【解法の要点】
外乱に対する姿勢制御に関する問題である.プラットフォーム台で立位姿勢を保持しているとき,プラットフォームが前後方向に動くと,膝関節はあまり動かず,足関節あるいは股関節の屈伸運動で応答する.そのとき,下腿三頭筋とハムストリングス,前脛骨筋と大腿四頭筋がそれぞれ共同筋となって活動する.プラットフォームが後方へ動くと,身体は前方に振れるため,それを戻すために主に腓腹筋・ハムストリングス・脊柱起立筋などが働く.前方へ動くと,身体は後方に振れるため,前脛骨筋・大腿四頭筋・腹筋群の順に活動が生じる.一般的には外乱が大きくなると股関節による運動で制御する.図において,外乱による角度変化に着目すると,股関節運動がほとんど起こらないことから,主に足関節の屈伸運動による姿勢制御であることがわかる.
【解説】
✕(1) 脊柱起立筋は筋③に該当する.腓腹筋,ハムストリングスに遅れて最後に活動が生じる.
✕(2) 前脛骨筋は筋⑤に該当する.前脛骨筋はプラットフォームを前方へと移動させたときに筋活動が起こる.
✕(3) ハムストリングスは筋②に該当する.腓腹筋に続き,腓腹筋の活動から20~30msec後にハムストリングスが活動を開始する.
◯(4) 筋①では,プラットフォームの後方移動が起きてから90~100msec後に筋活動が生じている.足関節の屈伸運動による姿勢制御の場合,共同筋活動は遠位筋から始まり近位筋に及ぶため,腓腹筋が最も早く筋活動を開始する.
✕(5) 腹直筋は筋④に該当する.腹直筋は,プラットフォームを前方へと移動させたときに筋活動が起こる.
正解 : (4)
【解法の要点】
膝関節は屈曲・伸展に伴って下腿の回旋運動が生じている.屈曲時には大腿に対して下腿は内旋し,伸展時には外旋を伴う.座位ではつま先はまっすぐでも,立位ではややつま先が開いていることから,膝伸展から屈曲すれば内旋すると判断したい.正座の姿勢では,膝関節は約150°の屈曲に加えて内旋もしているため,自然と踵は外側,つま先は内側を向く.
【解説】
✕(1) 屈曲時でも前十字靭帯はある程度緊張している.
✕(2) 内側側副靭帯は膝関節伸展で緊張,屈曲で弛緩する.
✕(3) 屈曲初期に脛骨は内旋する.
◯(4) 内側半月板は内側側副靭帯に結合しているため移動範囲が狭いが,外側半月板は外側側副靱帯と結合していないため,外側半月板の方が大きく移動する.
✕(5) 膝関節の屈伸運動は大腿骨の転がりとすべりの複合運動である.屈曲初期は転がり運動が生じ,その後にすべり運動が生じる.最終的にはすべり運動のみとなるが,変形性関節症などではすべり運動の方が主に制限されて可動域が狭くなる.すべりが先か転がりが先かわからなくなったら,変形性膝関節症を思い出してほしい.軟骨がすり減って,膝が曲がりにくくなるのだから,屈曲時で軟骨がなくてすべらなくなっている.転がりは軟骨がなくともできる.
正解 : (4)
【解法の要点】
立位時姿勢制御反応の足関節戦略について,前方への傾きの外乱で使用される筋を問われている.前方への傾きでは,背側にある脊柱起立筋やハムストリングス,腓腹筋が活動している.
【解説】
◯(1) 足関節を底屈させる筋である.前方への傾きの制御で活動する.
✕(2) 肩関節を屈曲・内転・内旋・水平屈曲(水平内転)させる筋である.
✕(3) 体幹を屈曲させる筋である.後方への傾きの制御で活動する.
✕(4) 足関節を背屈させる筋である.後方への傾きの制御で活動する.
✕(5) 膝関節を伸展させる筋である.後方への傾きの制御で活動する.
正解 : (1)
【解法の要点】
今まで共通問題で出題されることが多かった静止立位の問題である.体重心は第2仙椎前方,重心線は耳垂のやや後方,肩峰,大転子,膝関節前部(膝蓋骨後面),外果前方を通ることを覚えておくとよい.
【解説】
◯(1) 静止立位では体重心線は膝関節軸の前方を通る.
✕(2) 成人の体重心は床から身長の約55%の高さにある.
✕(3) 頭部の重心線は環軸関節の前方を通る.
◯(4) 小児よりも身長に対する重心位置が低い.
✕(5) 重心線が足関節の前方にあるため,重力のモーメントは背屈モーメントである.
正解 : (1),(4)
【解法の要点】
股関節を中心としたモーメント(トルク)が一番大きくなるのはどれか,とを置き換えられるかが問われている.股関節から下肢の重心位置までの垂直距離が長くなるものが一番,股関節伸展モーメント(トルク)が大きくなり,それに抗するように体幹屈筋群が働くこととなる.
【解説】
◯(5) D1<D2<D3<D4<D5となる.モーメントは重量×(垂直)距離のため,下肢重量は変わらず,重心線までの垂直距離が長い選択肢5が正解となる.
正解 : (5)