【解法の要点】
徒手筋力テストを行う際の注意事項について問うている.筋力テストに用いる検査台やマット台は,テストされる身体部分を安定化できるようにしっかりしており,台の表面は体幹や四肢が沈み込まないよう適切な固さが求められる.表面材料の摩擦はできるだけ少ないものとし,被検者が適切に体を動かせる必要があると同時に,被検者が滑り落ちることに不安を感じないような十分な幅を確保する.台の高さはセラピストが適切にテコ作用や身体メカニズムを使えるように調整可能であることが望ましい.
【解説】
✕(1) 横隔膜などの安静時吸気に働く筋の測定に圧力計を用いることがある.
◯(2) 各テストを行う際に,患者にできるだけ不快感や痛みを与えることのないように確認しながら実施する.
✕(3) 体幹や四肢が沈み込まないようベッドの表面は適度に固い方がよい.
✕(4) ベッド表面の摩擦は小さい方がよい.
✕(5) ベッドの高さはセラピストが適切にテコ作用や身体メカニズムを使えるように調整可能であることが望ましい.
正解 : (2)
【解法の要点】
下肢を固定しているため,筋のリバースアクション(逆作用)を考える必要がある.図1では下腿遠位を固定しているため,体幹の前屈の際に股関節屈曲,膝関節伸展が必要である.一方,図2では大腿遠位を固定しているため,体幹の前屈の際に股関節屈曲が必要となる.図2では十分な前屈がみられるが図1ではみられないため,膝関節伸展の筋力低下が疑われる.
【解説】
✕(1) 腹直筋は体幹の前屈に作用する.腹直筋の筋力低下であれば,図1,2ともに前屈できないと考えられる.
✕(2) 腸腰筋は股関節の屈曲に作用する.図1,2ともに腸腰筋よりも遠位を固定しており,腸腰筋の筋力低下であれば,どちらも前屈できないと考えられる.
◯(3) 大腿四頭筋は膝関節の伸展に作用するため,筋力低下が疑われる.
✕(4) ハムストリングスは膝関節の屈曲に作用する.本問の動作に大きな関与はない.
✕(5) 前脛骨筋は足関節の背屈に作用する.固定位置は足関節を跨いでおらず,本問における動作に大きな関与はない.
正解 : (3)
【解法の要点】
各筋の評価に適した正しい検査肢位,抵抗を加える位置や方向をしっかりと記憶しておく必要がある.
【解説】
◯(1) 前鋸筋の段階3では,検査者の抵抗がない状態で,対象者は肘関節伸展位で肩関節約130°屈曲する.検者は肩甲骨下角の内外側縁を触診する.
✕(2) 肩関節外旋筋群の段階4では,検査者の抵抗を加える位置は,前腕部のできるだけ手くびの近くである.図では,手背部に抵抗を加えている.「新・徒手筋力検査法第10版」では,肩関節外旋のテストは全段階で座位の方法へと変更された.
✕(3) 大胸筋の段階3では,対象者の検査肢位は背臥位,肩関節90°外転,肘関節90°屈曲位である.
✕(4) 図は上腕二頭筋の段階4である.腕橈骨筋の段階4では,検査肢位は前腕回内外中間位である.なお,上腕筋は前腕回内位で行う.
✕(5) 腸腰筋の段階3では,対象者の検査肢位は座位で,手の位置は検査台の縁をつかむか,身体の両脇で台上に手を置くかして身体を支える.図では手を後方に位置し,上体を後傾させている.
正解 : (1)
【解法の要点】
脊髄損傷では,各髄節のkey muscleがあり,その筋力が保たれているかが障害分類の上で重要である.ASIAによる運動の残存機能レベルの決定は,MMT3以上ある最も低い髄節を機能残存レベルとする.
【解説】
✕(1) C4のkey muscleは存在しない.
✕(2) C5のkey muscleは肘の屈筋(表では上腕二頭筋)であり,また,三角筋もC5髄節である.本症例は両筋ともにMMT4であるが,C6のkey muscleが機能しているため,より下位の機能残存レベルと考える.
◯(3) C6のkey muscleは手の背屈筋である.本症例は長橈側手根伸筋のMMTが右4,左5であり,C7レベルのkey muscleがMMT2であることから,機能残存レベルはC6であるとわかる.
✕(4) C7のkey muscleは肘の伸筋(上腕三頭筋)であり,また総指伸筋や指示伸筋などの指伸筋もC7髄節である.本症例において上腕三頭筋,指伸筋は,MMT3以下であるため,機能残存レベルとはいえない.
✕(5) C8のkey muscleは手指の屈筋である.本症例は浅指屈筋・深指屈筋の評価がないため,機能残存レベルとは評価できない.
正解 : (3)
【解法の要点】
Danielsらの徒手筋力テストで検査する筋と各段階における肢位,触診部位は頻出事項であるので必ず理解する.
【解説】
✕(1) 肩関節伸展の段階4,5では,被検査者は腹臥位,肩関節内旋位,肘関節伸展位で,検査者は肘関節のすぐ上の上腕後面に抵抗を加える.
◯(2) 肘関節伸展の段階4,5では,抵抗を加えるとき被検査者が肘をロック(lock)することがないように肘を軽度屈曲位にして,抵抗を加える.
✕(3) 手関節伸展の段階4,5では,手関節を偏位しないよう真上に伸展する.抵抗は,第2~5中手骨の上に検査者の4本の指または小指球の盛り上がりを用いて加える.
✕(4) 股関節伸展の段階4,5では,被検査者は腹臥位,股関節中間位で,検査者は足関節より近位で下腿背面に抵抗を加える.
✕(5) 頸部複合伸展の段階4,5では,被検査者は腹臥位で頭を検査台の外に出し,検査者は片方の手を被検査者の頭頂後頭部にあてがい,抵抗を加える(頸部複合伸展は,「新・徒手筋力検査法第10版」では削除された).
正解 : (2)
【解法の要点】
段階3は重力の抵抗だけに対抗して運動可能範囲を完全に終わりまで動かしうる筋や筋群の状態を指す.図を見て,選択肢の項目が抗重力位で保持できているかを確認すれば答えが導ける.
【解説】
✕(1) 三角筋中部線維の段階3の検査は上肢の外転90°までの自動運動であるので外転角度が不十分であり,左腰部で支えており筋力を要しない姿勢である.
✕(2) 上腕二頭筋の作用は肘関節屈曲である.図では伸展位となっている.
◯(3) 片脚立位で骨盤の傾斜がなく保持できているため段階3以上と推測できる.
✕(4) 腸腰筋の作用は股関節屈曲であり,段階3では全可動域を動かし最終域で保持する必要がある.図では屈曲角度が不十分である.
✕(5) 前脛骨筋の作用は足関節背屈と内がえしであり,段階3では全可動域を動かし最終域で保持する必要がある.図では背屈していない.
正解 : (3)