【解法の要点】
標準予防策は,院内感染の防止策として推奨されている方法であり,感染の有無に関わらず患者と医療スタッフすべてに適応される予防対策である.患者の血液や体液,分泌・排泄されるすべての湿性物質,粘膜,創傷の皮膚は感染のおそれがあるとみなして対応する.
【解説】
✕1 機器や道具はできれば個人専用にする.できなければ,使用毎に消毒することが望ましい.
✕2 屋外であっても感染予防を行う.
✕3 粘膜が乾燥すると細菌やウイルスの感染リスクが増すので,室内湿度は60~70%を保つのが適切である.湿度管理は標準予防策には含まれない.
✕4 「WHO医療における手指衛生ガイドライン2009」には,石鹸と流水を用いた手の洗い方として,全行程を40~60秒で行う方法が記載されている.
◯5 湿性生体物質に触れるおそれのある場合には手袋を使用する.
正解 : (5)
【解法の要点】
標準予防策(standard precautions)は1996年に米国CDC(国立疾病管理予防センター)によって提唱された「感染症の有無にかかわらずすべての患者に適用する疾患非特異的な予防策」であり,「すべての患者の血液,体液,分泌物,嘔吐物,排泄物,創傷皮膚,粘膜などをすべて感染する危険性があるものとして取り扱わなければならない」という考え方を基本としている.感染経路別予防策は,標準予防策以上の対応が必要となる病原体に感染している患者(あるいはその感染の疑いがある患者)が対象で,主に空気感染隔離予防策,飛沫予防策,接触予防策の3種類がある.
【解説】
✕1 「WHO医療における手指衛生ガイドライン2009」には,石けんと流水を用いた手の洗い方として全行程を40〜60秒で行う方法が記載されている.
✕2 手袋の着脱前後においても手指衛生は重要である.
✕3 感染症患者の隔離は,感染経路別予防策の全ての予防策に含まれる.重要な予防策ではあるが,標準的標準予防策の概念には含まれない.
✕4 患者同士の接触による感染予防は,感染経路別予防策の接触予防策に含まれる.重要な予防策ではあるが,標準的標準予防策の概念には含まれない.
◯5 排泄物は湿性生体物質であり,「すべての湿性生体物質(汗を除く)は感染のおそれがある」とみなす.
正解 : (5)
【解法の要点】
標準予防策(standard precaution)は,1996年CDCにより提唱された概念で,全患者・医療従事者に対して実施される感染予防策である.手洗い,個人防護用具の使用などに基づく医療器具や周辺環境における感染予防である.感染経路別の予防策を押さえておく.
【解説】
✕1 B型肝炎は体液感染,血液感染であるため個室での訓練をする必要はない.
◯2 結核は空気感染するため,開放性結核(患者の排出物中に結核菌が認められるもの)への対応の際はN95マスクを着用する.痰や排出物に触れる際にはガウン,手袋など予防衣が必要である.
✕3 HIVは,血液感染や性行為感染する疾患であるため,唾液の接触では感染しない.注射器の使いまわしや針刺し事故に注意することや,性行為においてコンドームの使用などがHIVの感染予防に有用である.
✕4 C型肝炎の感染経路は,血液感染や性行為感染のため,血液が付着していない使用道具の接触では感染しない(血液が付着した場合にはアルコール消毒では不十分である.基本事項 参照).
✕5 インフルエンザ患者は,少なくとも発症後5日を経過し,かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまでは自宅療養または個室隔離とし,飛沫感染予防策を実施する.作業療法室での訓練は他患者との接触が多いため,施設内での集団感染につながるおそれがあり,避ける.
正解 : (2)
【解法の要点】
咳をしている患者に対する適切な指導を考える.
【解説】
✕1 手袋は湿性生体物質に触れるおそれのある場合に使用する.
✕2 飛沫予防策として,咳をするときにはタオルやティッシュで口や鼻を覆い飛沫を発生させないように促す.咳嗽の際の飛沫を手でおさえた場合は,すぐに手洗いする必要がある.
✕3 作業療法室にいる間の飛沫感染対策を優先するべきである.
◯4 サージカルマスクまたはガーゼマスクは飛沫感染予防に有用である.
✕5 飛沫感染の場合,感染病原体を含む5μm以上の飛沫が,通常1m範囲に拡散する.このため,1m以上距離を空けることが望ましい.
正解 : (4)