【解法の要点】
GMFMは,脳性麻痺児の粗大運動能力の評価尺度である.
【解説】
✕(1) GMFMは,5領域88項目からなる運動課題で構成される.
✕(2) 0:全く出来ない,1:少しだけ出来る,2:部分的に出来る,3:完全に出来る,の4段階で評価する.
✕(3) 標準化とは,その評価尺度を使った場合の平均的な結果を示すことであり,GMFMは,点数化はされているが,標準化はされてない.
✕(4) 健常5歳児であれば達成可能な運動課題88項目の達成度を観察により判定する.
◯(5) Item Map(項目難易度マップ)は,粗大運動能力における課題項目と到達の可能性を明確にするものである.
正解 : (5)
【解法の要点】
GMFCS(Gross Motor Function ification System)は,脳性麻痺児のための粗大運動能力分類システムである.
【解説】
✕(1) レベルⅣ相当である.
✕(2) 座位練習レベルであれば,車椅子の利用も限られる状態であると考えられ,レベル Ⅳ~Ⅴ相当である.
◯(3) レベルⅡは「制限を伴って歩く」である.歩行補助具なしでの歩行練習が一番適している.
✕(4) レベルⅣ相当である.バニーホッピングとは,割り座の姿勢から殿部を少し持ち上げて上肢に体重をあずけ,移動を繰り返すことである.
✕(5) 立位練習のみで,歩行補助具を利用して歩くことがほとんどできないのであれば,レベルⅣ~Ⅴ相当である.
正解 : (3)
【解法の要点】
GMFCSレベルⅢは「歩行補助具を使用して歩く」ことは可能なレベルである.図より,股関節内転内旋,膝屈曲,尖足が認められるが,上肢の支持で立位は可能である.GMFCSの「歩行補助具を使用して歩く」からは,自力での移動が可能であること,上肢機能は比較的保たれていることがわかる.その中で,運動能力を最大限引き出せるような治療方針を解答できるとよい.GMFCSはしっかりと覚えておこう.
【解説】
✕(1) 歩行は不安定であるため下肢装具の作製を検討してもよい.ただし,膝関節機能は軽度屈曲位であるものの支持性はあるため,長下肢装具ではなく,尖足を矯正するため短下肢装具を検討する.
◯(2) 体幹を安定させる腹筋群と背筋群の同時収縮の促通は適切である.
✕(3) 選択的後根切断術とは,異常度の高い脊髄神経後根を同定し,切断することにより痙性の軽減をはかる手術である.10歳以上の症例への効果は限定的と報告されている.不可逆的な手術であり,年齢も12歳であるため,優先される治療法ではない.
✕(4) 歩行補助具を使用して自力で歩行は可能であり,人的な介助は必要としないレベルである.物的介助に関しては,安全面から現状維持が望ましい.
✕(5) 歩行補助具を使用して歩くことは可能なレベルであり,図からも上肢での支持能力は保たれているため優先される治療ではない.
正解 : (2)
【解法の要点】
痙直型四肢麻痺では主動筋と拮抗筋が同時に作用し続ける.主動筋,拮抗筋の相反性抑制が起き,筋の機能不全がみられ,異常な姿勢反射がみられる.
【解説】
◯(1) 腹臥位において上下肢が屈曲していることから,緊張性迷路反射である.
✕(2) 屈筋逃避反射は,両下肢伸展位で足底部を刺激すると,刺激側が屈曲する.
✕(3) 非対称性緊張性頸反射は,背臥位で頸部を一側に回旋すると顔面の向いた側の上下肢が伸展し,対側の上下肢が屈曲する反射である.
✕(4) Moro反射は,児を背臥位に抱き,検者が児の頭部を落下させると,まず上肢を伸展・外転し手を開き,次に抱きすくめるような動きをする原始反射である.
✕(5) Landau反射は,腹臥位にして空中で支えると,頭部,脊柱,下肢が伸展する.そこで頭部を前屈させると四肢の屈曲が起こる.
正解 : (1)
【解法の要点】
アテトーゼ型脳性麻痺は,錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す.筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する.特徴として,不随意運動が主体であることや,原始反射・姿勢反射が残存しやすいことが挙げられる.筋緊張の変化や不随意運動は,顔面・頸部・上肢において他の部位より顕著である.以前は,脳性麻痺のうちアテトーゼ型が最多であったが,周産期管理の進歩により現在は痙直型が主体となっている.脳性麻痺の二次障害に頸椎症性脊髄症や手根管症候群がある.
【解説】
◯(1) Galant反射(背反射)とは,児を腹臥位に抱いた状態で,下部胸椎レベルで脊柱の脇を沿うようにこすりおろすと体幹を同側に傾ける反射をいう.反射は1~2ヵ月頃に消失する.長く残存すると,体幹の対称的な安定性や頭部コントロールを遅らせる要因となったり,側弯になったりする.
✕(2) 吸綴反射は,口唇を刺激すると唇を閉じて吸い付く反射である.反射は2~3ヵ月頃に消失する.
✕(3) 自動歩行は自立歩行反射ともよばれ,児の両脇を手で支えて立たせ,床に足をつけた状態で体を前に傾けると下肢を交互に動かす反射である.生後1~2ヵ月頃に消失する.
✕(4) 手掌把握反射は,手掌に指先を押しつけると握りしめる反射をいう.この反射が(3~4ヵ月頃に)消失すると, 自由に物をつかんだり放したりすることができるようになる.
✕(5) 探索反射は,指で口唇の上下・左右を刺激すると,刺激の方向に口を開いて頭部を向ける反射である.生後4~6ヵ月頃に消失する.
正解 : (1)
【解法の要点】
2歳の痙直型四肢麻痺の症例である.児の状態や可能な動作から,次に目指す目標,必要な理学療法を検討する.動作獲得は正常発達の段階と同じく,定頸→寝返り→起き上がり・座位保持→起立・立位保持→歩行へと進めていく.筋緊張の異常や反射の誘発が遅れることに対して,促通手技や補装具などを用いて訓練を進める.
【解説】
✕(1) 下の図より,腹臥位で上下肢の屈曲位で筋緊張がみられることから,緊張性迷路反射の残存がうかがえる.現段階では下肢の筋力増強を目的とすると筋緊張をかえって高めてしまう.座位の獲得を目指すには共同運動を抑制し,体幹・四肢の分離運動を行う.
✕(2),(3) 現段階では寝返りまで可能であるから,座位の獲得を次に目指すべきである.立ち上がり練習や歩行練習を取り入れてもよいが,訓練の中心に据えるべきではない.
✕(4) 陽性支持反射(応)は,体幹を支えながら足底をつけて立たせるようにすると,両下肢・体幹が伸展して立位をとろうとする原始反射の一つであり,通常8ヵ月頃までに消失する反応である.原始反射は本来消失していくものであるので,陽性支持反射を強化して利用すべきものではない.
◯(5) 寝返りの次の発達段階である座位に移行するために,座位での立ち直り反応や平衡反応を繰り返しの刺激で引き出すことが現段階で必要だと考えられる.
正解 : (5)