【解法の要点】
ASIAは脊髄損傷の神経学的および機能的分類である.髄節とkey muscleの関係について問うている.
【解説】
◯(1) C5のkey muscleは肘関節屈筋群である.
✕(2) C6のkey muscleは手関節背屈筋群である.
✕(3) C7のkey muscleは肘関節伸筋群である.
✕(4) L2のkey muscleは股関節屈曲筋群である.
✕(5) L3のkey muscleは膝関節伸展筋群である.
正解 : (1)
【解法の要点】
ASIAの評価法は,脊髄損傷の神経学的および機能的分類である.脊髄の髄節とその感覚支配領域検査ポイントを理解する.
【解説】
✕(1) C5は腕橈骨筋起始(上腕骨外側顆)である.鎖骨上窩はC3である.
◯(2) T4は乳頭高位である.
✕(3) T12は鼠径靭帯の中点である.臍はT10である.
✕(4) L3は大腿骨内顆である.鼠径靭帯はT12である.
✕(5) S4~5は肛門皮膚粘膜移行部である.膝窩はS2である.
正解 : (2)
【解法の要点】
筋の支配神経や解剖に応じた主要徴候はしっかり覚えておく.また,脊髄後根は求心性線維(感覚線維)で構成され,脊髄後角細胞とシナプスを形成する.運動線維は脊髄前角でシナプスを形成し脊髄前根を経て,各筋を支配する.
【解説】
✕(1) 下垂手は橈骨神経麻痺によって起こる.橈骨神経はC5~8支配であるが,下垂手は橈骨神経高位部(橈骨神経溝,腋窩部)の障害によって起こり,第7頸髄後根のみの障害によっては起こらない.
✕(2) Horner徴候は,瞳孔を支配する交感神経の障害により①縮瞳,②軽微な眼瞼下垂,③眼裂狭小,④顔面の発汗低下などがみられる.交感神経遠心路(胸髄〜腰髄レベルの前根)の障害によって生じる.
✕(3) 腕橈骨筋の支配神経はC5~6,主にC6である.
◯(4) 上腕三頭筋腱反射の中枢はC6~8,主にC7である.C7の後根が障害されると,筋紡錘からの求心性刺激の入力が障害され,脊髄前角細胞への情報が伝達されず,筋収縮が減弱する,すなわち腱反射が減弱する.
✕(5) 上腕二頭筋の支配神経はC5~6,主にC5である.また,線維束性収縮は下位運動ニューロンの障害によって起こる.
正解 : (4)
【解法の要点】
脊髄損傷のショック期つまり急性期にみられる症状と,回復期にみられる症状とを区別できるかを問う問題である.脊髄ショックは重度の脊髄損傷受傷後1日から3週程度まで出現し,損傷高位以下の運動・感覚機能および脊髄反射がすべて消失し,自律神経機能も停止する.脊髄ショック期の症状は,①肛門括約筋反射の消失,②膀胱・尿管の弛緩による完全尿閉,③弛緩性麻痺,④深部腱反射・表在反射の消失などである.
【解説】
✕(1) 温痛覚解離とは解離性感覚障害ともいい,温痛覚のみが障害されることをいう.温痛覚の伝導路である外側脊髄視床路と深部覚・触覚が伝導される後索では感覚の伝導路が異なるため,脊髄が部分的に損傷した場合に生じるBrown-Sequard症候群や前脊髄動脈症候群などで引き起こされる症状である.
✕(2) 脊髄ショック期には脊髄反射が消失するため,弛緩性麻痺になる.
◯(3) 脊髄ショック期には肛門括約筋の反射が消失するだけではなく,膀胱も弛緩し排尿が困難となる.
✕(4) 脊髄ショック期には深部腱反射・表在反射が消失する.
✕(5) 脊髄ショック期には排尿反射が消失する.
正解 : (3)
【解法の要点】
頸髄損傷による完全麻痺での残存機能に関する問題である.専門問題でも頻出される問題であり,確実に得点に結びつけたい.C6,7の機能残存レベルを中心に理解しておくとよいだろう.
【解説】
✕(1) C4機能残存レベルの食事は全介助となる.万能カフは手掌に装着し,スプーン,フォークやボールペンなどを固定して把持機能を補う自助具であるが,上肢が使えないレベルでは機能しない.
✕(2) 前方移乗,トランスファーボードを使う側方移乗は,C6レベルで可能となる.
✕(3) C6機能残存レベルでは手関節の背屈は可能となるが,手指の動きは得られない.握り動作には,浅指屈筋・深指屈筋などC8の機能残存が必要となる.
◯(4) C7機能残存レベルでは更衣が可能である.
✕(5) C8機能残存レベルでは体幹の随意性は得られず,長下肢装具での歩行はできない.T12では両長下肢装具と両松葉杖を使えば,非実用的であるが大振り歩行が可能である.
正解 : (4)
【解法の要点】
中心性脊髄損傷は,転倒などにより外力が加わり,脊髄断面の中心に近い脊髄灰白質が主に障害されたものである.高齢者において,脊椎の変形あるいは後縦=靱帯骨化症などを合併して脊柱管狭窄を来している場合に中心性脊髄損傷が発生しやすい.交通事故などの脊髄損傷に比べ,機能予後は良いが,下肢より上肢の運動障害が顕著であり,上肢の障害は残存することが多い.
【解説】
◯(1) 転倒による受傷が多く,高齢者に多い.
✕(2) 交通事故などの脊髄損傷に比べ外力が比較的小さいことや,脊柱管狭窄が合併していることからの脊髄損傷であることが多く,骨傷は比較的少ない.
✕(3) 頸椎が過伸展されたときに起こりやすい.
✕(4) 障害レベル以下で感覚機能や運動機能が障害される一方で,肛門知覚・運動機能(仙髄領域の機能)は比較的保たれる.
◯(5) 下肢に比べて上肢の錐体路の方が脊髄の中心近くを通るため,上肢の障害が顕著である.
正解 : (1),(5)