【解法の要点】
問題文より,フットサポートに足を乗せたまま立ち上がる原因を考える.まず,フットサポートに注意を向けることができていないので注意障害の可能性がある.また「立ち上がる」という目標に対して,正しい順序で行えていないことから遂行機能障害の可能性も考えられる.
【解説】
◯(1) 解法の要点 より,注意障害,遂行機能障害は前頭葉の障害で起こり得る.
✕(2) 視床は感覚系の中継点であり,障害されると中枢性疼痛(視床痛),運動失調,感覚障害などがみられる.
✕(3) 被殻は大脳基底核の一部で,レンズ核の最外部を形成している.被殻出血では,血腫が内包後脚や視床まで及んでいることが多く,病巣と反対側の運動麻痺,感覚障害が出現する.
✕(4) 中脳背側の上丘などの障害では,Parinaud症候群(中脳背側症候群)とよばれる垂直注視麻痺や調節・輻輳反射の消失を来す.
✕(5) 小脳虫部は体幹の運動の調節を行っており,障害されると体幹運動失調,酩酊様歩行などがみられる.
正解 : (1)
【解法の要点】
道具そのものは理解できるが,物の使い方や行為の順序がわからなくなる病態を観念失行という.
【解説】
◯(1) 解法の要点 参照.
✕(2) 構成失行は,三次元の構成の障害で,絵を描いたり,図形を模写したり,積み木で何かを作る際などに誤りが生じる.頭頂連合野の比較的広範な領域の障害で現れる.
✕(3) 着衣失行は,衣服を正しく着たり脱いだりできない病態である.劣位半球の頭頂葉後方の障害による.
✕(4) 観念運動失行は,ある動作(髪をとかす,歯を磨くなど)を自発的に行うことはできるが,その動作の模倣を指示されるとできない状態である.優位半球の縁上回の障害でみられる.
✕(5) 肢節運動失行は,習熟運動が拙劣化し,動作が遅く,ぎこちなくなったりする状態である.左または右の中心後回や中心前回の障害による.
正解 : (1)
【解法の要点】
失語は,音声・書字の流暢さ,言語理解,復唱が可能かによって分類される.
【解説】
✕(1) Wernicke失語は,音声言語・文字言語の理解と表出に障害を来した状態で,発語は流暢であるが言語理解と復唱は困難である.
✕(2) 超皮質性失語は,復唱は障害されない.
◯(3) Broca失語は,音声,書字による言語表出の障害で自発言語は非流暢となる.復唱も制限されるが,言語の理解はおおむね良好である.
✕(4) 伝導失語は,発話は基本的に流暢で構音,言語理解とも良好であるが,復唱が障害される.
✕(5) 健忘失語は,物品の呼称が困難で,なかなか物の名前が出てこないが,おおむね言語機能は保たれる.
正解 : (3)
【解法の要点】
Broca失語は,言語表出の障害で,音声による言語表出,書字による言語表出いずれもが障害され,自発言語は非流暢となる.復唱も制限されるが,言語の理解はおおむね良好である.言語障害のある患者は心理的なストレスが大きいこともあり,非言語的な手段を用いながらコミュニケーションの不安を軽減するように対応する.
【解説】
✕(1) 患者が病前から使い慣れた言葉を用いてわかりやすい表現をする.
✕(2) 患者が話そうと努力しているときは十分に時間を与え,それでも困っているような場合には可能であれば「はい」「いいえ」で答えられるような質問に置き換えてみる.先回りをしすぎると患者の意思を無視してしまう危険性もあり,患者の自尊心を傷つけかねない.
✕(3) 具体的で簡略な文章で話しかける.ただし,子どもに話しかけるようなあまりにも易しすぎる言葉遣いは,先回りと同様に患者の自尊心を傷つけることになるので注意が必要である.
◯(4) 表音文字であるひらがなやカタカナに比べて表意文字である漢字の方が読みやすいということが少なくない.
✕(5) 話し言葉の補助として身振り手振りの使用は有効である.
正解 : (4)
【解法の要点】
右頭頂葉障害は,劣位半球の頭頂葉障害であり,半側空間無視,着衣失行などが認められる.
【解説】
✕(1) まねができないのは観念運動失行で認められる.病変部位は左頭頂葉~前頭葉である.
✕(2) 顔を見ただけでは誰かわからないのは,相貌失認で認められる.後頭葉から側頭葉の障害で認められる.
✕(3) 歯ブラシで歯を磨くことができないのは,観念失行で認められる.優位半球の角回の障害で認められる.
✕(4) 料理を段取り良く行うことができないのは,遂行機能障害で認められる.前頭葉の障害で認められる.
◯(5) 着衣失行のことである.解法の要点 参照.
正解 : (5)
【解法の要点】
左大脳の損傷により,Broca失語を呈していると考えられる.Broca失語は,音声,書字による言語表出の障害で自発言語は非流暢となる.復唱も制限されるが,言語の理解はおおむね良好である.失語は,発話の流暢さ,言語理解の良好さ,復唱の可否,文字言語の理解ができるかどうかが分類のポイントになる.
【解説】
✕(1) Broca失語の患者は自発言語が非流暢であることが特徴であるため,文法を細かく修正しても患者のストレスを増大させるだけであり,自信を失くしかねない.
◯(2) 患者が話そうと努力しているときは十分に時間を与え,それでも困っているような場合には可能であれば「はい」「いいえ」で答えられるような質問に置き換えてみる.先回りをしすぎると患者の意思を無視してしまう危険性もあり,患者の自尊心を傷つけかねない.
✕(3) 聴覚理解に問題はないので,医療者の説明はジェスチャーを交えなくても理解可能である.
✕(4) 発語や発声が障害されているわけではないため,コミュニケーションエイドの適応はない.
✕(5) 書字による言語表出が障害されているため,メモをとることができない.
正解 : (2)