【解法の要点】
Brunnstrom法におけるステージⅢは,共同運動が顕著で痙縮が強く,分離運動ができない状態である.ステージⅢの作業療法では,強い屈筋群の緊張を抑制し,伸筋の誘発・促通を行い,随意的伸展を可能にすることが目標である.特に上肢は,屈曲パターンとして,肩甲帯の挙上・後退,肩関節の外転・外旋,肘関節の屈曲,前腕回外,手関節掌屈,手指屈曲の緊張が強くなる傾向があるため,このパターンからの分離が課題となる.
【解説】
✕1 組んだ両手でテーブル上のボールを前方に転がす運動は,非麻痺側による介助下で肘の伸展,前腕回内,手関節背屈を促す練習である.
✕2 組んだ両手を挙上してペグを把持する運動は,肩屈曲・肘伸展のうえ,手指屈曲のまま手の掌背屈でペグをつかむことになる.協調性のある分離運動が必要であり,上肢・手指のステージⅤが対象となる.
✕3 上肢を下垂して手部で床上のボールを転がす運動は,肘の伸展と手関節の随意的な運動の分離が可能となるステージⅣ以上が対象となる.ステージⅢでは肘の屈曲が優位となる.
✕4 前方のペグを把持して抜く動作は,上肢の伸展と対向つまみが必要とされる.ステージⅣ~Ⅴが対象となる.
✕5 輪をつまみあげる指尖つまみ動作は,手指のステージⅤを目指す運動である.
正解 : なし
【解法の要点】
Brunnstrom法ステージは,上肢・手指・下肢の基本的な回復段階を示している.各ステージを理解しているか,具体的な動作を問うている.
【解説】
✕1 肘関節90°屈曲位で前腕を回内・回外できるのは,ステージⅣからである.上肢ステージⅡでは,非麻痺側の肘を曲げた位置から徒手抵抗に抗して肘を伸ばさせると,麻痺側の大胸筋の収縮を触知する.
✕2 腕を側方水平挙上することができるのは,ステージVからである.上肢ステージIIIで可能なのは基本的共同運動までであり,独立した運動は出現しない.
✕3 手指集団伸展が十分にでき,様々な握りができるのは,手指ステージⅤからである.手指ステージⅣでは,横つまみが可能で,母指の動きにより離すことも可能である.指伸展はなかば随意的に,わずかに可能である.
◯4 下肢ステージⅤでは,立位,膝伸展位で,踵を床につけたまま足関節を背屈することができる.
✕5 立位で股関節伸展位での膝関節屈曲ができるのは,下肢ステージVである.下肢ステージVIでは,立位で股・膝関節伸展位で骨盤挙上による範囲を超えた股関節外転運動と座位で足の外反・内反を伴う下腿部の外旋・内旋運動が可能である.
正解 : (4)
【解法の要点】
Brunnstrom法ステージⅣでは共同運動から独立した運動が出現し始め,痙縮は減少傾向となる.図にある動作をイメージし,肘伸展が得られない作業療法を選択する.
【解説】
◯1 抗重力位で随意的な肘伸展を促せる.
✕2 図のような立ち上がり動作の際には肘関節では屈曲が主たる動きになり,上肢の屈曲優位の痙縮を助長することが危惧される.
◯3,4 非麻痺側上肢の介助下で肘伸展を促せる.
◯5 肘伸展位保持の持続により,痙縮を緩和させ肘伸筋群への促通が期待できる.
正解 : (2)
【解法の要点】
Brunnstrom法における左上肢Ⅳでは,痙縮は減少し始め,基本的共同運動から逸脱した運動が出現する.左手指Ⅳでは,横つまみが可能で,母指の動きにより離すことも可能.指伸展はなかば随意的に,わずかに可能.左下肢Ⅵでは,立位で股関節の外転が骨盤挙上による外転角度以上に可能.座位で内側・外側のハムストリングスの交互収縮により下腿の内旋・外旋が可能.
【解説】
✕1 網戸を取り外すには両上肢の運動,両手指のつまみ運動が必要であり,本症例では困難と考えられる.
◯2 掃除機をかけるには,片側の上肢の運動が正常であれば可能であると考えられる.非麻痺側の右手でノズル(吸い口)の細かなコントロールを行うことができ,麻痺側の左手はホースを把持するには十分な機能があると考えられる.
✕3 天井の蛍光灯を替えるためには,両上肢の挙上と,両手指のつまみ運動が必要であり,本症例では困難と考えられる.
✕4 本症例は右利きのため,豆腐を持つ手は左手,包丁を持つ手は右手と考えられる.左上肢には痙縮が残っているため,この行動は危険である.
✕5 エプロンの腰ひもを後ろで結ぶためには,両手指のつまみ運動が必要であるため,困難と考えられる.
正解 : (2)