【解法の要点】
筋収縮には,等速性収縮がある.等尺性運動とは,筋が収縮して筋の張力が増しても筋全長に変化はなく,筋の起始・停止が一定の距離をキープしている状態である.効果的な筋力増強運動を行うために,収縮様式により負荷量や回数,頻度,収縮時間,方法を設定する.
【解説】
✕(1) 等尺性運動では,最大筋力の2/3以上の筋力で1日1回6秒間収縮させれば筋力増強効果が期待できる.
✕(2) Hettingerの研究によると,筋力維持には最大筋力の20~30%以上,筋力増強には最大筋力の40~50%以上の負荷が必要とされる.
✕(3) 目的としていない筋に代償運動が起きれば,目的とする筋のトレーニング効果は減少する.
✕(4) 等速性運動は,関節運動時の角速度が一定になるように調整された運動で,日常動作では生じにくいため等速性筋力評価装置(Biodex,Cybexなど)を必要とする.
◯(5) 等尺性収縮では毛細血管圧迫による血液遮断が起こり,血圧も上昇しやすい.
正解 : (5)
【解法の要点】
求心性収縮とは,筋の短縮に伴う筋収縮である.起始部と停止部が近づく肢位や方向がわかれば解ける.遠心性収縮を用いた抵抗運動の場合は,対象筋と運動方向が変わるため問題文に注意する.
【解説】
✕(1) ハムストリングスの機能は主に膝関節屈曲・股関節伸展だが,二関節筋のため膝関節屈曲90°位での股関節伸展は大殿筋が選択的に働く.
✕(2) 上腕二頭筋の筋力増強運動は肩関節中間位・前腕回外位での肘関節屈曲が一般的であるが,二関節筋であり,肩関節屈曲にも作用する.肘関節伸展0°かつ前腕回外位での肩関節伸展は,三角筋後部が主に働く.
✕(3) 上腕三頭筋は主に肘関節伸展で働くが,長頭は二関節筋になるため肩関節伸展などにも作用する.肘関節屈曲90°位で肩関節水平内転すると,大胸筋が主に働く.
✕(4) 前脛骨筋は足関節背屈ならびに内がえしで働くので,求心性収縮を用いて筋力増強運動を行う場合はその運動方向に従うのが一般的である.
◯(5) 中殿筋は股関節外転に働くので,筋力増強運動に股関節伸展0°位での股関節外転運動を用いる.
正解 : (5)
【解法の要点】
筋力増強トレーニングについて,基本的な知識を押さえておく.
【解説】
✕(1) 自動介助運動では,自発的に筋の収縮を行わせながら,セラピストあるいは器具の補助によって関節運動を行う.筋力が運動負荷に対して相対的に低い場合は,自動介助運動でも高頻度に収縮させることで筋力増強効果が得られると考えられる.
✕(2) 筋肥大は訓練を続けて3~5週以降に起こるが,筋力増強訓練初期の筋力増加は神経因子の変化によって起こる.つまり筋肥大が生じるまで効果が得られない,ということはない.
✕(3) 最大抵抗を用いても月1回の運動では筋力増強効果は得られない.基本的にはトレーニングの頻度は週2~3回程度必要とされている.
◯(4) 筋力トレーニングの原則の一つとして特異性の原則がある.トレーニングと同一の収縮様式における筋力の増加率は,他の収縮様式より大きいとされている.等運動性運動(等速性運動)は機械などを用いて筋の収縮速度を一定にした運動のことである.すなわち低速度の等運動性運動を行えば,低速度の等速性筋力が最も増加する.
✕(5) 低強度・高頻度の運動は筋持久力を高めるが,筋力増強効果は乏しい.等張性運動による筋力増強法ではDeLormeの漸増抵抗運動が広く用いられている.
正解 : (4)
【解法の要点】
各トレーニング法の内容についての問題である.
【解説】
◯(1) サーキットトレーニングは,筋力,筋持久力,持久力など総合的に向上させることを目的として,数種類のトレーニング(腕立て伏せ,腹筋,スクワットなど)を休息をとらずに連続して繰り返し行うものである.
◯(2) レジスタンストレーニングでは骨格筋の強い収縮により血圧が上昇しやすい.息を止めると胸腔内圧が上がって血圧上昇がおこる(バルサルバ効果)ため,呼吸を止めずに行うことが重要である.
✕(3) インターバルトレーニングは,インターバル(休息)をとりながらの運動であり,心肺への負担が少ないため,低体力者や高齢者にも適している.
◯(4) トレッドミルトレーニングでの運動強度は歩行速度と傾斜角度によって変化し,速度や角度が上がると運動強度も上がる.
◯(5) エルゴメータトレーニングでは,下肢を主体とした運動になるため,下肢の筋に疲労があらわれやすい.
正解 : (3)
【解法の要点】
運動療法に利用される基本的な運動(自動運動,他動運動,抵抗運動)や,筋の収縮様式(等張性収縮,等尺性収縮,等速性収縮)の内容を押さえる必要がある.
【解説】
✕(1) 自動運動は,抗重力位・従重力位に関係なく,自らの各部位を抵抗なく随意的に関節の動きを伴って行う運動である.
✕(2) 自動介助運動は,器具や介助者の介助を加えながら行う自動運動である.筋力低下,麻痺,痛みなどにより自動では動かせない場合や,損傷部位の近傍で自重を負荷できない場合などに行い,患者のできない部分を介助する.
✕(3) 等張性運動の特徴の一つとして,強度を上げて時間を延長するに従って酸素消費が大きくなる.よって等張性運動の方が筋持久力の増強効果が得られやすい.
◯(4) 等速性運動の場合,高速度の方が筋出力は小さくなる.
✕(5) 重錘を用いた運動では,関節の角度によって,重力の移動軸に対する垂直の成分が変化するため,全可動域にわたって負荷は一定ではない.
正解 : (4)
【解法の要点】
抵抗運動は,筋力や持久力を高める目的のものがほとんどである.
【解説】
✕(1) 人が行う徒手抵抗運動では,患者の状態を観察しながら,実際の訴えのみならず,表情を読み取りながらも柔軟に抵抗量を調整できる.
◯(2) 目的に合わせて適切な抵抗量=負荷量を加えることが可能である.
✕(3) 筋力が十分強ければ,機器を用いた抵抗運動の方が効果的である.
✕(4) 抵抗負荷部位を変えるのは容易である.
✕(5) 機器を用いた抵抗運動は客観的な記録ができるのに対し,徒手抵抗運動は主観的な記録である.
正解 : (2)