【解法の要点】
片麻痺患者のADL指導については毎年出題されるので注意する.教科書で理解するだけではなく,一度自分で一通り模してみることで理解は深まる.
【解説】
◯(1) ベッド上で起き上がる際は非麻痺側へ起き上がる.肘を支点に起き上がりつつ,下肢を先にベッドから下ろして重みを利用する.
✕(2) 浴槽に入る際は非麻痺側から入る.出るときは麻痺側から出る.
◯(3) シャツを着る際は麻痺側の腕を先に通す.脱衣は非麻痺側から行う.
✕(4) 床から立ち上がる際は麻痺側下肢を膝伸展位に保ちながら,非麻痺側で膝立ちする.非麻痺側の手で床を押しながら,非麻痺側の膝を伸展し立ち上がる.
✕(5) 階段を上る際は非麻痺側から上る.下りる際は麻痺側から下りる.
正解 : (1),(3)
【解法の要点】
図から麻痺側立脚相で反張膝が著明であり,足関節は底屈位,体幹は前傾位となっている.立脚相での反張膝は,大腿四頭筋の機能不全,下腿三頭筋の過緊張などが原因と考えられる.膝をロックさせて麻痺側下肢の支持性を高め,体幹を前傾させて重心を前方へと移動していることがわかる.
【解説】
◯(1) 踵部を補高することで脛骨を前方へ倒すことができ,膝のロックを防ぎ,立脚相での大腿四頭筋の収縮を促通できる.
◯(2) 短下肢装具を着用することで底屈の角度を制限することができる.
◯(3) 膝屈曲位での立位保持では,股関節屈曲位,足関節は背屈位となり,大腿四頭筋,前脛骨筋の促通が可能となる.腓腹筋は緩み,ヒラメ筋は伸張する.さらに体幹を中間位保持に促す.ただし,突然の膝折れによる転倒に注意を払う.
◯(4) 下腿三頭筋の拮抗筋である前脛骨筋に電気刺激を行うことで,前脛骨筋の収縮を促し,相反抑制によって下腿三頭筋の筋緊張を低下させる.
✕(5) タッピングは筋収縮を促すので,下腿三頭筋の過緊張をさらに助長することになる.拮抗筋である前脛骨筋などに対してタッピングを行うとよい.
正解 : (5)
【解法の要点】
脳卒中の理学療法に関して,一般的な考え方を問われている.
【解説】
✕(1) 装具は機能低下を代償するために用いられるものであり,機能回復を阻害するようなことはない.
✕(2) CPM(Continuous Passive Motion)とは機械を用いた持続的他動運動である.CPMは,関節可動域の拡大・維持,血行の促進,関節内代謝物の排泄促進などの効果があるとされている.多くは股関節や膝関節の手術後に関節可動域の維持・拡大や循環の改善を目的として使用する.上肢や手指用のCPMも開発されている.下肢の分離運動を促通するものではない.
✕(3) 装具の完成を待つ必要はない.
◯(4) 脳卒中に対するトレッドミル歩行練習で歩行速度が向上する.
✕(5) 脳卒中の患者にとって動作の難易度は必ずしも一定ではない.その人にとって難易度の高すぎる動作練習は,意欲の低下および学習効率の低下を引き起こす可能性がある.もし,歩行練習が可能であれば,必ずしも座位保持能力を獲得する必要はない.
正解 : (4)
【解法の要点】
座位姿勢や机上検査の結果から,左半側空間無視が疑われる.左半側空間無視に対する理学療法としては,①左側への注意喚起,②左側身体への触覚刺激,③左側方向への体幹回旋運動,④左側からの声掛けなどが挙げられる.
【解説】
◯(1) 視覚探索(課題)訓練とは視覚的探索を組織化・強化する訓練である.左端を示し,刺激の右側から左側へ向かって探索を行い,「もう左にはない」というところまで探索させる(グレードB).
◯(2) 左後頸部の筋への振動刺激は治療に勧められる(グレードC1).
✕(3) 左右が逆である.無視空間である左側のブレーキレバーを延長することで,視界に入れやすくする効果がある.
◯(4) プリズム眼鏡の装着は治療に勧められる(グレードB).視野が右へ偏位するプリズム付眼鏡をかけてリーチ動作を行うと,標的が実際よりも右寄りに見えるため,最初はリーチ目標よりも右側へ手を伸ばすが,次第にプリズムによる視覚情報に適応し,正確な位置にリーチすることができる.施行後,眼鏡を外した後も新しい順応が成立し,半側空間無視の改善につながる.
◯(5) 無視空間である左側への手がかりの提示は治療に勧められる(グレードB).
正解 : (3)
【解法の要点】
片麻痺患者のADL指導については毎年出題されているので正しく理解する.
【解説】
✕(1) 装具を外す必要はない.
✕(2) 車椅子の前方から介助する.
◯(3) 車椅子上で殿部を前方に移動させておくと,ベッドに移乗させやすい.
✕(4) ベッドに対して車椅子を斜めに設置する.
✕(5) ベッドと車椅子は同じ高さに揃えておく.
正解 : (3)
【解法の要点】
脳卒中に対する各種療法についての問題である.
【解説】
✕(1) CI療法は,脳卒中による片麻痺患者に対して,非麻痺側の働きを制限することで麻痺側の運動を誘導する治療法である.従来は機能回復があまり望めないとされてきた維持期の患者にも適応があり,一定の効果を上げている.
◯(2) 通常のうつ病と同じように認知行動療法を行う.
◯(3) ボツリヌス毒素には筋弛緩作用があり,痙縮や眼瞼痙攣などに適応がある.弛緩性麻痺への適応はない.
◯(4) トレッドミル歩行練習では,体重懸垂装置で体重の一部を免荷することで麻痺側下肢の支持を可能としたうえで,患者が歩ける速度に調整し,セラピストが麻痺側下肢を介助する.
◯(5) プリズム適応療法は左半側空間無視に用いられる方法である.視野を右にずらすプリズム眼鏡をかけ,目標物を指さす課題を繰り返すと,最初は正確な位置を指さすのが難しいが,次第にプリズムによる視覚情報に適応し,正確な位置を指さすようになる.
正解 : (1)