【解法の要点】
Wallenberg症候群は,延髄外側に存在する脳神経核・伝導路が障害されることによって様々な症状が組合わさって出現する.症状としては,病側顔面の温痛覚とその対側の上下肢・体幹の温痛覚の麻痺,脳神経のうちⅤ,Ⅸ,Ⅹの障害,前庭神経障害(眼振,めまい),Horner症候群がみられる.摂食嚥下障害は脳神経Ⅸ・Ⅹの障害により起こる.
【解説】
✕(1) 先行期とは食物が認識でき,口に運ぶまでの時期をいう.半側空間無視は主に右頭頂葉の障害で起こる.
✕(2) 準備期は,唾液と食物を混和させ,嚥下しやすい食塊を形成するまでの時期をいう.観念失行は,左頭頂葉(角回)の障害で,日常使用している物品の操作ができない症状であり,先行期の障害である.
✕(3) 口腔期は,食塊を口腔から咽頭へ送り込み,嚥下反射が起きるまでの時期をいう.顔面麻痺は第Ⅶ脳神経の障害によって生じる.Wallenberg症候群では第Ⅶ脳神経は障害されない.
◯(4) 咽頭期は,食塊を咽頭から食道へ送り込むまでの時期をいう. Wallenberg症候群では第Ⅸ,Ⅹ脳神経の障害での球麻痺により舌の萎縮や咽頭反射の低下がみられ,咽頭期が障害される.
✕(5) 食道期は,食塊を食道から胃へ送り込むまでの時期をいう.胃食道逆流症や食道アカラシア,食道裂肛ヘルニアなど,食道性の障害が原因となる.
正解 : (4)
【解法の要点】
延髄外側症候群とは延髄外側部に梗塞を起こす病態で,Wallenberg症候群のことである.病側顔面の温痛覚とその対側の上下肢・体幹の温痛覚の麻痺,脳神経のうちⅤ,Ⅸ,Ⅹの障害,前庭神経障害(眼振,めまい),Horner症候群がみられる.病側と反対側の症状をまとめておく.
【解説】
✕(1) Horner症候群(縮瞳,眼瞼下垂,眼球陥凹,無汗)は病側に起こる.
✕(2) 病側の角膜反射が消失ないし低下する.
✕(3) 下小脳脚の障害により,病側の小脳失調がみられる.
◯(4) 外側脊髄視床路はその脊髄レベルで交叉し上行するため,頸部以下の健側の温痛覚が障害される.
✕(5) 通常, 触覚・深部感覚障害は伴わない.
正解 : (4)
【解法の要点】
側方突進の責任病巣は背側脊髄小脳路と外側前庭脊髄路といわれている.
【解説】
✕(1) 小脳虫部には室頂核があり,前庭神経系と連絡がある.小脳虫部の障害では,両足を開き酔っぱらったように全身動揺させる開脚歩行・酩酊様歩行がみられる.
✕(2) 黒質緻密部はドパミン作動性ニューロンより構成されており,主に線条体に投射している.黒質緻密部の障害による疾患の代表例はParkinson病で,加速歩行(突進現象)がみられる.
✕(3) 視床内側部は視床前部と共に情動に関与している.視床内側部の障害では感覚に伴う情動が障害される.この部分が侵されると強い不安状態に陥る.また,視床下部から自律神経系にも作用する.内包まで障害が及ぶと片麻痺を呈することが多い.
◯(4) 側方突進(lateropulsion)は,延髄外側部梗塞で出現するWallenberg症候群の症状の一つとして起こりやすく,病巣側への突進現象がみられる.
✕(5) 内包後脚には,運動出力線維などの皮質脊髄路(錐体路)が通っている.内包後脚部の障害では片麻痺を来すため,分回し歩行がみられる.
正解 : (4)