【解法の要点】
第7頸髄節までの残存では,肩関節,肘関節,手関節の機能は温存されている.手指の運動や体幹の筋には麻痺が存在するため,これらの筋で代償的に動作を行う.
【解説】
✕(1) 第7頸髄節残存では,運転装置を搭載した自動車の運転が可能となる.
✕(2) 第7頸髄節までの機能残存では,キャスター上げを保持することは困難であるが,瞬間的に持ち上げることはできる.キャスター上げを安定して保持するためには手指屈筋群が機能する第8頸髄節以下の機能が必要になる.
✕(3) 瞬間的なキャスター上げにより,軽微な段差であれば乗り上げることができる.
◯(4) 床面から車椅子に乗り移るためには,プッシュアップで殿部を40cm程度後方に引き上げる必要があり,強い上肢筋力を要する.上肢に麻痺のある頸髄損傷では難しく,主に対麻痺患者で自立する.
✕(5) 側方アプローチによる移乗が可能となるには第7頸髄節の残存が必要である.
正解 : (4)
【解法の要点】
Frankel分類とは脊髄損傷の評価尺度の一つであり,運動と知覚機能の回復の程度をA~Eの5段階で評価するものである.Aが最も重症(損傷高位以下の完全運動・知覚麻痺)でEが正常(反射の異常はあってもよい)である.本症例は,屋内で手すり歩行が可能なため,実用的な運動機能が残存している.
【解説】
✕(1)〜(3),(5)
◯(4) 問題文より,手すり使用で立ち上がり動作が可能,食事は自立している.トイレ動作は見守りで可能,自宅内は手すり歩行,屋外は車椅子移動が可能なことなどから,かなりの随意運動機能が残されている.Frankel分類はDとなる.
正解 : (4)
【解法の要点】
Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類は共通問題で出ることが多かったが,近年専門問題でも出題されてきている.基本機能・基本的機能筋によってC5からC8に分け,そこから機能筋や可能な運動によって亜型分類を行う.C6BのⅠからⅢを評価する亜型分類をする際の筋が,選択肢に組み込まれており,これらから判断できるだろう.
【解説】
✕(1) 上腕三頭筋は,C6Bの亜型分類をする際の筋である.C6の基本的機能筋は長橈側手根伸筋と短橈側手根伸筋である.
◯(2) 上腕筋は上腕二頭筋とともに,C5の基本的機能筋に指定されている.
✕(3) 円回内筋は,C6Bの亜型分類をする際の筋である.
✕(4) 橈側手根屈筋は,C6Bの亜型分類をする際の筋である.
◯(5) 深指屈筋は固有示指伸筋・長母指伸筋・尺側手根屈筋とともに,C8の基本的機能筋である.
正解 : (2),(5)
【解法の要点】
頸髄損傷患者では,健常者に必要な可動域以上の関節可動域が要求されることが問われている.頸髄損傷患者では,長座位でのバランスが大切になる.さらに長座位での更衣動作や床上移乗動作での股関節の柔軟性が必要になる.特にC6レベルで長座位での移動は,肘伸展・肩伸展・外転での移動方法もあるが,体幹を前傾し,肘屈曲位で両股の中に肘をつく体勢をつくり,肩甲帯周囲筋力で前後方向に移動する方法もある.この時,ハムストリングスの十分な柔軟性がないと,膝が完全伸展せず踵がマットに食い込んで移動できなくなる.臨床的な良問といえる.
【解説】
✕(1) 肘関節伸展での肩関節伸展は上腕二頭筋の柔軟性が必要となり,長座位で体幹後傾するための上肢での支持動作でできたほうが望ましいが,正常可動域範囲内でも問題ない.
✕(2) 手関節背屈での肘関節伸展は橈側手根屈筋・尺側手根屈筋などの柔軟性が必要となり,プッシュアップ動作で必要となるが,正常可動域範囲内でも問題ない.
✕(3) 頸部屈曲位での体幹屈曲は脊柱起立筋の柔軟性が必要となり,シャツなどのかぶり動作で必要となるが,正常可動域範囲内でも問題ない.
◯(4) 膝関節伸展位での股関節屈曲は,ハムストリングスの柔軟性が必要となり,長座位で体幹前傾するために正常可動域以上の可動性が必要である.長座位保持,ズボンやソックスなどの更衣動作,床上移動などのADL獲得のためにも,ハムストリングスの伸張を行う必要があり,正常可動域範囲内では不十分で,長座位でつま先に手が届く,長座位で膝に頭がつく程度の柔軟性が必要となる.
✕(5) 立位を取れるわけではないが,車椅子などでフットプレートに安定させるため尖足位になるのは問題があるが,正常可動域範囲内でも問題ない.
正解 : (4)
【解法の要点】
脊髄損傷では,各髄節のkey muscleがあり,その筋力が保たれているかが障害分類の上で重要である.ASIAによる運動の残存機能レベルの決定は,MMT3以上ある最も低い髄節を機能残存レベルとする.
【解説】
✕(1) C4のkey muscleは存在しない.
✕(2) C5のkey muscleは肘の屈筋(表では上腕二頭筋)であり,また,三角筋もC5髄節である.本症例は両筋ともにMMT4であるが,C6のkey muscleが機能しているため,より下位の機能残存レベルと考える.
◯(3) C6のkey muscleは手の背屈筋である.本症例は長橈側手根伸筋のMMTが右4,左5であり,C7レベルのkey muscleがMMT2であることから,機能残存レベルはC6であるとわかる.
✕(4) C7のkey muscleは肘の伸筋(上腕三頭筋)であり,また総指伸筋や指示伸筋などの指伸筋もC7髄節である.本症例において上腕三頭筋,指伸筋は,MMT3以下であるため,機能残存レベルとはいえない.
✕(5) C8のkey muscleは手指の屈筋である.本症例は浅指屈筋・深指屈筋の評価がないため,機能残存レベルとは評価できない.
正解 : (3)
【解法の要点】
中心性頸髄損傷は上肢の障害が主で,下肢の障害は少ない.上肢で行う動作の巧緻性が低下していると考えられる.
【解説】
◯(1) 上肢の運動麻痺が重度になりやすいため,上半身の更衣動作は下肢動作に比べて自立度が低いと考えられる.
✕(2) 排尿管理は尿道括約筋を随意的にコントロールできるかが評価される.中心性頸髄損傷では膀胱直腸障害は軽度であり,排尿管理可能であることが多い.
✕(3)〜(5) いずれも下肢の動作が中心であるため,上肢動作に比べて自立度は高いと考えられる.
正解 : (1)