QB2024PT問題_運動学習_演習コース
57A12
図の前腕と手を支える肘関節屈筋の力Fはどれか.ただし,Cos45°=0.71とする.
- (1)約20kgw
- (2)約25kgw
- (3)約30kgw
- (4)約35kgw
- (5)約40kgw
【解法の要点】
支点を中心に重力で肘が伸展しようとする力と,筋力で肘を屈曲させようとする力が同じになればよい.Fの垂直方向の力はF・cos45°で求める.
4(cm)× F・cos45°= 25(cm)×4(kgw)
4×0.71F = 100
F = 35.21
よって約35kgwとなる.
【解説】
✕(1)~(3),(5)
◯(4) 解法の要点 参照.
正解 : (4)
57A22歩行導入初期における運動学習の方法として適切なのはどれか.2つ選べ.
- (1)ハンドリングを行う.
- (2)休憩を入れずに練習する.
- (3)踵接地の練習を繰り返し行う.
- (4)後ろ歩きや横歩きの練習を取り入れる.
- (5)フィードバックを与える頻度は少なくする.
【解法の要点】
運動学習は巧みな運動課題遂行能力を比較的永続する変化に導くような実践あるいは経験に関係する一連の過程である.運動技能学習の段階は,初期相(認知相)→中間相(連合相)→最終相(自動相)へと進んでいく.本文に示されている「歩行導入初期」は初期相(認知相)にあたる.何を行うかを理解し,技能獲得のための戦略を立てる時期である.セラピストは患者に対して,理想的なパフォーマンスを提示し,様々な手段を用いてより良い運動方法を試す必要がある.運動技能学習の段階を理解するとともに,全体法・部分法,集中法・分散法,学習の転移,フィードバックなど,運動学習に関連する知識を整理しておこう.
【解説】
◯(1) ハンドリングとは,運動者の動きを徒手的に誘導する援助技術のことであり,練習中に与えられる.ハンドリングによって理想的な運動を直接的に誘導でき,歩行に必要な情報を認知できる.
✕(2) 初期相は,認知段階として歩行を獲得するためにどのような運動が必要であるのか,どのようにしたらよいのかを知る時期である.休憩を入れずに練習する集中学習よりは,頻繁に休憩を入れる分散学習のほうが適切である.
◯(3) 一連の動作の中の一部分を繰り返す練習法を部分法という.部分法は,重要な部分を取り出して練習できるという利点があり,初期相においては,患者の理解を促すのに有効である.
✕(4) 後ろ歩きや横歩きは,歩行に正の転移をもたらす(歩行能力を促進する)が,初期相に行うのは難易度が高く時期尚早である.バリエーションの異なるトレーニングは自動化の段階である最終相に取り入れ,パフォーマンスの向上を図る.
✕(5) フィードバックは,学習段階の進行とともに徐々に減らしていく.初期相では適切なフィードバックをし,理解を促す.
正解 : (1),(3)
56A12図に示す方法で股関節に30Nmの外転トルクを生じさせる等尺性筋力増強運動を行った.作用点Bの力として正しいのはどれか.
- (1)5.1kgf
- (2)10.2kgf
- (3)15.3kgf
- (4)20.4kgf
- (5)25.5kgf
【解法の要点】
ハンドヘルドダイナモメーターによる筋力測定に関する問題である.股関節を中心としたモーメント(トルク)は,距離×力となる.重力加速度は約9.8m/sec2であり,1kgfは約9.8Nにあたる.
【解説】
✕(1),(3)~(5)
◯(2) 作用点Bにかかる力をxとすると,30Nm=x×0.3mとなり,
xは100Nとわかる.これをkgfに変換すると100÷9.8≒10.2(kgf)となる.
正解 : (2)
56A25運動学習について正しいのはどれか.
- (1)固有感覚情報は影響しない.
- (2)言語学習よりも保持期間が短い.
- (3)学習課題の類似性に影響を受ける.
- (4)前の学習が後の学習を妨害することを正の転移という.
- (5)課題の種類にかかわらず覚醒レベルが高いと学習効果が高くなる.
【解法の要点】
運動学習とは,訓練や練習を通して獲得される運動行動の変化で,状況に適した協調性が改善していく過程である.
【解説】
✕(1) 運動学習は感覚運動学習ともよばれ,運動中や運動の帰結から得られる固有感覚情報が必要である.
✕(2) 言語学習における記憶の消失は大きく,一方,運動学習の結果は,比較的永続する能力の変化をもたらす.
◯(3) 運動学習は,学習課題の類似性があるほど転移の影響は大きくなる.また教示情報とフィードバック情報の類似性が高いと自己の修正がしやすい.フィギュアスケートの選手がクラシックバレエを練習に取り入れたりするのはこのためである.
✕(4) 前の学習が後の学習を促進することを正の転移という.前の学習が後の学習を妨害することは負の転移である.
✕(5) 課題の内容によるが,一般に覚醒レベルとパフォーマンスの関係は逆U字曲線に表され,パフォーマンスが最もよくなる覚醒レベルの「至適覚醒水準」が存在するといわれている.すなわち覚醒レベルが上昇するとパフォーマンスの向上をもたらすが,覚醒レベルが高すぎるとパフォーマンスは低下する.
正解 : (3)
50P19てこを図に示す.Aを支点とした棒のB点から60kg重の錘を糸で垂らした.棒を水平に支えるためにC点にかかる力F(N)はどれか.ただし,1Nを100g重とし,棒と糸の質量は無視できるものとする.
- (1)60N
- (2)80N
- (3)90N
- (4)100N
- (5)120N
【解法の要点】
てこの原理に基づいてモーメントを計算する問題である.
【解説】
✕(1)〜(3),(5)
◯(4) 100g重が1Nなので,60kg重は600Nである.AB間の距離が3cm,AC間の距離が3+15=18cmなので,釣り合いの式は,600(N)×3(cm)= F(N)×18(cm)となる.
よって,F(N)=600×3÷18=100(N)となる.
正解 : (4)
51A46新しい運動を学習するときに患者の手続き記憶に変換される段階はどれか.
- (1)患者に理想とする運動パターンを言葉で教示しているとき.
- (2)患者に運動課題を提示しつつ説明しているとき.
- (3)患者が運動を試行錯誤しているとき.
- (4)患者が正しい運動パターンを反復練習しているとき.
- (5)患者が実際の生活環境で実践しているとき.
【解法の要点】
手続き記憶とは代表的な非陳述記憶の一つである.手続き記憶は,自転車の乗り方などに代表される,いわば「体で覚える」記憶である.手続き記憶に変換される段階とは,反復練習による技能の習熟が相当する.
【解説】
✕(1),(2) 教示や提示と説明の段階では本人が動作をしておらず,手続き記憶には変換されていない.
✕(3) 試行錯誤の段階では本人は動作を始めているが,不慣れであり,また誤った動作も含んでいるため,手続き記憶にはまだ変換されていない.
◯(4) 解法の要点 参照.
✕(5) 実際に実践の段階ではすでに変換されている.
正解 : (4)
48A2020歳の男性.膝関節伸展運動を等速性に行った.角速度30°/sで設定したとき,最大トルク値は150Nmを示した.この時の最大パワー(W)はどれか.ただし,πは180°とする.
- (1)5π
- (2)20π
- (3)25π
- (4)30π
- (5)35π
【解法の要点】
今までは,関節のモーメント(トルク)を求める出題がされていたが,一歩進んで,トルク・モーメントから仕事の計算となった.πは180°,最大パワーなど,国試で見慣れない言葉が出て戸惑ったかもしれない.
【解説】
✕(1),(2),(4),(5)
◯(3) 角速度をω,最大トルク値をFとすると,以下のようになる.ω=30°/s=π/6 /sである.
パワー(W)は,仕事率のことで,仕事率は,トルク×角速度であるから
W=F×ω
=150Nm×π/6/s
=25πNm/s =25πJ/s
正解 : (3)
50A48運動学習について正しいのはどれか.
- (1)野球のスウィングは連続的スキルに分類できる.
- (2)覚醒レベルとパフォーマンスの向上との関係はない.
- (3)運動技能の向上に伴い運動に対する注意は増加する.
- (4)前の学習が後の学習を促進することを正の保持という.
- (5)学習を促すために結果の知識(KR)の相対頻度を低下させる.
【解法の要点】
運動学習に対する理解を問う問題である.運動学習とは,訓練や練習を通して獲得される運動行動の変化で,状況に適した協調性が改善していく過程である.
【解説】
✕(1) 野球のスウィングは,1回行うのに明確な始まりと終わりがある不連続的(離散的)スキル(クローズドスキル)である.連続的スキル(オープンスキル)は明らかな始まりと終わりがないものをいい,自動車の運転などが例である.
✕(2) 課題の内容によるが,一般に覚醒度とパフォーマンスの関係は逆U字曲線に表され,覚醒度が上昇するとパフォーマンスの向上をもたらすが,覚醒度が高すぎるとパフォーマンスは低下する.
✕(3) 注意の集中は,運動学習が進むにつれて徐々に必要なくなってくる.
✕(4) 以前行った学習が後に行う学習に影響を与えることを,学習の転移という.前の学習が後の学習を促進することを正の転移(例:ゆっくりした歩行練習後に速い歩行が改善した),前の学習が後の学習を後退させることを負の転移という.
◯(5) 頻回に与えられるフィードバックは,運動反応の過剰修正を引き起こし,学習者のフィードバックへの依存を招くため,学習が形成されにくくなる.学習がある程度進むと,自己の感覚情報を利用し,結果の知識(KR)がなくても自己修正できるようになる.
正解 : (5)
48P20患者が床面から20㎝鉛直挙上した位置で下肢を保持している状態を図に示す.Aの滑車は上下に移動するが,Bの滑車はフレームに固定され,滑車の位置は動かない.なお,保持する下肢の質量は8kgで,滑車と紐の重量および摩擦力は考えなくてよい.床面から下肢を挙上するために,上肢で引き下げた紐の長さと保持に必要な力の組合せで正しいのはどれか.
- (1)10㎝〓〓〓8kg重
- (2)20㎝〓〓〓4kg重
- (3)20㎝〓〓〓8kg重
- (4)40㎝〓〓〓4kg重
- (5)40㎝〓〓〓8kg重
【解法の要点】
Aのように上下移動可能な滑車を動滑車,Bのように固定されている滑車を定滑車という.定滑車では力の方向は変換されるが,物体を引く力も引く距離も滑車を使わない場合と変わらないため,本問ではA滑車について考慮すればよい.滑車や紐の重量を無視できる場合,動滑車を用いると引く力の2倍の重量を持ち上げることができる.しかし,A滑車ごと持ち上げるためには,A滑車の前後の紐を同じ長さだけ引き上げなければならない.つまり,A滑車自体を持ち上げるのに必要な長さの2倍の長さの紐を引かなくてはならない.以上のことから,持ち上げるのに必要な力は8kg重の半分の4kg重で済むが,引き下げる紐の長さは2倍の40cmを必要とする.
【解説】
✕(1)~(3),(5)
◯(4) 解法の要点 参照.
正解 : (4)
48A41
運動学習理論で練習の後に与えられるのはどれか.
- (1)言語教示
- (2)ガイダンス
- (3)結果の知識
- (4)ハンドリング
- (5)デモンストレーション
【解法の要点】
人は運動を学習する過程で,自らの動きの修正を試みる.この時に運動結果から得られる情報をフィードバックという.結果の知識は付加的フィードバックであり,運動それ自体というよりも運動反応の結果に関する情報である.通常は運動終了後に与えられる.運動それ自体に与えられる付加的フィードバックはパフォーマンスの知識という.
【解説】
✕(1) 言語教示は,練習の前に与えられる.
✕(2) ガイダンスとは指導のことである.練習前,または練習中に与えられる.
◯(3) 何らかの運動学習をした際,運動がうまくいったか否かのフィードバックがある.そして結果の知識(Knowledge of Results)を得る.
✕(4) ハンドリングとは,運動者の動きを徒手的に誘導する援助技術のことである.練習中に与えられる.
✕(5) デモンストレーションは,実物に即して示すことであり,練習前に与えられる.
正解 : (3)