【解法の要点】
心電図の読み取り問題である.すべて,日常臨床で遭遇することの多い不整脈であり,これらの心電図は見た瞬間に診断名が言えなければならない.数多くの心電図を読影し,鍛錬していくことが肝要である.
【解説】
✕(1) ①は発作性上室性頻拍である.規則正しい幅のQRS波が60÷0.4=150/分でみられる.また,7番目の波形から洞調律に戻っており,発作性の症状がうかがわれる.心房細動では,R-R間隔が不整で,P波がみられず,f波(心房の細かなふるえが基線の揺れとして記録されたもの)が出現する.
✕(2) ②は心房細動である.R-R間隔が不整で,P波がみられず,f波が出現している.洞性徐脈は,洞房結節の機能低下もしくは消失が主因と考えられる調律異常を示し,徐脈を呈する.
◯(3) 2,6番目の波形は心室性期外収縮であり,P波がみられず,変形した大きなQRS波となっている.心房のリズムは保たれているため,洞調律である.
◯(4) 洞結節の興奮よりも早期に心房から興奮が出現するものを心房性期外収縮という.④は,早期に出現したP波が1拍前のT波と重なっている.
✕(5) ⑤は完全房室ブロックである.P-P間隔,R-R間隔がそれぞれ一定で,P波とQRS波が無関係に独立したリズムを刻んでいる.発作性上室性頻拍は,規則正しい幅のR-R間隔で,狭い幅のQRS波が連続してみられ,150/分ほどの頻脈となる.
正解 : (3),(4)
【解法の要点】
NYHA(New York Heart Association)分類は,心不全の程度を問診から推測する際に用いる評価尺度であり,Ⅰ~Ⅳ度までの4段階で評価する.
【解説】
✕(1) 4段階評価である.
◯(2) 疲労,動悸,息切れ,狭心痛といった自覚症状で重症度を分類する.
✕(3) 日常生活で疲労,呼吸困難があるのはⅡ度である.
✕(4) 日常生活以下の労作で疲労,呼吸困難があるのはⅢ度である.
✕(5) Ⅳ度では安静時にも心不全症状がみられる.
正解 : (2)
【解法の要点】
心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である.肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全,体循環系にうっ血が著明なものを左心不全の主な症状として,呼吸困難,咳嗽,チアノーゼ,血性・泡沫状喀痰(ピンク色の痰)などがある.
【解説】
◯(1) 肺うっ血,肺水腫などが生じれば湿性咳嗽が起こり,種々の程度の呼吸困難,息切れ,起坐呼吸なども生じる.
✕(2) 左心不全では心拍出量低下によりチアノーゼとなる.
✕(3) 頸静脈は右心不全により怒張する.頸動脈の雑音は血管の閉塞や動脈硬化等で生じる.
✕(4) 体内水分貯蓄量が増加するため,心胸郭比は拡大(50%以上)する.
✕(5) 体液の貯留により,初期の体重は増加する.
正解 : (1)
【解法の要点】
運動療法は心臓リハビリテーションの中心的な役割を担っており,心不全症状や狭心症の症状など,諸症状を軽減してQOLを改善する効果が証明されている.予後改善効果も示されており,冠動脈疾患およびこれに基づく慢性心不全においては,心不全増悪による入院を減らすことで,総死亡率が減少する.
【解説】
◯(1) 心不全増悪による再入院は減少する.
✕(2) 収縮期血圧は低下する.
✕(3) 血小板凝集能は低下する.
✕(4) 交感神経の緊張は低下する.
✕(5) HDLコレステロールは増加する.
正解 : (1)
【解法の要点】
心筋梗塞の危険因子には,身体的因子である高血圧,糖尿病,血清脂質異常,肥満など,および生活習慣因子である喫煙,運動不足,飲酒などがある.
【解説】
◯(1) 加齢は予防不可能な心筋梗塞のリスクである.
◯(2) 男性では肥満は心筋梗塞の発症率,死亡率を上昇させる.
◯(3) 高血圧は動脈硬化を増悪させるため,心筋梗塞の危険因子である.
◯(4) 身体活動量の多い人の方が少ない人よりも,心血管イベントを来す可能性は低い.
✕(5) HDLコレステロールはいわゆる「善玉コレステロール」であり,末梢から肝臓にコレステロールを運搬する作用がある.心筋梗塞の危険因子となるのは高LDLコレステロール血症,低HDLコレステロール血症である.
正解 : (5)
【解法の要点】
心血管疾患におけるリハビリテーションの生活指導に関する問題である.基本的な事項を押さえておくとともに,病状に伴う運動負荷量の評価法・決定法についてまとめておこう.
【解説】
◯(1) 大動脈弁狭窄症,心房細動と一過性脳虚血発作の既往があり,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)を行っているため,血栓塞栓症を予防するために抗凝固療法の服薬は継続する.
◯(2) 患者は,体重,血圧,脈拍などを自己管理する必要がある.回復期から維持期における,生活活動や運動療法を安全に行うためである.
✕(3) 2~3METsの生活活動には,ゆっくりとした歩行,調理などが含まれ,3~4METsにはシャワーやふとんを敷くなどが含まれる.症例はNYHA分類でⅠ(心疾患はあるが,通常の身体活動制限はなし)であり,3METsを上限とするには低すぎる.
◯(4) 禁忌例を除くすべての心疾患にレジスタンストレーニングが推奨されている.
◯(5) 心臓リハビリテーションにおける運動負荷強度は,有酸素運動レベルが推奨される.嫌気性代謝閾値(AT)は,有酸素運動から無酸素運動に切り替わる境界のときの運動強度,またはそのときの酸素摂取量である.運動負荷試験によってATを求め,運動負荷量を決定する.
正解 : (3)