【解法の要点】
ランプ負荷法は運動負荷強度を直線的に増加させる方法である.運動中は循環,呼吸,代謝がどのように変化していくか押さえておく.
【解説】
◯(1) 一回拍出量を示している.軽い負荷の運動から徐々に増加するが,早い段階でプラトーに達する.
✕(2) 二酸化炭素排泄量の傾きを示している.嫌気(無酸素)性代謝閾値(AT)を超えると,グラフの傾きが変わり,有酸素系(TCA回路)に加えて,酸素を使わずに糖を乳酸に分解してエネルギーを生成させる無酸素系(解糖系)が働く.乳酸生成量も同様の傾きを示す.
✕(3) 呼吸交換比:RER(二酸化炭素排泄量/酸素摂取量)を示していると考えられる.
✕(4) VO2/HR(酸素摂取量と心拍数の比)などの傾きを示すと考えられる.
✕(5) 酸素摂取量の傾きを示している.酸素摂取量は運動強度に比例して増加するが,プラトーになったときに最大酸素摂取量に到達したとする.
正解 : (1)
【解法の要点】
運動負荷試験には,一定強度の運動を一定時間負荷する固定負荷法,数秒から数十秒ごとに負荷を直線的に増加させるランプ(ramp)負荷法(直線的漸増負荷法),運動強度を一定時間ごとに増加させる多段階負荷法がある.
【解説】
✕(1) Bruce法は,トレッドミルや自転車エルゴメーターなどで運動強度を一定時間ごとに増加させる多段階負荷法である.
✕(2) 解法の要点 参照.
✕(3) 6分間歩行テストは,固定運動負荷法の変法で,6分間で継続歩行可能な最大距離を測定し,運動耐容能を評価する方法である.
◯(4) マスターシングルテストは,高さ9インチ(約23cm)の凸型階段を5歩で昇降するのを1回と数え,年齢,性別,体重により昇降速度(回数)を決めて行う.通常は3分間で行うことが多く(マスターダブルテスト),半分の回数を1分半で行うのがマスターシングルテストである.
✕(5) シャトルウォーキングテストは,平坦な場所に1周10mの測定コースを設け,コースの両端から50cm程度の位置にターンのためのカラーコーンなどを置き,対象者に発信音によるペースに合わせて往復歩行させる.30m/分の歩行速度から開始し,発信音によるペースは10m/分ずつ増加する.ペースに合わせられなくなり,コーンの手前50cmに到達できなくなったら測定中止とする.
正解 : (4)
【解法の要点】
ランプ負荷法(直線的漸増負荷法)は運動負荷強度を直線的に増加させる方法である.心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise test: CPX)は,ランプ負荷法を用いて呼気ガス分析を併用することで,至適運動強度の設定や無酸素(嫌気)性作業閾値(anaerobic threshold : AT)を求めることに用いられる.
【解説】
✕(1),(3) 分時換気量は1回換気量と呼吸数の積で表され,運動強度の増加に伴って分時換気量は増加する.軽い負荷の運動では1回換気量の増加が主であり,呼吸数の増加は抑えられ,運動が激しくなるにつれて,呼吸数を増加させる.また,無酸素(嫌気性)代謝閾値から換気量が急激に増加する.
◯(2) 酸素摂取量は,ほぼ直線的に増加する.
✕(4) 1回心拍出量は軽い負荷の運動から徐々に増加するが,早い段階でプラトーに達し,その後の心拍出量(1回拍出量と心拍数の積)の増加は心拍数の増加に依存する.
✕(5) 無酸素(嫌気性)代謝閾値から二酸化炭素排泄量が急激に増加する.
正解 : (2)
【解法の要点】
全身持久力トレーニングの評価方法,評価項目,運動強度の設定,エネルギー供給システムについても押さえておく.運動強度は,主観的運動強度(疲労度)または客観的評価・指標で表す.
【解説】
✕(1) Karvonen法は運動強度算出の方法である.
運動強度(%)=(目標心拍数-安静時心拍数)÷(最大心拍数-安静時心拍数)×100
◯(2) 修正Borg指数は自覚的運動強度の指標として用いられる.修正Borg指数3~4程度の「やや強い」運動は最大心拍数の60%程度となり,安全で効果的な強度の運動が行える.
✕(3) Hugh-Jones分類は,ADLや歩行などの労作時にどの程度息切れが生じるかを質問して,呼吸困難(5段階)を間接的に客観評価するものである.
✕(4) 最大酸素摂取量は1分間に体重1kg当たりに取り込むことができる酸素量(VO2max)で客観的な指標である.VO2maxを正確に測定するためには呼気ガス分析法を用いる.求められた最大酸素摂取量に基づいて設定される運動強度が%最大酸素摂取量(%VO2max)である.
✕(5) Modified medical research council(mMRC)息切れスケールは,呼吸困難感を客観的に示す質問票である.
正解 : (2)
【解法の要点】
労作時の息切れ,咳,痰などの臨床症状および肺機能検査でのFEV1%の低下(基準値≧70%),長時間作用性気管支拡張薬の使用,在宅酸素療法導入からみて中等度~重症のCOPDと予想される.肺機能検査では%VCも低く(基準値≧80%)混合性の換気障害を来しており,進行した状態であることがわかる.動脈血ガス分析の結果から,呼吸性アシドーシスを代謝性アルカローシスで代償している.COPDにおける包括的呼吸リハビリテーションは,①コンディショニング,②ADLトレーニング,③運動療法(全身持久力・筋力トレーニング)の3つで構成されるが,重症度に伴って前者の比重が高くなる.有酸素運動の運動強度をどのような指標で適切に設定するかが問われている.
【解説】
✕(1) 7METsの運動は時速4〜5kmのジョギング相当である.入浴動作(4〜5METs)で息切れがする本症例には過負荷となる.
✕(2) 修正Borg指数の7レベルの運動強度は「かなり強い(very strong)」であり過負荷となる.
✕(3) 最大仕事量の75%は過負荷である.
✕(4) 最大心拍数=220−年齢=220−82=138で,ほとんど最大心拍数に近くなるため過負荷となる.
◯(5) 最大酸素摂取量の40%であれば心拍数の上昇も抑えることができ,リスクの少ない運動強度である.
正解 : (5)