【解法の要点】
Guillain-Barré症候群は,急性の運動麻痺を主徴とする炎症性多発ニューロパチーの代表的疾患である.脱髄型と軸索型があり,末梢神経に対する自己免疫性機序が関与すると考えられる.上気道炎,胃腸炎などの先行感染の1~3週間後に下肢から上行する左右対称性の弛緩性運動麻痺を生じる.重症例では呼吸筋を侵し呼吸困難を呈するため,気管挿管などの気道確保,呼吸管理が必要となる.
【解説】
✕(1) 四肢の深部腱反射は減弱もしくは消失する.
◯(2) 日本での発症は,全体としては脱髄型の方が多いが,軸索型の割合が欧米に比べて高い.
✕(3) 様々な脳神経麻痺(顔面神経麻痺,球麻痺,外眼筋麻痺など)が約50%の症例でみられる.
✕(4) 発症の1~3週間前に感冒様症状,下痢,腹痛などがみられ,その後1~2週間で急性に神経症状を来す.
✕(5) 多くは神経症状は2~4週間以内にピークに達する.
正解 : (2)
【解法の要点】
Guillain-Barré症候群の予後に関する問題.問題文と表からスコアを計算し,グラフの理解に努める.本問に示されているEGOS(Erasmus GBS Outcome Scale)スコアを知らなくても,問題文から必要情報を拾って点数を求め,グラフに当てはめることで解答は容易に得られる.
【解説】
✕(1),(2),(4),(5)
◯(3) 患者の年齢は32歳であるので40歳以下で0点,発症に先立つ下痢があるので1点,Guillain-Barré障害スコアはより5点,計6点であるので,グラフから発症6ヵ月後の歩行不可能な確率は60%である.
正解 : (3)
【解法の要点】
Guillain-Barré症候群の検査所見についての知識を問う問題である.末梢神経における脱髄が優位な脱髄型と軸索そのものが侵される軸索型がある.
【解説】
✕(1) 髄液検査では,細胞数の増加を伴わない蛋白上昇(蛋白細胞解離)がみられる.
✕(2) Guillain-Barré症候群は末梢神経の障害であるため,頸部MRIで異常を認めない.頸部MRIで髄内信号異常を認めるのは,脊髄空洞症,視神経脊髄炎などである.
◯(3) 末梢神経伝導検査での伝導速度の低下が認められる.
✕(4) 末梢神経の連続刺激でM波の振幅が減少する.
✕(5) F波の潜時は延長する.
正解 : (3)
【解法の要点】
末梢神経障害(ニューロパチー)の代表疾患であるGuillain-Barré症候群では,比較的太い有髄線維主体の障害がみられる.
【解説】
✕(1) 球麻痺(IX,X,XIIの障害)により,嚥下障害,構音障害がみられるため,誤嚥もみられる.
✕(2) 末梢神経に障害が生じると,脱力,しびれ,痛みなどの症状が現れるため,運動時痛が生じる.
◯(3) 温痛覚は細い有髄線維と無髄線維が混在しており,比較的保たれることが多い.
✕(4) 自律神経の障害で,頻脈,高血圧,起立性低血圧がみられる.
✕(5) 運動麻痺により,重症例では呼吸筋が障害され,拘束性換気障害を来し,呼吸困難となることもある.
正解 : (3)
【解法の要点】
Guillain-Barré症候群には,末梢神経の脱髄が優位な脱髄型と軸索そのものが侵される軸索型がある.本症例では症状が急速に進行しているため,現時点での筋力増強運動は筋力低下を助長することになり(過用性筋力低下),効果がないことに注意する.
【解説】
✕(1) 機能的電気刺激は,脳卒中や脊髄損傷などの中枢性麻痺で末梢の神経や筋が正常である場合に,外部からの電気刺激によって動作の補助や再建を目的として行われる.Guillain-Barré症候群のような末梢神経障害では電気刺激が過用性筋力低下を来す可能性があるため用いない.
✕(2) 解法の要点の通り.
✕(3) 入院時よりも運動麻痺は進行しているため,現時点での筋力では過負荷となるため座位練習は優先事項ではない.排痰目的でのヘッドアップ座位などは有効である.
✕(4) 人工呼吸器離脱にむけて呼吸練習を行うことは有効であるが,人工呼吸器管理開始直後であり,現時点では,実効性のある呼吸練習は期待できない.
◯(5) 球麻痺により嚥下障害・構音障害がみられるため,誤嚥のリスクが高い.肺炎予防,喀痰排出のために排痰練習が優先される.
正解 : (5)