【解法の要点】
体位と呼吸運動,ガス交換とは密接な関係がある.まず,重力は肺血流に影響を与え,下側の肺に血液が多く流れることになる.次いで,胸郭運動について,一般に下側の胸郭運動が制限され換気が減少する.また,CT画像では含気が多い部分がより黒くみえる.
【解説】
◯(1) 下部胸郭では,左右方向への拡張が前後方向より大きくなるため,上になった①の位置の含気が最も多いと考えられる.CT画像でも最も黒く写っている.
✕(2),(3) ④,⑤よりは含気が多いが,①と比べると少ない.
✕(4),(5) 下側では胸郭運動が制限され,特に⑤は吸気による含気がこの中では最も少なくなる.
正解 : (1)
【解法の要点】
理学療法前後で,気道内圧は変わらずに肺気量が増加していることがわかる.つまり,換気量が増していることは明らかであるが,肺活量の変化と混同しない注意が必要である.呼吸理学療法の意義と,どのような生理的な変化が本例の所見を示すかを考える.
【解説】
✕(1) 肺活量は,限界まで吸い,限界まで吐いたときの空気の量である.人工呼吸器の陽圧換気であるので,肺活量に関しては不明である.
✕(2) 残気量は,限界まで吐いても,なお肺の中に残る空気の量である.人工呼吸器の陽圧換気であるので,残気量に関しては不明である.
✕(3) 気道内圧が変わらず,肺気量が増加しているため,気道抵抗は低下している.
✕(4) 選択肢3と同じ理由で,胸郭柔軟性は増加すると考えられる.
◯(5) 肺コンプライアンスとは,肺の膨らみやすさの指標で,気道内圧の変化に対する換気量の変化から算出される.本例では気道内圧は変化していないが肺気量が増加しているため,肺コンプライアンスが増加したと考えられる.
正解 : (5)
【解法の要点】
嚥下障害のある患者は誤嚥性肺炎のリスクがある.胸部X線写真でも典型的な誤嚥性肺炎の所見を示している.誤嚥性肺炎のときにみられる症候として発熱,咳,喀痰,湿性ラ音聴取等がある.
【解説】
✕(1) 胸痛は誤嚥性肺炎ではみられにくい.大葉性肺炎で出現しやすい.
✕(2) 誤嚥性肺炎では湿性咳嗽がみられる.乾性咳嗽は気胸や咳喘息,間質性肺炎などでみられる.
✕(3) 頸静脈怒張は誤嚥性肺炎ではみられにくい.緊張性気胸や心タンポナーデ,右心不全など,静脈灌流障害のあるときにみられる.
✕(4) 鼓音は気胸やCOPDなど,含気量が多い場合に聴かれる.肺炎ではむしろ濁音を呈する.
◯(5) 肺炎では水泡音(coarse crackles)がみられることが多い.聴診所見の位置も,X線画像で炎症の強い右下肺野と一致する.
正解 : (5)
【解法の要点】
フローボリューム曲線は横軸に肺気量,縦軸に気流速度をとり,気流速度と排気量の関係を示したものである.出題のフローボリューム曲線はピークフローから急に呼気流速が下がる凹型を示しており,慢性閉塞性肺疾患が考えられる.
【解説】
✕(1) 図では,初期にはフローボリューム曲線に変化はみられない.肺癌の進行例で気管を閉塞するようになれば肺気量が低下する.
✕(2) 肺線維症は,肺実質(間質)の線維化により肺が広がりにくくなるものであり,肺の拡張障害のため拘束性障害となる.拘束性障害では呼気流速の低下はみられず,肺が広がらないため全肺気量が低下し,肺活量・残気量も低下する.
✕(3) 肺葉切除では,肺容積の減少により全肺気量が低下するため,肺活量,残気量の低下がみられる.呼気流速の低下はみられない.
✕(4) 上気道狭窄では,高肺気量での呼気流速が低下する凸型のフローボリューム曲線となる.
◯(5) COPD(慢性閉塞性肺疾患)は,肺胞隔壁の破壊により肺が縮みにくくなり,呼気が吐き出しにくくなるという閉塞性障害の病態を呈する.フローボリューム曲線でピークフローより急に呼気流速が下がる凹型を呈し,本曲線と一致する.
正解 : (5)
【解法の要点】
慢性閉塞性肺疾患の検査所見の基本は,呼気が障害されて肺内に空気がトラッピングされる結果,肺が過膨張していることを押さえておく.
【解説】
✕(1) 肺胞低換気のために高二酸化炭素血症がみられる.
✕(2) 呼気が不十分となる病態であるため,残気率は上昇する.
✕(3) 肺コンプライアンスが上昇するため,全肺気量は増加する.
◯(4) COPDでは,肺胞の破壊による肺胞ガス交換面積の減少と肺毛細血管の破壊のために,肺拡散能が低下する.
✕(5) 肺胞壁の破壊によって肺の弾性は低下し,肺コンプライアンスは上昇する.
正解 : (4)
【解法の要点】
慢性閉塞性肺疾患は従来,肺気腫,慢性気管支炎の2疾患に区別されていた.タバコ煙を中心とする有害物質を長期にわたり吸入することによって生じた肺の炎症性疾患である.症状としては,慢性的な咳・痰や軽度の運動でも生じる労作性呼吸困難などがある.
【解説】
✕(1) 痰を伴わない乾いた咳のことを乾性咳嗽といい,一般的には空咳ともいう.慢性閉塞性肺疾患では,湿性咳嗽がみられる.
◯(2) エアートラッピング(空気とらえ込み:最大吸気位から最大呼息をしたときに肺内に空気が残る現象)のために呼吸音減弱が認められる.
✕(3) 肺野打診では肺の過膨張による鼓音が認められる.
✕(4) 慢性閉塞性肺疾患は,肺の過膨張のために胸郭柔軟性が低下する.
✕(5) 捻髪音とは高くて細かい断続音のことで,肺線維症,間質性肺炎,過敏性肺炎などでみられる.
正解 : (2)