異常による遺伝子疾患である.大動脈弁上狭窄,妖精様顔貌,知的障害などを呈する.
◯(5) Kleinfelter症候群は,男性における47XXYを代表的核型とする性染色体異常である.
正解 : (3),(5)
【解法の要点】
精神発達遅滞を来す疾患についての問題である.
【解説】
✕(1) Down症候群は染色体異常(21トリソミー)による疾患であり,精神発達遅滞を来す.
✕(2) 結節性硬化症は,腫瘍抑制遺伝子(TSC1またはTSC2遺伝子)異常による疾患であり,精神発達遅滞を来す.
✕(3) 神経線維腫症は,腫瘍抑制遺伝子の異常によるもので,神経線維腫症1型と2型があり,1型は軽度の知能障害を来すことがある.
✕(4) Turner症候群は,女性でX染色体の異常により,低身長や二次性徴が微弱など,特有の身体徴候がみられる.精神発達遅滞は来さない.
◯(5) フェニルケトン尿症は,先天性アミノ酸代謝異常が原因で精神発達遅滞を来す.
正解 : (5)