【解法の要点】
統合失調症の全般的知識を問う問題である.他の疾患と同様,早期発見・早期治療が予後に良い結果をもたらすことを覚えておく.
【解説】
✕(1) 性差は特にない.
✕(2) 統合失調症の病型のひとつに,急性発症する「緊張型」があるが,思春期に発症して徐々に進行していく「破瓜型」や,中年期に発症する「妄想型」に比べ,頻度は低い.
✕(3) 発症年齢が低い統合失調症は予後が悪い.早期発症では脳の構造異常がみられる例が多く,陰性症状が目立つものが多い.神経学的症状や脳の構造異常が併存する場合は予後が悪い.
✕(4) 発症のピークは男性で15~24歳,女性では25~34歳と若年者に多くみられる精神疾患である.
◯(5) EE(Expressed Emotion)とは,感情表出のことであり,家族が患者に対して否定的感情を表すことであり,感情表出の多い(高EE)家族のもとにいる患者は再発率が高い.
正解 : (5)
【解法の要点】
思考の異常には,思考形式と思考内容の異常がある.本問では統合失調症に特徴的な思考形式の異常について問われている.このように,問題の趣旨を明確化することが過去問を演習するうえで重要である.
【解説】
✕(1) 思考制止であり,うつ病でみられる.
◯(2) 思考途絶であり,統合失調症でみられる.
✕(3) 迂遠である.認知症やてんかんでみられる.
✕(4) 観念の間に論理的な関連がない状態を連合弛緩というが,それに意識の混濁を伴う場合を思考散乱という.統合失調症ではなく,症状精神病(脳の器質性障害や身体疾患を原因とする精神病)にみられる.
✕(5) 観念奔逸とよばれる思考形式の異常である.躁病でみられる.
正解 : (2)
【解法の要点】
統合失調症に加えて,昏迷,カタレプシーといった所見から考える.統合失調症の症状については,よく整理しておくこと.
【解説】
✕(1) アカシジアは,抗精神病薬による錐体外路症状として起こる.アカシジアは,ムズムズした感覚が下肢を中心に起こり,じっと座っていることができなくなる症状をいい,鎮座不能症ともいう.抗精神病薬の投与初期に起こりやすい.薬剤性パーキンソニズムの一種である.
✕(2) 悪性症候群は,抗精神病薬での治療中に,薬の急な増量や,急な中止の際に発症することがあり,高熱,発汗,血圧上昇,嚥下困難,流涎,筋強剛などが急激に出現して,処置をしないと死亡するおそれのある重篤な副作用である.
✕(3) ジストニアとは,筋緊張の異常亢進による体幹・頸部の捻転,胸郭の傾斜,肘関節過伸展,手指の過屈曲,眼球の上転,舌の突出,頸を曲げてしまう,口角がずれる,ミオクロニー様運動などがみられる.錐体外路症状の一種である.抗精神病薬の投与初期に起こりやすいので,急性ジストニアという.
◯(4) カタレプシーである.
✕(5) 薬剤性パーキンソニズムは,抗精神病薬投与などによってパーキンソン病様症状が起こることをいう.
正解 : (4)
【解法の要点】
EE(Expressed Emotion)とは感情表出のことであり,患者と接するときに家族に生じた主に否定的な感情をありのままに表すことをいう.感情表出の強い(=高EE)家族のもとでは患者の症状は悪化しやすいとされ,家族心理教育では感情表出を抑えるような指導教育が行われる.
【解説】
✕(1) 自律訓練法は,自己暗示をかけることによって全身の緊張を緩和し,心身の状態を自分でコントロールできるようにする一種の自己催眠法である.神経症性障害などに適応がある.
✕(2) 認知行動療法とは,歪んだ認知(ものの見方)を自覚させて行動を変化させるよう働きかけるもので,うつ病の否定的な認知の改善や強迫性障害などに用いる.
✕(3) 生活技能訓練は,対人コミュニケーション能力や生活技能を向上させ,地域生活への適応を高めることを目的として集団で行うものであり,主に慢性期の統合失調症の患者が対象となる.
◯(4) 家族のEEが高いと,日常生活での情緒的な巻き込まれが多くなり患者の再発率が高くなることが知られている.家族心理教育は,家族を対象とした心理教育であり,患者に対する家族の感情表出を低下させるように教育することが再発率の低下につながる.
✕(5) レクリエーションは,スポーツ,ゲーム,芸術活動,野外活動などにより,緊張の開放や健康維持を図るものである.
正解 : (4)
【解法の要点】
統合失調症は多彩で特徴的な症状がみられ,1,000人に数人という高い確率でみられる精神疾患であり,内気・小心・敏感だが,冷淡・鈍感な気質もある人(分裂気質)に多い.破瓜型(解体型),緊張型,妄想型,および鑑別不能型に分けられる.
【解説】
✕(1) 性差は特にない.
◯(2) 緊張型は20歳前後の発症が多く,急性に発症し緊張病性興奮や緊張病性昏迷(拒絶,無動,無言)となるが,回復も早く,慢性の経過はとらない.予後は良いとされている.
✕(3) 病前性格は分裂気質が多い.循環気質は,気分障害の病前性格である.
✕(4) 統合失調症患者は,急性期あるいは再燃期の希死念慮の増悪,慢性期の健康への無関心などのため,健常者よりも死亡率は高い.
✕(5) 妄想型は30歳前後に発症することが多く,破瓜型は思春期発症が多い.
正解 : (2)
【解法の要点】
統合失調症は現在も原因不明な疾患であり,多くの研究が様々な視点より行われている.本問は統合失調症の成因を問うという極めてマニアックな出題であるが,他の疾患の有名な仮説が入っているので,容易に正解できよう.
【解説】
◯(1) 双子の場合に双方が統合失調症を発症するリスクは,一卵性双生児の方が二卵性双生児よりも高いという結果などから,遺伝素因があるといわれている.
◯(2) 患者の大脳辺縁系の神経伝達物質であるドパミンの活動性の亢進(陽性症状に関係)と,前頭葉のドパミンの活動性低下(陰性症状,認知機能障害に関係)などの,ドパミン仮説がある.
✕(3) アミロイド仮説とは,Alzheimer型認知症では,アミロイドという蛋白質が蓄積することが原因であるとする仮説である.
◯(4) 神経発達障害仮説は,統合失調症の患者に,海馬などの部位で神経の発達が障害された痕跡があることなどから,神経発達における障害が疾患発症の準備段階(脆弱性)の原因とする仮説である.
◯(5) 脆弱性–ストレスモデルは,選択肢4の神経発達障害仮説による脆弱性の上に,様々なストレスを受けて発症するという仮説である."
正解 : (3)