【解法の要点】
心不全とは,心臓のポンプ機能が低下し,心拍出量低下,末梢循環不全,肺・体循環のうっ滞を来す病態をいう.左心不全は肺循環系のうっ血が著明な病態を,右心不全は体循環系のうっ血が著明な病態を指し,下大静脈のうっ血により肝脾腫,下腿浮腫などがみられる.肺・体循環系の両方にうっ血がみられる場合を両心不全という.
【解説】
✕(1)肺水腫は左心不全徴候である.◯(2)右心機能の低下により全身の静脈系にうっ血を来し,体循環系の諸臓器にうっ血を来たす.✕(3)起座呼吸は左心不全徴候である.◯(4)全身の静脈系のうっ血により下腿浮腫を来たす.✕(5)チアノーゼは左心不全徴候である.
正解 : (2),(4)
【解法の要点】
心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血流量を供給できない状態である.体液の貯留やうっ血を生じ,主な症状として呼吸困難,咳嗽,チアノーゼなどがある.尿量は減少し,胸部X線では心拡大,肺うっ血像が認められる.脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心不全の診断,予後や治療効果の判定に有用である.
【解説】
✕(1)胸水は右心不全の症状として出現する.
✕(2)心臓の収縮力が低下するために,左室前壁の不動化が起きる.
✕(3)体内水分蓄積量が増加するために心胸郭比の拡大(50%以上)がみられる(正常:<50%).
◯(4)心臓の収縮力が低下するために,左室駆出力は35~40%以下に低下する(正常:55~90%).
✕(5)心機能の低下に反応し,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は増加する.
正解 : (4)
【解法の要点】
虚血性心疾患とは,冠動脈が何らかの原因で狭窄・閉塞し,酸素需要に見合った血液を心筋に送ることができなくなり,心筋が虚血に陥ることである.この狭窄・閉塞の原因の多くは動脈硬化(粥状硬化)である.
【解説】
✕(1)一般的に心筋炎では虚血性心疾患は来さない.
✕(2)大動脈弁閉鎖不全症や大動脈弁狭窄症など,一部の心臓弁膜症では冠血流が低下し虚血性心疾患を併発する可能性があるが,冠動脈の硬化の方が直接的な原因になりうる.
✕(3)肺高血圧では肺に血液が流れにくくなり,右心系に負荷がかかる.右心不全の原因になりうる.
◯(4)冠動脈硬化により冠動脈内径の狭小化から冠血流が減少し,心筋の虚血に至る.
✕(5)深部静脈血栓症(DVT)は肺血栓塞栓症の基礎疾患として重要である.
正解 : (4)
【解法の要点】
虚血性心疾患には,一過性の心筋虚血である狭心症と,心筋虚血の持続により心筋壊死に陥る心筋梗塞がある.狭心症と心筋梗塞の鑑別に注意する.
【解説】
✕(1)狭心症の痛みは数分以内に治まることが多い.30分異常持続する強い胸痛は急性心筋梗塞,解離性大動脈などを考える.
✕(2)心エコーでは局所の壁運動低下・消失の出現があれば心筋虚血を判断できる.狭心症では非発作時には血流が保たれているため,特異的な所見を認めない.
✕(3)不安定狭心症とは,重症または増悪型の狭心症であり,心筋梗塞への移行や突然死に至る可能性があるため,早急な対処が必要である.冠動脈内において動脈硬化に起因する不安定プラークの破綻などにより血栓が形成され,それによって急激に冠動脈が狭窄し,心筋虚血に至った状態である.
✕(4)負荷心電図では,STの低下(労作性狭心症)が特徴的である.
◯(5)発作時は,ニトログリセリンの舌下投与により通常2~3分で軽快する.
正解 : (5)
【解法の要点】
心室中隔欠損症(VSD)は,心室中隔に存在する欠損孔に,収縮期に左室から右室へ動脈血が流入する左→右シャントの疾患である.左→右シャントにより右心室から肺動脈への血流量の増加がみられる.
【解説】
✕(1)心室中隔欠損症では,初期には左→右シャントだったものが,肺高血圧が進行することにより右→左シャントを引き起こす.この際,チアノーゼがみられうるが,現在の医療ではチアノーゼを発症する前に発見されることが多く,チアノーゼを生じることはごくまれである.
✕(2)動脈管が開存しているのは,動脈管開存である.
✕(3)卵円孔の閉鎖不全は,心房中隔欠損症である.
◯(4)収縮期に左室から右室へ動脈血が流入するので,肺血流量は上昇する.
✕(5)大動脈から肺動脈に直接血液が流れるのは,動脈管開存症である.
正解 : (4)
【解法の要点】
心筋梗塞の合併症を問う問題である.特に不整脈は心筋梗塞発症後24時間以内に多く,発症直後の急死の原因として重要である.
【解説】
◯(1)心室頻拍は発症数時間以内に多くみられ,最も警戒すべき合併症である.
✕(2)下肢静脈瘤は下肢の静脈弁の機能不全が原因で起こる.長時間の立位・筋肉労働が誘因となり,中・高齢の女性に多い.心筋梗塞の合併症ではない.
◯(3)肩手症候群は,複合性局所疼痛症候群の1つとして考えられており,原疾患発症後,数週~数ヶ月に肩や手の炎症・疼痛を生じ,最終的に骨萎縮や拘縮を来すこともある.心筋梗塞や脳卒中,外傷,頚椎症などの合併酒である.
◯(4)心筋梗塞発症2~5日目に乳頭筋断裂が起こり(下壁梗塞に多い),僧帽弁逆流を来すことがある.
◯(5)心室中隔選考は左冠動脈前下下降枝の閉塞え起こることが多く,心不全症状から多臓器不全に陥ることが多い.
正解 : (2)