【解法の要点】
スパイログラムについて問う問題である.計算式の記憶のみではなく,スパイログラムの波形と呼吸分画から算出できるようにしておく.
【解説】
✕(1)1秒率=1秒量÷努力性肺活量×100
✕(2)機能的残気量=予備呼気量+残気量
◯(3)最大吸気量=1回換気量+予備吸気量
◯(4)全肺気量=肺活量+残気量
✕(5)肺活量=最大吸気量+予備呼気量
正解 : (3),(4)
【解法の要点】
特発性肺線維症(IPF)は慢性かつ進行性の線維化・蜂巣肺形成を特徴とする肺疾患で,特発性間質性肺炎(IIPs)のうちで最も頻度が高い.50歳以上の男性喫煙者に好発し,乾性咳嗽,徐々に増悪する労作時呼吸困難,ばち指などの症状がみられる.
【解説】
✕(1)IPFは突発性間質性肺炎の中で予後が悪い疾患である.診断時からの生存中央値は約3年,5年生存率は20~40%である.
◯(2)両側下肺野を中心に吸気終末期に捻髪音(fine crackles)を聴取する.
✕(3)乾性咳嗽を認める.
✕(4)拘束性換気障害を示す.
✕(5)IPFの経過中に,両側肺野への新たな浸潤影,するガラス様陰影の出現とともに急速に呼吸不全に来す原因不明の病態をIPFの急性増悪という.急性増悪の発症率は5~10%/年とされており,稀ではない.
正解 : (2)
【解法の要点】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,40歳以上の8~9%が罹患しているといわれ,非常によくみられる疾患である.COPDの病態から治療,その周辺の基本知識は国試にも出題されやすいので,特徴を理解することが必要である.
【解説】
✕(1)COPDは長期の喫煙歴がある中高年者に好発するため,肺癌や気胸などの肺合併症も多くみられる.喫煙や加齢に伴う様々な疾患が全身に併存していることが多い.
✕(2)COPDでは呼吸筋を動かすためのエネルギー消費が増加する.閉塞性障害があると呼吸抵抗が上昇し,呼吸運動に健常時よりも多くのエネルギーを必要とするため,安静時エネルギー消費量は増加する.
◯(3)増悪に対して薬物療法や酸素療法が最大限行われているにもかかわらず,呼吸状態が改善しない場合には換気補助療法の適応となる.NPPV(非侵襲的電圧換気)とIPPV(侵襲的陽圧換気)があるが,侵襲度の低いNPPVが第一選択である.
✕(4)呼吸リハビリテーションの主な硬化として,病態の安定,運動耐用能の改善,QOL,ADLとの改善,入院回数と入院期間の減少,不安と抑うつの軽減がある.
✕(5)COPD assessment test(CAT)は,①咳,②喀痰,③息苦しさ,④労作時息切れ,⑤日常生活,⑥外出への自信,⑦睡眠,⑧活力についての8項目で患者のQOLを総合的に評価する.各項目について問題が無い場合は0点,重度の場合は5点として評価するので,点数が低いほど患者のQOLは高い.
正解 : (3)
【解法の要点】
肺塞栓症は,主に下肢や骨盤内の静脈で形成された血栓(深部静脈血栓症)が遊離して血流にのり,肺動脈を閉塞して肺循環障害を来す疾患である.血栓は,Virchowが提唱した血流停滞,血管内皮障害,血液凝固能亢進が関連して形成され,これらを引き起こす病態や疾患が肺塞栓症の危険因子となる.肺塞栓の原因となるのは,血栓,脂肪,腫瘍細胞などである.
【解説】
◯(1)肥満は血流停滞しやすく,肺塞栓症の危険因子となる.
◯(2)長期臥床は,血流が停滞して肺塞栓症の危険因子となる.
◯(3)肺塞栓症は症状や一般的な検査所見に特異的なものがない.心電図では,右側胸部誘導(V1~V3)の陰性T波,洞性頻脈などがみられるが,これらは右心負荷所見であり,肺塞栓症に特異的な所見ではない.
✕(4)下肢などの手術後,下肢の血液凝固能が亢進し,また,臥床により静脈血がうっ血し,血液粘稠度が上がるため下肢に深部静脈血栓が原因である.
◯(5)肺塞栓症の大部分は,下肢や骨盤腔の深部静脈血栓が原因である.
正解 : (4)
【解法の要点】
間質性肺炎の単純X線写真では,網状陰影,すりガラス陰影が特徴的である.肺機能検査では拘束性障害を示し,肺が縮んでいく病態であるため,肺活量や全肺気量は低下する.また,間質の線維化によりガスの拡散能は低下し,動脈血酸素分圧も低下する.拘束性疾患は,%肺活量(%VC)が80%未満の疾患と定義される.
【解説】
◯(1) 肺の間質に病変がある場合には,単純X線で下肺野から始まる間質性陰影(網状陰影,すりガラス陰影など)が特徴的である.
✕(2) 肺コンプライアンスとは,肺胞内圧の単位圧上昇によって起こる肺容量の増加である.間質性肺炎は拘束性肺障害のため,肺コンプライアンスが低下する.
✕(3) 間質性肺炎では,捻髪音が聴取される.捻髪音は細かい断続性ラ音で,Velcroラ音ともいわれる.水泡音は荒い断続性ラ音で太い気管支に由来し,慢性気管支炎,肺水腫などで聴取される.
✕(4) 間質性肺炎では,横隔膜挙上が特徴である.横隔膜低位は慢性閉塞性肺疾患など肺の過膨張を示す疾患でみられる.
✕(5) 間質性肺炎では湿性咳嗽ではなく,乾性咳嗽がみられる.
正解 : (1)