【解法の要点】
車椅子使用における生活環境について,具体的なところを問われている.幅や高さ,勾配などの具体的数値をしっかりと覚えておこう.
【解説】
◯1 車椅子と人とのすれちがいには幅が140cm以上必要である.
✕2 車椅子が回転するためには,150cm以上の幅が必要である.
◯3 車椅子が開口部を通過するためには,80cm以上の幅が必要である.
✕4 シャワーチェアの座位で使用することを考えると,シャワーフックの位置が150cmは高すぎる.ハンドシャワーとし,シャワーヘッドの高さ調整ができるようにスライドバーを設置するか,上下二箇所の使いやすい位置にフックを設ける.
✕5 スロープの勾配は,一般的には1/12(約8%)以下であり,C6レベルの頸髄損傷者の場合は1/15~1/20 が使いやすい.
正解 : (1),(3)
【解法の要点】
患者は脊髄小脳変性症の重症度分類下肢Ⅲ度(中等度)であり,運動失調による歩行障害がみられる.歩行は杖や歩行器を使用するか介助者が必要で,自力ならば伝い歩きで移動することになる.室内の使いやすさや安全性を高めるために,どのような環境整備ができるか選択肢と図をよく見比べて検討しよう.
【解説】
◯1 歩行障害があり移動に時間がかかること,また脊髄小脳変性症では排尿障害(自律神経症状)を来すことも多く,ベッドは出入り口に近くトイレに行きやすい(A′)の位置が望ましい.
✕2 内開きの扉は,出入りする際に浴室内が狭くなりやすく,病気が進行し車椅子移動になった際に扉を閉めることができない.また,浴室内で患者が倒れた際に脱衣所側から開けにくくなるため不適切である.現在の外開き(脱衣所側に開く)のままか,引き戸に改修するのがよい.
◯3 浴槽内に台を設置することで姿勢の安定や立ち上がりがしやすくなる.浴槽台とバスボードの配置は浴槽の出入り口に設置する(併用する場合,通常バスボードと浴槽台は対面になることはない).
◯4 浴室の出入りの際に横手すりは必要である.
◯5 浴槽は高さが50cmあるため,浴槽への出入りは座って行えるようバスボードが必要である.
正解 : (2)
【解法の要点】
Hoehn&Yahr重症度ステージⅢは,姿勢保持反射障害・歩行障害がみられる.ADLは一部介助が必要となるが,自力での生活は可能である.転倒箇所から問題を推測し,環境調整が重要となる.
【解説】
✕1 Aの位置にある椅子に到達するまでに転倒しており,トイレ側の椅子を使用するほうがよい.また,この転倒歴がなかったとしても,テーブルの位置と棚との間が狭く,すくみ足が誘発されて難渋しそうである.
◯2 開き戸の開閉は姿勢保持反射障害がある患者にとっては転倒の原因となりやすいため,引き戸の導入は転倒防止につながる.
◯3 浴室内は滑りやすく,浴室内での方向転換や浴槽への出入りの際に縦手すりが必要である.
◯4 浴槽内に台を設置することで立ち上がりがしやすくなる.
◯5 Parkinson病のすくみ足の誘発因子は狭路,障害物,精神的緊張などである.リズムをとったり,視覚的に疑似の,あるいは踏み越えられる程度の目標物を踏み越えさせたりすることで,すくみ足は改善する.そのため,目印などの視覚的情報はベッドへのアプローチの際,有効である.
正解 : (1)
【解法の要点】
車椅子の住宅環境整備については,段差の解消や移動・操作スペースの確保が重要である.玄関にはスロープを設置し,1/12~1/20の勾配が望ましい.それより急だと利用しにくい,または患者自身では利用できない.敷居の段差には楔状の木片(ミニスロープ)を置くことで車椅子の使用がスムーズになる.屋外では,1/15勾配以下が望ましい.
【解説】
✕1 部屋の照明器具などの壁面スイッチは,通常の住宅では一般的に床面から100~110㎝程度の高さに設置される.車椅子利用者や高齢者に配慮する場合はこれよりも低く,90~100cmに設置する.また,設置場所を選ばないリモコンスイッチが利用できる場合はさらに便利である.
✕2 自走用6輪型車椅子は屋内で使用される目的でつくられており,小回りが利きやすく狭い家屋内でも回転が比較的容易である.屋内の1~2㎝程度の段差を超えることは問題ないが,一般的には段差を超えることは得意としない.
◯3 スロープの勾配は,1/12以下にする必要がある.
✕4 車椅子の全幅は70cm以下に規定されており,走行の振れ幅や操作時の両肘の張り出しを考慮すると,通行幅は最低でも90cmは必要である.
✕5 日本の一般的な住宅では,車椅子通過のために求められる廊下の幅90㎝(直角部分の前後とともに)を確保できないのが実情である.このため,屋内用には幅の狭い小型の車椅子を選択するか,曲がる際に壁に接触することを犠牲にして一般的なサイズの車椅子を用いざるを得ない.車椅子の種類によっては75~78cmの通路幅があれば壁に接触することを許容して曲がることができるが,それ以下の幅では困難である.
正解 : (3)
【解法の要点】
トイレに設置するL型手すりの設置位置の寸法を問う問題.a(横手すりの高さ)は62~65cm程度,b(縦手すりの便座の先端からの距離)は25~30cm程度,cは142~145cm程度あることが望ましい.横手すりの高さ(a)を詳しく見ると,便座の高さが40cm程度で,それよりも20~25cm程度上の高さがよいとされる.
【解説】
✕1,2,4,5 解法の要点の条件を満たしていない.
◯3 解法の要点よりすべての条件を満たしている.
正解 : (3)