【解法の要点】
様々な症候とその症候を来しうる疾患について対応させて覚えておこう.文字だけでは覚えにくいため,わかりにくい用語は可能なら実際の動作を確認しておこう.
【解説】
✕(1) Alzheimer型認知症では,妄想,作話,徘徊がみられる.パーキンソニズムを来す疾患として,まずLewy小体型認知症を覚える.それ以外の変性疾患に進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,多系統萎縮症,非変性疾患に薬剤性パーキンソニズム,脳血管性パーキンソニズムなどがある.
◯(2) 血管性認知症では情動失禁がみられる.他に,巣症状(失語,失行,失認など脳の局所性病変によって起こる機能障害)や,階段状に認知障害が進行することが特徴である.
✕(3) 進行性核上性麻痺では垂直性核上性注視麻痺,転倒,頸部後屈,パーキンソニズムが特徴である.他人の手徴候とは,左手が本人の意志とは関係なく他人の手のように勝手に動く現象である.責任病変は脳梁前部と右前頭葉内側部であり,大脳皮質基底核変性症や脳梗塞などで出現する.
✕(4) 大脳皮質基底核変性症は,大脳皮質と基底核が萎縮・変性し,他人の手徴候,肢節運動失行,パーキンソニズム,錐体外路症状,失行,認知症など多彩な症状を呈する.幻視はLewy小体型認知症などでみられる.
✕(5) Lewy小体型認知症の特徴的な症状には,幻視,パーキンソニズム,睡眠障害,起立性低血圧がある.アテトーゼは,四肢末梢のゆっくりした,不規則な,くねるような運動であり,脳性麻痺や代謝異常などでみられる.
正解 : (2)
【解法の要点】
認知症患者に対する治療について,様々な治療法があるため,それぞれの治療の特徴を覚えておこう.この設問に対しては,認知症の治療法を知っていれば解答できるが,神経症性障害の治療を押さえておけば,消去法で解くことも可能である.
【解説】
◯(1) 音楽療法は,音楽のもつ様々な特性を,心身の機能の回復に用いる方法をいう.この治療法は,様々な精神疾患に用いられているが,近年は認知症患者の心身の機能の維持や交流促進のために使われている.
✕(2) 内観療法は,自分が身近な人からしてもらったことや,迷惑をかけたことなどを繰り返し想起して自己洞察力を深める方法である.神経症性障害,非行に適応がある.
✕(3) 森田療法は,目的・行動本意の作業を繰り返すことにより,症状を受け入れながら生活できるようにすること.神経症性障害に適応がある.
✕(4) 精神分析療法は,自由連想法により無意識のうちに抑圧されていた葛藤を意識化させ,洞察し解決に向かわせる.神経症性障害に適応がある.
◯(5) リアリティオリエンテーションは,人,日時,場所などの現実検討の基本となる情報,例えば,「味噌汁を嗅がせて今が朝であることを知る」ことなどを繰り返して,見当識障害の改善に用いる.
正解 : (1),(5)
【解法の要点】
多発性硬化症は,脳・脊髄に多発するため症状が一定しないことから,疫学的内容が問われやすい.また特定疾患のため,疫学情報が集まりやすい.
【解説】
◯(1) 15~50歳の女性に多い.
✕(2) 入浴や運動,発熱などによって体温が上がると,一時的に症状が悪化するUhthoff徴候がある.
✕(3) 高緯度地域に多い.熱帯地方よりも寒冷地方に多いとされる.
✕(4) Phalenテストは,手根管症候群による正中神経領域の麻痺の評価法である.
✕(5) 多発性硬化症の原因は不明であるが,自己免疫的な機序が発症に関わるとされる.
正解 : (1)
【解法の要点】
Parkinson病は中脳黒質の変性疾患で,四大徴候の①筋強剛,②静止時振戦,③寡動(無動),④姿勢保持反射障害は有名であり頻出事項である.
【解説】
✕(1) Parkinson病は中脳黒質の変性により線条体のドパミンが不足する進行性の神経変性疾患である.
✕(2) 再発と寛解の繰り返しが特徴的なのは多発性硬化症である.
◯(3) 孤発性症例が家族性症例より多い.
✕(4) 50~70歳代での発症が最多である.
✕(5) 我が国において,Parkinson病の患者数は人口10万人当たり100~150人と推定されている.一方,Alzheimer病の患者数は200万人とされており圧倒的に多い.
正解 : (3)
【解法の要点】
特徴的な歩行障害についての問題である.歩行障害は中枢神経,末梢神経,筋,骨,いずれの障害でも起こりうる.
【解説】
✕(1) 鶏歩は総腓骨神経の障害などから前脛骨筋の筋力低下や麻痺による足関節の背屈障害が引き起こされることにより起こる.
✕(2) 脊髄後索の障害などから,深部感覚障害で失調性歩行となる場合に,眼による補正でふらつきを安定させるために足下を見ながら両足を開いて踵を打ちながら歩く踵打歩行を呈することがある.本ではそれを解答させたかったと考えられる.
✕(3) 動揺性歩行は,多発性筋炎などで,肢帯筋の障害により起こる.
◯(4) 小刻み歩行は,主にParkinson病などで,錐体外路障害により起こる(Parkinson歩行).あるいは,加齢により歩行機能が全体的に低下することに起因する.
✕(5) Trendelenburg歩行は中殿筋の筋力低下で,骨盤の側方への安定性が低下することにより起こる.
正解 : (4)