【解法の要点】
Duchenne型筋ジストロフィーの呼吸障害は,拘束性換気障害である.
【解説】
✕(1) 呼吸筋低下により有効な咳ができなくなるので,咳介助が必要となる.
✕(2) 口すぼめ呼吸は閉塞性換気障害で有効である.本疾患では拘束性換気障害を生じるので,口すぼめ呼吸は有効ではない.舌咽頭呼吸法(Glossopharyngeal Breathing:GPB)が有効である.
✕(3) 側弯症が高度になると,その進行に伴い気管や気管支などの気道の狭窄が起こり,呼吸機能は低下する.
◯(4) 肺胞低換気状態となり,PaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)は上昇する.
✕(5) 呼吸不全は20歳頃より生じる.
正解 : (4)
【解法の要点】
フロッピーインファントであるか,生後間もなく発症する.多小脳回(小さくて均等ではない脳回(脳のしわ)が多数みられる)など脳皮質の奇形と,重度の精神発達遅滞(知的障害)やてんかんを伴う.本症はDuchenne型に次いで頻度が高い.
【解説】
✕(1) 常染色体劣性遺伝の形式をとるため,男児のみということはない.
✕(2) 生下時または生後間もなく発症する.
✕(3) 脳皮質の奇形に伴う精神遅滞が著しい.
◯(4) 解法の要点 参照.有病率は10万人に3人程度である.
✕(5) 本症の多くは,座ることはできても歩行はできない.
正解 : (4)
【解法の要点】
Duchenne型筋ジストロフィーは,X染色体上のジストロフィン遺伝子の欠損がみられる.ジストロフィン蛋白は筋細胞膜の保持・強化をしていると考えられている.
【解説】
◯(1) 筋萎縮は,典型的には下肢近位筋より始まり,次に上肢近位筋,そのあと上下肢の遠位筋へと進行していく.「転びやすい」「走れない」といった訴えが最初にみられやすい.
✕(2) 発症は3歳頃なので出生時の筋緊張低下(floppy infant)は来さない.
✕(3) 10歳頃に歩行不能となる.
✕(4) X連鎖遺伝であり,男性にのみ発症すると考えられやすいが,保因者の女性であっても高CK血症など何らかの症状が現れることが多い.
✕(5) ミオトニアとは,骨格筋を収縮させた後,刺激がなくなれば,正常な筋は即座に弛緩するが,ここで筋の収縮(筋強直)が一定時間続くこと.筋強直性ジストロフィーに特徴的である.
正解 : (1)
【解法の要点】
筋強直性ジストロフィーは,成人では最も多いタイプの筋ジストロフィーである.
【解説】
✕(1) 筋疾患では,一般に痙縮は認めない.痙縮は上位運動ニューロン障害で起こり,神経の障害によるものである.
◯(2) 筋原性筋萎縮を来すが遠位筋優位の筋力低下がおこり,下垂足がみられ鶏歩となる.
◯(3) 顔面筋の萎縮により,斧状(様)顔貌(hatchet face)がみられる.
✕(4) 手指筋のミオトニア,舌の叩打時のミオトニア(クローバー状舌)がみられる.ジストニアは錐体外路徴候なので中枢神経疾患で見られる.
✕(5) 有痛性(強直性)けいれんは,多発性硬化症の脊髄障害の回復期にみられる.
正解 : (2),(3)
【解法の要点】
Duchenne型筋ジストロフィーは進行性の筋力低下と筋萎縮をみる遺伝性疾患であり,新生男児では3,000〜3,500人に1人の割合で発症する.患者個々の状態に合わせた段階的なリハビリテーションが重要である.自立歩行が可能な初期の患者は,廃用性筋萎縮と関節拘縮防止のために,筋力の維持とQOL向上を目標とする.自立歩行が不能となった患者は,四つ這いまたはいざり動作などで廃用性筋萎縮防止を目指す.装具歩行や車椅子訓練も考慮する.症状が進行した場合は,呼吸管理とともに残された機能を活用してのコミュニケーションやQOLの維持に取り組む.
【解説】
◯(1) ステージ2(階段昇降に手すりを必要とする)は,自立歩行が可能な初期の患者であり,廃用性筋萎縮と関節拘縮防止(尖足進行防止)のために,下腿三頭筋のストレッチは有効である.
✕(2) ステージ3(椅子から起立可能)は,自立歩行可能なので長下肢装具を使用する段階ではない.
✕(3) ステージ4(歩行可能)は,まだ呼吸機能障害までは起こしていないので,非侵襲的陽圧換気療法は必要ない.
✕(4) ステージ5(起立歩行不能,四つ這い可能)では起立歩行は不能であり,車椅子訓練を行う.また四つ這いで廃用性筋萎縮を防ぐ.この段階では中殿筋の筋力低下は顕著で,また仮性肥大を呈することもあり,最大抵抗運動は実効的な訓練にならない.
◯(5) ステージ6(四つ這い不能,ずり這い可能)は四肢変形に加えて,脊柱・胸郭変形が増大し,呼吸機能障害により肺機能が低下してくるので,脊柱変形の予防は重要である.
正解 : (1),(5)