【解法の要点】
過去問と同一の脳卒中のCT所見に関する基本的な問題である.脳の解剖図や頭部CTの画像を確認しておくことが重要である.
【解説】
✕(1) 後頭葉は出血部位よりも後方にある.
✕(2) 頭頂葉はこれより上部のスライスである.
✕(3) 尾状核はこれより前方にある.側脳室前角の後方にある.
✕(4) 被殻は出血部位よりも前方にある.
◯(5) CTで視床の部分に高吸収域がみられるため,視床出血である.
正解 : (5)
【解法の要点】
Gerstmann症候群とは優位半球(通常左)の頭頂葉(角回周囲)の症状で,①手指失認,②左右失認,③失算,④失書などが組み合わされた症状を呈する.また,大脳の優位半球の障害では失語が認められる.
【解説】
✕(1) 健忘は,心因性,外傷性,薬剤性,症候性(コルサコフ症候群,正常圧水頭症),認知症などが原因で生じ,時間的分類では前向性健忘や逆向性健忘がある.
◯(2) Gerstmann症候群では,①手指失認,②左右失認,③失算,④失書がみられる.
✕(3) 運動性失語と失構音は,前頭葉のBroca野と中心前回下部の障害でみられる.
✕(4) 遂行機能障害は,前頭葉の障害で認められる.
✕(5) 半側空間無視は,大脳の劣位半球(通常右)の障害で認められる.
正解 : (2)
【解法の要点】
脳血管障害の治療法について問われている.紛らわしい治療法が並ぶが,それぞれの病態の発生機序を考えれば,治療法を整理できる.
【解説】
✕(1) ラクナ梗塞は脳深部に起こる15mm未満の小さな脳梗塞をさす.急性期には血栓溶解療法や抗血小板療法,慢性期には抗血小板療法と血圧のコントロールが行われる.頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)は,頸動脈狭窄症に対する血行再建術の一つである.
◯(2) くも膜下出血の治療は,脳動脈瘤破裂の場合,再出血予防として早期(72時間以内)に動脈瘤頸部クリッピング術(外科的治療)または,動脈瘤コイル塞栓術(血管内治療)を施行する.
✕(3) 心原性脳塞栓症は,心房細動などの心疾患により心臓内に形成された血栓が塞栓子となり起こる脳梗塞である.よって,治療法としては,血栓溶解療法,血栓回収療法,抗凝固療法などが行われる.頸動脈ステント留置術(CAS)は,頸動脈狭窄症に対する血行再建術の一つである.
✕(4) 一過性脳虚血発作は,脳虚血により局所神経症状が出現するが,脳梗塞には至っていない一過性の神経障害である.脳虚血の原因により,治療法が異なり,非心原性の場合には抗血小板療法,心原性の場合には抗凝固療法,高度の頸動脈狭窄症がある場合には外科的治療を行う.コイル塞栓術は,動脈瘤に対して行う低侵襲な再出血予防治療である.
✕(5) アテローム血栓性脳梗塞は,頭蓋内外の主幹動脈のアテローム硬化によって引き起こされる脳梗塞である.血栓溶解療法,血栓回収療法,抗血小板療法,抗凝固療法などが行われる.アブレーション手術は,頻脈性不整脈に対して行われ,心原性脳塞栓症に対して用いられる可能性はある.
正解 : (2)
【解法の要点】
視床痛とは,血栓や出血による後大脳動脈の主幹血管の閉塞によって視床が障害された後に起こる視床症候群の症状の一つである.
【解説】
✕(1) 視床痛は,視床の障害が原因で起こる体深部の耐え難い疼痛であり,脳卒中後疼痛に分類される.
✕(2) 脳卒中患者のうち,神経障害の有無に関わらず何らかの疼痛を有する頻度は30~50%程度であるが,脳卒中後疼痛の頻度は1~4%程度である.
✕(3) 視床痛は,脳卒中などで視床が障害された後,数週〜数ヵ月経過して生じる.
◯(4) 疼痛の発症機序は不明であり,薬物治療は効きにくい.
✕(5) 視床症候群では深部感覚障害のため指関節が一定の位置に保持できず,各指がばらばらに屈曲・伸展してしまう視床手を示すことがあるが,手部に腫脹は伴わない.手部に腫脹を伴うのはCRPSである.
正解 : (4)
【解法の要点】
脳内出血の部位と,それに伴う特異的な症状について問う問題である.視床出血(約25%)が多い.
【解説】
✕(1) 被殻出血は,病側の共同偏視,優位半球障害時に運動失語,劣位半球障害時に失行・失認を引き起こす.また血腫による内包障害のため対側の片麻痺,感覚障害,錐体路徴候を引き起こすことがある.作話とは,欠如した記憶を埋めるために周囲の情報から虚構の話をつくることであり,Korsakoff症候群などでみられ,被殼出血に特徴的ではない.
✕(2) 皮質下出血は,脳出血の約20%を占める.頭痛に加え,発生部位に一致した症状が現れる.複視とはものが二重に見えるという症状であり,外眼筋麻痺やMLF(内側縦束)症候群,斜偏倚など脳幹の障害で見られることが多く,皮質下出血に特徴的ではない.
◯(3) 視床出血は脳出血の約25%を占める.対側の片麻痺,感覚障害,錐体路徴候を呈する.注意障害とは,注意散漫,集中困難といった症状の総称である.右大脳半球(劣位半球)の前頭葉-下部頭頂葉-視床と脳幹のネットワークが関与していると考えられており,劣位半球や劣位側視床を含む広範な障害で起こりやすいとされている.視床出血では注意障害が出現しやすい.
✕(4) 小脳出血は脳出血の約8%を占める.回転性めまい,嘔吐,歩行障害などの小脳症状を呈する.反響言語とは,オウム返しのように検者が言った言葉を繰り返すという症状であり,前頭側頭型認知症で特徴的な症状である.
✕(5) 橋出血は脳出血の約10%を占める.突然の意識障害,眼球の正中位固定,縮瞳を呈する.半側空間無視とは,大脳半球の障害により一側からの情報を認識できなくなる症状であり,劣位半球頭頂葉の障害でみられることが多い.脳幹障害で生じることは少ない.
正解 : (3)
【解法の要点】
脳卒中後の肩手症候群は複合性局所疼痛症候群(CRPS)として考えられており,肩と手の強い疼痛を伴う運動制限が主な特徴で,数ヵ月~半年ほどの経過で痛みは軽減していくが,骨萎縮(Sudeck骨萎縮)や手指の強い拘縮が残る.
【解説】
✕(1) 運動麻痺重症例に多い.
✕(2) 性差はみられない.
✕(3) 脳卒中発症後3日~6ヵ月に生じる.3〜6週後の発症例が多い.
✕(4) 脳卒中後の肩手症候群は20%程度の発症頻度とされる報告が多い.
◯(5) 複合性局所疼痛症候群typeⅠの一種である.
正解 : (5)