【解法の要点】
Parkinson病は無動,固縮,静止時振戦,姿勢保持反射障害が主症状である.これらの症状に対し,どのような評価法があるのかを整理しておく.
【解説】
✕(1) Beevor徴候は,第10胸髄レベルの病変で腹直筋の下半分に筋力低下が起こるため,背臥位にした患者に頭部を挙上させると臍が上方に移動する現象である.
✕(2) Finkelstein testはEichhoff testとともに手関節の腱鞘炎(de Quervain病)の疼痛誘発テストである.患者の母指を検者が握り,母指と手関節を尺屈させるように引っぱると疼痛が生じる.
✕(3) MAS(modified Ashworth scale)は,脳血管障害片麻痺患者の痙縮を評価する方法としてアシュワーススケールをもとにつくられたものであり,被動性筋緊張を測定する.現在では,痙縮を呈するすべての疾患の筋緊張評価に用いられている.
✕(4) SARA(scale for the assessment and rating of Ataxia)は,小脳性運動失調の評価法であり,全8項目(歩行,立位,座位,言語障害,指追い試験,鼻指試験,手の回内・回外運動,踵すね試験)の評価セットで,四肢の運動失調,歩行障害,構音障害,眼球運動障害を簡便に評価する.
◯(5) Westphal現象とは,Parkinson病などで固縮がみられる側の足関節を他動的背屈後に離すと前脛骨筋が収縮してなかなか戻らない現象である.
正解 : (5)
【解法の要点】
Parkinson病の薬物治療として用いられるL-dopaは長期的な使用で様々な副作用が生じる.基本的な事項なのでParkinson病の主症状とともに押さえておく.
【解説】
✕(1) wearing-off現象とは,L-dopaの効果持続時間が短くなり,服用後数時間で効果が消退する現象である.
✕(2) Westphal現象とは,筋強剛(固縮)により,足関節を他動的に背屈したあとに手を離すと,前脛骨筋が収縮してなかなか戻らない現象である.
✕(3) pusher現象とは,脳卒中による片麻痺患者が非麻痺側上下肢でベッド柵や車椅子などを押してしまい,麻痺側に姿勢が崩れてしまう現象である.右(劣位)半球損傷者に多い.
◯(4) on-off現象とは,内服時間とは無関係に突然症状が強くなり(off),また自然に軽快する(on)現象である.本症例は突然の無動を繰り返している.
✕(5) frozen現象とはすくみ足のことであり,歩き始めの第1歩がなかなか出ない状態のことをいう.
正解 : (4)
【解法の要点】
中脳上丘レベルの横断面の解剖と,Parkinson病の障害部位の問題である.
【解説】
✕(1) 上丘である.眼球運動に関与していると考えられている.
✕(2) 内側毛帯である.深部感覚(振動覚など)の経路である.
✕(3) 赤核である.赤核の障害により,赤核振戦という粗大な動作で誘発される振戦が起こることがある.
◯(4) 黒質である.Parkinson病で神経細胞脱落を認める.
✕(5) 大脳脚(錐体路)である.脳血管障害の後遺症で重度の麻痺がある患者では,錐体路のWaller変性により萎縮していることがある.
正解 : (4)
【解法の要点】
Parkinson病のすくみ足の誘発因子は狭路,障害物,精神的緊張などである.リズムをとったり,踏み越えられる程度の目標物を踏み越えさせたりすることで,すくみ足は改善する.本症例は重症度分類ステージⅣ,小刻み歩行,突進現象やすくみ足などの姿勢反射障害がみられている.姿勢反射障害による転倒などが起こらないように安全な歩行練習を選択する.
【解説】
✕(1) 速く歩こうとすると小刻み歩行や突進現象が誘発され,転倒しやすくなる.
◯(2) 狭路はすくみ足が誘発されやすいため,障害物のない広いところで歩くとよい.
✕(3) 一本線上では,進行方向への視覚的目標物とならない.また,バランス能力が低下している状態では転倒のリスクが高い.
✕(4) 目標とする方向が限定されたり,次の目標物までの距離が大きすぎたりすると,進行方向への視覚的目標物とならず,すくみ足が誘発されやすい.
✕(5) お盆に載せたコップを運びながら歩くのは,精神的緊張が生じ,すくみ足が誘発されやすい.
正解 : (2)
【解法の要点】
UPDRS(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)は,国際的に多く使用され,Parkinson病の症状の変化や障害の程度を客観的に評価する統一スケールの一つである.評価項目は4つのパートに分かれ42項目にもわたるのですべて覚えるのは難しい.まずは4つのパートを覚え,Parkinson病の症状から評価項目を考える.4つのパートとは,Ⅰ部:精神機能,行動および気分,Ⅱ部:日常生活動作(on/off時に分けて検査),Ⅲ部:運動能力検査(on時に検査),Ⅳ部:治療の合併症である.
【解説】
✕(1) Ⅱ部に「Parkinson症候群に関連した感覚障害」という項目はあるが,単に「感覚」という項目は設けられていない.また感覚障害はParkinson病の典型的症状ではないが,UPDRSの評価項目を詳細に記憶していた受験生は少し迷ったかもしれない.
◯(2) Ⅲ部に姿勢の項目がある.
◯(3) Ⅱ,Ⅲ部に歩行の項目がある.
◯(4) Ⅰ部に知的機能の障害という項目がある.
◯(5) Ⅳ部にジスキネジアの項目がある.
正解 : (1)
【解法の要点】
Parkinson病のHoehn&Yahrの重症度分類について,問題文の記述から分類する.
【解説】
✕(1),(2),(4),(5)
◯(3) 日常生活はほぼ自立しているが,歩行障害あり,姿勢保持反射障害あり,通院介助が必要であることから,Hoehn & Yahrの重症度分類ステージIII・生活機能障害度II度である.
正解 : (3)