【解法の要点】
うつ病の治療について全般的ではあるが基本的な問いである.しっかり押さえておく必要がある.
【解説】
✕(1) 系統的脱感作法は,ウォルピにより創始された古典的条件付けに基づく行動療法である.徐々に不安を感じる刺激を大きくして,刺激に慣れさせる方法をとる.神経症性障害,摂食障害などに適応がある.うつ病に対しては認知(行動)療法を行う.
✕(2) うつ病の治療において,病気への理解や服薬管理,自殺防止の指導,心理教育は家族を含めて行う.
◯(3) 躁病相の有無は,うつ病と双極性障害のうつ病相を鑑別するのに必要である.両者は薬物療法が異なるため鑑別は重要である.
✕(4) うつ病は修正型電気けいれん療法の適応疾患である.特に,不安焦燥が大きい場合,自殺企図の危険性の高い場合,強い制止を伴う場合などは,急速な症状の改善を期待して本治療法が好まれる.
✕(5) 抗うつ薬が第一選択である.現在は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの副作用の少ないものが用いられている.なお,ベンゾジアゼピン系薬物は睡眠薬あるいは抗不安薬として用いられる.
正解 : (3)
【解法の要点】
思考の異常は,思考内容の異常(妄想など)と思考形式(思考過程)の異常に分けられるが,本問では思考形式の異常が問われている.代表的な症状であり,それがあらわれる疾患とともに覚えておくこと.
【解説】
✕(1) 迂遠とは,瑣末なことにまでこだわるため,要領よく思考目標に達せず,まわりくどいことであり,老化や脳器質障害(てんかんなど)でみられる.
✕(2) 観念奔逸とは,次々に考えが浮かび,思いつきで思考の方向がそれてしまうため,思考が全体としてまとまらない状態になることをいい,躁状態でみられる.
◯(3) 思考制止とは,思考が不活発になり,なかなか考えが浮かばず停滞してしまう状態であり,うつ状態でみられる.
✕(4) 思考途絶とは,思考が突然停止することであり,統合失調症でみられる.
✕(5) 滅裂思考とは,思考を構成する観念の間に意味の結びつきが乏しくなることであり,統合失調症でみられる.
正解 : (3)
【解法の要点】
うつ病の復職プログラムとは,気分障害などの精神疾患を原因として休職している者に対し,職場復帰と再休職の予防を目的としたリハビリテーションプログラムであり,近年,精神疾患を原因とする休職者が増えており,この役割は大きい.
【解説】
✕(1) うつ病の復職プログラムに認知行動療法があり,より合理的な考え方ができるように認知の歪みを修正することが目指されている.
✕(2) 服薬の重要性についての心理教育は行うが,服薬自己管理の練習は復職支援プログラムに含まれない.病状がある程度安定し安全に通所できることが参加の条件である.
✕(3) 休職前のキャリアを見直し,スムーズに復職できるようなキャリアを検討する.
◯(4) コミュニケーション能力は,仕事をしていく上での重要なスキルであるので,コミュニケーション能力の改善は復職支援として重要である.
✕(5) 復職をスムーズに行う上で,必要であれば職場配置や労働条件などを適切に設定するために職場との連絡調整を行う.
正解 : (4)
【解法の要点】
成人期中期は40〜65歳に相当し,働き盛りの時期であり,会社での責任も重くなる.真面目で責任感が強く,仕事熱心な人は注意が必要である.
【解説】
◯(1)うつ病は,会社不相応,過重労働などで20代から30代がかかりやすい一方で,上司と部下との板挟みで心理的負担を感じやすい40代から60代にかけての中高年層(成人期中期)にも発症のピークがある.
✕(2)統合失調症は1,000人に数人というほどの発症率で,発症のピークは男性では15~24歳,女性では25~34歳と若年者に多くみられる精神疾患である.
✕(3)血管性認知症は,脳血管障害,高血圧,糖尿病,脂質代謝異常,心房細胞などの既往がある場合に好発するので,高齢者に多い.
✕(4)社会不安障害は,人前で話すことや同世代のグループでの雑談などが苦手で,その場に避けるようになる障害で,思春期から青年期(10代半ばから20代前半)にかけて発症することが多い.
✕(5)神経性無食欲症は,思春期~青年期の若い女性に発症しやすい.
正解 : (1)
【解法の要点】
うつ病の患者への基本的な対応を問うており,設問の内容はしっかりと覚えておくこと.また励ましは禁忌である.
【解説】
◯(1) 急性期には,休息が最も優先すべき治療法である.
◯(2) うつ病の患者は自殺企図が多いため,つらくても自殺しないことを約束させる.自殺を話題にすることで自殺を考えてしまうのではないかと思うかもしれないが,実際にはこのように約束することで,自殺をしたくなっても思いとどまらせる効果がある.
◯(3) 重大な決断(退職,離婚など)は先延ばしにさせるのが原則である.
◯(4) 抗うつ薬には吐き気や眠気などの副作用があるので,それを説明し,自己中断しないで次の診察時に報告するようにあらかじめ伝えておく.
✕(5) 患者にうつ病であることを伝えることで,自身の症状に対しての理解が深まり,治療者とともに病気に立ち向かっていこうとする意欲が湧く.
正解 : (5)