【解法の要点】
腫瘍は,生体に及ぼす影響が軽度にとどまる良性腫瘍と,重篤になりうる悪性腫瘍に分けられ,悪性腫瘍をがんとよぶ.
【解説】
◯(1) がんの発生には,物理的因子,化学物質,生活習慣・食事,感染といった様々な環境因子が関与している.
✕(2) 緩和ケアはがんと診断された時点で開始される.緩和ケアとは生命を脅かす疾患に伴う問題に直面する患者と家族に対し,疼痛や身体的,心理社会的,スピリチュアルな問題を早期から正確にアセスメントし解決することにより,苦痛の予防と軽減を図り,生活の質(QOL)を向上させる.
✕(3) がんの罹患数と死亡数は人口の高齢化などを要因として増加し続けているものの,年齢調整死亡率は1990年代半ばをピークに減少している.
✕(4) がん抑制遺伝子の多くは,正常では細胞増殖を抑制する遺伝子で,不活化を来す遺伝子異常が起きることで発がん・がん細胞増殖に関与する.がん抑制遺伝子では2個(1対)ある遺伝子の両方に異常を来した場合に発がんに関与する.
✕(5) 我が国で最も死亡数(2019年)が多いがんは肺がんで,大腸がん,胃がん,膵臓がん,肝臓がんの順となっている.罹患数(2018年)が最も多いのは大腸がんで,胃がん,肺がん,乳がん,前立腺がんの順となっている.
正解 : (1)
【解法の要点】
病原体が持続的に臓器に存在していると,その臓器に腫瘍性変化をもたらすことがある.病原体と感染する臓器の正しい組合せを選べば正答可能である.
【解説】
✕(1) ヘリコバクター・ピロリ菌が原因となるのは胃癌である.感染した胃は萎縮性胃炎,腸上皮化生などを経て胃癌に至る.膀胱癌の最も重要な発がん因子は喫煙である.
◯(2) 肝細胞癌に関連が深い肝炎ウイルスは,B型とC型である.
◯(3) ヒトパピローマウイルスの16,18型が子宮頸癌の原因となる.
✕(4) HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス)は主に母乳を介して母子感染し,長い潜伏期間を経た後,成人T細胞白血病(ATL)を発症することが多い.Epstein-Barr(EB)ウイルスはBurkittリンパ腫との関連性が強いとされている.
✕(5) 慢性骨髄性白血病は造血幹細胞に染色体転座(BCR-ABL1)が生じ発症する骨髄増殖性疾患である.病原体との関連性は指摘されていない.
正解 : (2),(3)
【解法の要点】
人体に発生する悪性腫瘍ではしばしば骨転移が生じるが,骨転移の生じやすさはさまざまである.原発巣が小さいにもかかわらず骨転移がみられやすいのは乳癌,肺癌,前立腺癌,多発性骨髄腫等である.このことを知っていれば正解可能である.
【解説】
✕(1),(2),(4),(5) 胃癌,肝臓癌,大腸癌,膀胱癌は初期の段階で骨転移がみられることは少ない.
◯(3) 前立腺癌は初期の段階から骨転移がみられやすい.
正解 : (3)
【解法の要点】
良性腫瘍は成熟構造であり,膨張性で異型性は軽微ないし軽度である.分裂は緩やかで,転移はみられない.一方,悪性腫瘍は正反対の性質を持つ.分化度が低く未熟構造であり,浸潤性があり異型性が強く,分裂が活発で,しばしば転移がみられる.悪性腫瘍は正常な細胞の増殖,成熟の制御を外れて増殖し,外部からの制御を受けない.
【解説】
◯(1) 悪性腫瘍細胞の増殖は正常細胞に比べて速い.
◯(2) 悪性腫瘍細胞では,核分裂は活発である.
◯(3) 悪性腫瘍細胞の染色体異常は多い.
✕(4) 核/細胞質比(N/C比)は,核と細胞質との面積の比を示すものである.一般的に,悪性腫瘍細胞では,核が腫大するので,核/細胞質比は大きい.
◯(5) 悪性腫瘍細胞の分化度は低く未熟である.
正解 : (4)
【解法の要点】
様々な病原微生物と,それらが引き起こす多様な疾患との関連を問うている.病原体が持続的に臓器に存在していると,その臓器に腫瘍性変化をもたらしうる.の組合せで持続感染しない病原体を選べばよいことになる.
【解説】
✕(1) A型肝炎は慢性化しないため癌化しない.肝細胞癌に関連が深い肝炎ウイルスはB型とC型である.
◯(2) Burkittリンパ腫はEpstein-Barr(EB)ウイルスとの関連性が強いとされている.
◯(3) HTLV-1が,主に母乳を介して母子感染し長い潜伏期を経た後,成人T細胞性白血病を発症することが多い.
◯(4) ヒトパピローマウイルスの16, 18型が子宮頸癌の原因となる.
◯(5) 胃癌の多くはヘリコバクター・ピロリ菌の感染により引き起こされる.感染した胃は萎縮性胃炎,腸上皮化生などを経て,胃癌に至る.
正解 : (1)
【解法の要点】
良性腫瘍と悪性腫瘍の細胞の違いについての問題である.混同しやすいので注意が必要である.
【解説】
✕(1) 悪性腫瘍細胞の増殖は正常細胞に比べて速い.
◯(2) 分化の程度は低い.
✕(3) 悪性腫瘍細胞の染色体異常は多い.
✕(4) 悪性腫瘍細胞では,核分裂は活発である.
✕(5) 核/細胞質比(N/C比)は,核と細胞質との面積の比を示すものである.一般的に,悪性腫瘍細胞では,核が腫大するので,核/細胞質比は大きい.
正解 : (2)